ふーっ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/78/51831cd7c7c367f4a1b06a427c72ba62.jpg)
なんとか静香と会っていたことを隠し通せた安堵から、雪は深く息を吐いた。
隣には笑顔の彼がいる。
「試験は上手く行った?」
「あ、はい!ちょっと難しかったですけど、勉強した所全部出ましたから」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/bc/911aba496d265e694663ba2308bf24db.jpg)
「頑張ったね」「へへ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/6c/b8039deaf9498828ec4501cf6b5e566f.jpg)
二人は夕焼けの空の下を並んで歩いた。先輩が大学に来るのは一週間ぶりだ。
「俺も試験受けなきゃいけない科目があって、近い内‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/c0/b748fe6276aeb9c5e8a3cf2af716ad23.jpg)
話す彼の横顔を見つめながら、雪の脳裏にふと健太の言葉が浮かんで来た。
「なんだよー俺とお前の仲じゃねーか!
その‥赤山から青田に上手く話してくんね〜かな〜なんて‥」
「はい?何の話ですか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/60/07b291f126e7328a25f29f1b0a4b085c.jpg)
あの時感じた微かな違和感が、雪の心に引っ掛かったままになっていた。
そして淳も同じく、心の中に引っ掛かりを感じている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/74/c723876743c5786d05c7705494552637.jpg)
「あの‥雪ちゃん、もしかして‥」「先輩」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/1f/945aca81faef51421776cb0da54071a5.jpg)
二人は同時に口を開いた。そして互いに先を譲る。
「あ、先に言って」「いえお先にどうぞ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/49/f6435762e295f354442d8d40e72c23b5.jpg)
「何だよ〜」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/cd/1d5097ce9c05f8d6b46a592b500c7532.jpg)
そんなやり取りに二人が顔を見合わせて笑っていると、雪の携帯電話が鳴り出した。
「雪ねぇ!」「恵?」
「雪ねぇ今どこ?電話出れなかった?」「あー、試験でしばらく電源切ってたや。どうしたの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/c5/569ed19d574af9dfdc0ae3af959e829d.jpg)
「え?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/67/346b7c76e2bdfee7dd3f75ca7c89d3e4.jpg)
その後恵が話し出した内容を聞くやいなや、雪の顔色が変わった。
そしてすぐさま雪は恵と会うことにしたのだった。
恵の携帯電話に表示されているのは、数時間前の蓮と恵とのやり取りだ。
「今日面接だって?」「うん!今向かってるとこ!」
「蓮、やっぱりどう考えても行かない方がいいと思う」
「確かにちょっと怪しい気もするけどさ、そうだったら出てけばいい話だから。
ったくキンカンは心配性だなー」
「でも‥」「到着!終わったら連絡する!」
「面接終わった?」1
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/c6/38e600cc6051f801d0714161fe14f978.jpg)
その画面を見せながら、心配そうな表情をした恵が言った。
「ここから既読にならないし連絡もなくて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9f/0e0c9b557da307650c55cf9128ba803a.jpg)
思わず白目になる雪と目を丸くする淳。
恵はそんな二人に、自身が知っている限りの蓮情報を伝える。
「ここに入って四時間も経ってるのに‥面接がそんな長いなんておかしくない?
名前も聞いたことない会社だったし、何かあったんじゃないかって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/20/dcaf7fc4da702d75fdf19e1add17982b.jpg)
「電話は?かけた?」「うん、でも出なくて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/9d/6337326c1d76d9b1efe98bcb6451a29f.jpg)
下を向く恵を見ながら、雪の背筋がゾワゾワとざわめき出した。
ざわ‥ざわ‥ざわ‥なんだこの嫌な予感はっ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/fb/8acf096225f47f125dec0e293802c90c.jpg)
あの賭博師ばりにざわざわする雪を見て、口元を引き攣らせる淳。
雪は溜息を一つ吐いた後、自身の携帯を取り出した。
「それじゃ私が一回掛けてみる‥ん?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/2f/a071405b567eebc6012062f7308c5f8e.jpg)
そして雪は、新着メールが届いているのに気がついたのだった。
「メールが‥」「なんて?」「あ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/4e/2d56317e88903bc6bc004b91fcb7cd7e.jpg)
「河村氏から‥」
おいダメージ。蓮の奴今日ここに行くぞ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/1f/7ef90d305c0cbf53cc8c85fa63afed8a.jpg)
添付された<地図>には、「Young Man産業 SGビル」と記載されていた。
亮が残したその足跡を見つめて、三人は目を丸くする‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/27/b03f9796fac6908391496bcfeb6e4284.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/f0/3f6b923dec02dce29b0ea3150eff7fbb.jpg)
その頃YG産業に居る蓮は、渡されたプリントを持ちながら一人悶々と立ち尽くしていた。
同室には同じく落ち着かないらしい応募者の姿がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/c7/be766221eeac36061a121806b5bb8593.jpg)
蓮は先程の光景を思い出してゲンナリしていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/16/3861dcb6c515905ef6d1741ed15b8bce.jpg)
「つーかどーしてチーム分けすんの?!亮さーーん!!」
「あなた方はこちらへどうぞ〜」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/2f/44f5676b73f4aeac0fdad7b58a885cfc.jpg)
先程三階の廊下にて、頼りにしていた亮と離されてしまった蓮。
ピンチなのは明らかだったが、蓮はどうしてもまだそれを認められずにいた。
ピラミッド商法‥俺がピラミッド商法‥この俺が自らそんなモンに飛び込むなんて‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/06/c0cd0812ca04be93064dde8ff36f03fd.jpg)
‥こうなったら逃げ出すしか道は無い。
蓮の鷹の目が鋭く光る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/92/4138ffebbd8e54ddedccfd417b7539f6.jpg)
しかしドアには鍵がかかっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/40/7178d36df1f44f7752065036466ec8bb.jpg)
あの鍵を開けるにはどうすればいいか。
蓮は周りを窺った後、さり気なさを演出するため鼻歌を歌いながらそこに近付く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/94/34c5f2469c2b5cc2b66fc1b52611ef14.jpg)
しかし。
「あ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/32/3e59ff7b59f2ab2a72a3ae559bcb0d2a.jpg)
「もうすぐ面接が始まりますので、ご着席お願いしますね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/ff/3f12c70e433c4fd2d02eb4909a3dda15.jpg)
脱出失敗‥。
「ハイ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/8b/e72a57b2788620579d7b9e1f0b47c4ea.jpg)
しかしここで諦めたらまたふりだしだ。蓮は中年男に向かって声を上げる。
「あ、あの!やっぱ面接は止めて帰りたいんですけど!」
「え?どうしてですか?」「その‥今家から連絡が来てすぐに帰らないと‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/92/62e35a720e9cafe5f4acf701a83e336a.jpg)
それは蓮が咄嗟に思いついた嘘だった。中年男はそれを見破ってこう言い返す。
「はい?!鞄は倉庫の中なのにどうやって連絡なんて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/e5/38d14c7dad6d88d09132efb9d4522321.jpg)
「倉庫?」「あっ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/5a/1555cc359278bf76ec2f4df4d6e7807a.jpg)
しまった、と中年男は慌てて口を噤んだ。
そして再び笑顔を浮かべながら、隣の大柄の男と共に強引に蓮を室内へと促す。
「ほらほら、緊張のしすぎですよ。そんな嘘ついて〜
そんな難しい面接じゃないですから、まずは緊張をほぐしましょう!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/d0/dae46c4cd85ad391feeb06d89d5b3f7a.jpg)
「就職のドアは開かれていますよ。我々と一緒に働けば‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/4a/59de7682bc338c17e21b6ec31ae8bb0b.jpg)
中年男は耳あたりの良いことを言っているが、手には力が込められ、
蓮はズルズルと半ば引っ張られるように中へと戻された。
脳裏に心配そうな顔をして忠告してくれた恵の姿が浮かぶ。
「蓮、もう一度考え直してみない?ちょっとおかしいと思うの」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/fd/fa7dbc6e1e936cdeefaf57df885f1695.jpg)
看過して来た真実が、自分の間違いを認めたくない弱さが、次々と露呈する。
それは蓮の瞳から大粒の涙となって流れ落ちた。
「め‥めぐみぃ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/95/a63c1a4a601efd0d2bb64273f3c081ba.jpg)
「うわあああああー!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/d0/c6347a44bea66760ecb6ffce62460cfd.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/3c/3320174ada41f796afe4f132fbf14535.jpg)
一方ここは亮が連れて来られた部屋。
亮は配られたプリントになんとなく目を通すも、その内容についてはサッパリだった。
何が書いてあんだ?こりゃ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/fc/e62327e2b1ac1effa7914ba4025aedcb.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/c4/2d573fe82086b6c0e7312d8fc94e08c8.jpg)
チラ、とドアの方を窺って見ると、そこにはまるで門番のようにガタイの良い男がずっと立っている。
「はい、それじゃあ皆さん一人ずつ詳しい説明を聞いてみましょうか」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/16/ffdf41f6411b8404a97c732bde34f792.jpg)
亮の視線に気付いたガタイの良い男がそれを追うと、
もう既に亮は彼から視線を逸していた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/8b/c93f055dd5bcf21100263ac11d5aec94.jpg)
男は亮の横顔から目を逸し、再び前を向く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/e7/65cbaf3588615abbd831b0e32f03d73d.jpg)
‥と見せかけてもう一度亮の方を見た。
「!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/fd/75dc2877bfe23ef26f290df3e3644bbd.jpg)
男と視線が合ってしまった亮は、その警戒を解く為にニッコリと笑顔を浮かべる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/2b/69169c478cf907a9a63b15f2a9a488a8.jpg)
だんだんとこの会社の本質が露呈する。
亮はその鍵穴を開けるチャンスを窺いながら、じっと息を潜めていた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<露呈>でした。
あの賭博師ばりにザワザワする雪‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/d9/5fab7c25071e8b81a3162406d4cf050c.jpg)
蓮がエスポワールに乗ることになったらどうしよう!‥と慌てないのは、
亮さんがついててくれるからこそですね。
さて次回は<突撃>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
引き続きキャラ人気投票も行っています〜!![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/78/51831cd7c7c367f4a1b06a427c72ba62.jpg)
なんとか静香と会っていたことを隠し通せた安堵から、雪は深く息を吐いた。
隣には笑顔の彼がいる。
「試験は上手く行った?」
「あ、はい!ちょっと難しかったですけど、勉強した所全部出ましたから」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/bc/911aba496d265e694663ba2308bf24db.jpg)
「頑張ったね」「へへ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/6c/b8039deaf9498828ec4501cf6b5e566f.jpg)
二人は夕焼けの空の下を並んで歩いた。先輩が大学に来るのは一週間ぶりだ。
「俺も試験受けなきゃいけない科目があって、近い内‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/c0/b748fe6276aeb9c5e8a3cf2af716ad23.jpg)
話す彼の横顔を見つめながら、雪の脳裏にふと健太の言葉が浮かんで来た。
「なんだよー俺とお前の仲じゃねーか!
その‥赤山から青田に上手く話してくんね〜かな〜なんて‥」
「はい?何の話ですか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/60/07b291f126e7328a25f29f1b0a4b085c.jpg)
あの時感じた微かな違和感が、雪の心に引っ掛かったままになっていた。
そして淳も同じく、心の中に引っ掛かりを感じている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/74/c723876743c5786d05c7705494552637.jpg)
「あの‥雪ちゃん、もしかして‥」「先輩」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/1f/945aca81faef51421776cb0da54071a5.jpg)
二人は同時に口を開いた。そして互いに先を譲る。
「あ、先に言って」「いえお先にどうぞ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/49/f6435762e295f354442d8d40e72c23b5.jpg)
「何だよ〜」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/cd/1d5097ce9c05f8d6b46a592b500c7532.jpg)
そんなやり取りに二人が顔を見合わせて笑っていると、雪の携帯電話が鳴り出した。
「雪ねぇ!」「恵?」
「雪ねぇ今どこ?電話出れなかった?」「あー、試験でしばらく電源切ってたや。どうしたの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/c5/569ed19d574af9dfdc0ae3af959e829d.jpg)
「え?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/67/346b7c76e2bdfee7dd3f75ca7c89d3e4.jpg)
その後恵が話し出した内容を聞くやいなや、雪の顔色が変わった。
そしてすぐさま雪は恵と会うことにしたのだった。
恵の携帯電話に表示されているのは、数時間前の蓮と恵とのやり取りだ。
「今日面接だって?」「うん!今向かってるとこ!」
「蓮、やっぱりどう考えても行かない方がいいと思う」
「確かにちょっと怪しい気もするけどさ、そうだったら出てけばいい話だから。
ったくキンカンは心配性だなー」
「でも‥」「到着!終わったら連絡する!」
「面接終わった?」1
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/c6/38e600cc6051f801d0714161fe14f978.jpg)
その画面を見せながら、心配そうな表情をした恵が言った。
「ここから既読にならないし連絡もなくて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9f/0e0c9b557da307650c55cf9128ba803a.jpg)
思わず白目になる雪と目を丸くする淳。
恵はそんな二人に、自身が知っている限りの蓮情報を伝える。
「ここに入って四時間も経ってるのに‥面接がそんな長いなんておかしくない?
名前も聞いたことない会社だったし、何かあったんじゃないかって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/20/dcaf7fc4da702d75fdf19e1add17982b.jpg)
「電話は?かけた?」「うん、でも出なくて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/9d/6337326c1d76d9b1efe98bcb6451a29f.jpg)
下を向く恵を見ながら、雪の背筋がゾワゾワとざわめき出した。
ざわ‥ざわ‥ざわ‥なんだこの嫌な予感はっ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/fb/8acf096225f47f125dec0e293802c90c.jpg)
あの賭博師ばりにざわざわする雪を見て、口元を引き攣らせる淳。
雪は溜息を一つ吐いた後、自身の携帯を取り出した。
「それじゃ私が一回掛けてみる‥ん?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/2f/a071405b567eebc6012062f7308c5f8e.jpg)
そして雪は、新着メールが届いているのに気がついたのだった。
「メールが‥」「なんて?」「あ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/4e/2d56317e88903bc6bc004b91fcb7cd7e.jpg)
「河村氏から‥」
おいダメージ。蓮の奴今日ここに行くぞ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/1f/7ef90d305c0cbf53cc8c85fa63afed8a.jpg)
添付された<地図>には、「Young Man産業 SGビル」と記載されていた。
亮が残したその足跡を見つめて、三人は目を丸くする‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/27/b03f9796fac6908391496bcfeb6e4284.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/f0/3f6b923dec02dce29b0ea3150eff7fbb.jpg)
その頃YG産業に居る蓮は、渡されたプリントを持ちながら一人悶々と立ち尽くしていた。
同室には同じく落ち着かないらしい応募者の姿がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/c7/be766221eeac36061a121806b5bb8593.jpg)
蓮は先程の光景を思い出してゲンナリしていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/16/3861dcb6c515905ef6d1741ed15b8bce.jpg)
「つーかどーしてチーム分けすんの?!亮さーーん!!」
「あなた方はこちらへどうぞ〜」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/2f/44f5676b73f4aeac0fdad7b58a885cfc.jpg)
先程三階の廊下にて、頼りにしていた亮と離されてしまった蓮。
ピンチなのは明らかだったが、蓮はどうしてもまだそれを認められずにいた。
ピラミッド商法‥俺がピラミッド商法‥この俺が自らそんなモンに飛び込むなんて‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/06/c0cd0812ca04be93064dde8ff36f03fd.jpg)
‥こうなったら逃げ出すしか道は無い。
蓮の鷹の目が鋭く光る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/92/4138ffebbd8e54ddedccfd417b7539f6.jpg)
しかしドアには鍵がかかっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/40/7178d36df1f44f7752065036466ec8bb.jpg)
あの鍵を開けるにはどうすればいいか。
蓮は周りを窺った後、さり気なさを演出するため鼻歌を歌いながらそこに近付く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/94/34c5f2469c2b5cc2b66fc1b52611ef14.jpg)
しかし。
「あ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/32/3e59ff7b59f2ab2a72a3ae559bcb0d2a.jpg)
「もうすぐ面接が始まりますので、ご着席お願いしますね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/ff/3f12c70e433c4fd2d02eb4909a3dda15.jpg)
脱出失敗‥。
「ハイ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/8b/e72a57b2788620579d7b9e1f0b47c4ea.jpg)
しかしここで諦めたらまたふりだしだ。蓮は中年男に向かって声を上げる。
「あ、あの!やっぱ面接は止めて帰りたいんですけど!」
「え?どうしてですか?」「その‥今家から連絡が来てすぐに帰らないと‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/92/62e35a720e9cafe5f4acf701a83e336a.jpg)
それは蓮が咄嗟に思いついた嘘だった。中年男はそれを見破ってこう言い返す。
「はい?!鞄は倉庫の中なのにどうやって連絡なんて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/e5/38d14c7dad6d88d09132efb9d4522321.jpg)
「倉庫?」「あっ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/5a/1555cc359278bf76ec2f4df4d6e7807a.jpg)
しまった、と中年男は慌てて口を噤んだ。
そして再び笑顔を浮かべながら、隣の大柄の男と共に強引に蓮を室内へと促す。
「ほらほら、緊張のしすぎですよ。そんな嘘ついて〜
そんな難しい面接じゃないですから、まずは緊張をほぐしましょう!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/d0/dae46c4cd85ad391feeb06d89d5b3f7a.jpg)
「就職のドアは開かれていますよ。我々と一緒に働けば‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/4a/59de7682bc338c17e21b6ec31ae8bb0b.jpg)
中年男は耳あたりの良いことを言っているが、手には力が込められ、
蓮はズルズルと半ば引っ張られるように中へと戻された。
脳裏に心配そうな顔をして忠告してくれた恵の姿が浮かぶ。
「蓮、もう一度考え直してみない?ちょっとおかしいと思うの」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/fd/fa7dbc6e1e936cdeefaf57df885f1695.jpg)
看過して来た真実が、自分の間違いを認めたくない弱さが、次々と露呈する。
それは蓮の瞳から大粒の涙となって流れ落ちた。
「め‥めぐみぃ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/95/a63c1a4a601efd0d2bb64273f3c081ba.jpg)
「うわあああああー!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/d0/c6347a44bea66760ecb6ffce62460cfd.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/3c/3320174ada41f796afe4f132fbf14535.jpg)
一方ここは亮が連れて来られた部屋。
亮は配られたプリントになんとなく目を通すも、その内容についてはサッパリだった。
何が書いてあんだ?こりゃ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/fc/e62327e2b1ac1effa7914ba4025aedcb.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/c4/2d573fe82086b6c0e7312d8fc94e08c8.jpg)
チラ、とドアの方を窺って見ると、そこにはまるで門番のようにガタイの良い男がずっと立っている。
「はい、それじゃあ皆さん一人ずつ詳しい説明を聞いてみましょうか」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/16/ffdf41f6411b8404a97c732bde34f792.jpg)
亮の視線に気付いたガタイの良い男がそれを追うと、
もう既に亮は彼から視線を逸していた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/8b/c93f055dd5bcf21100263ac11d5aec94.jpg)
男は亮の横顔から目を逸し、再び前を向く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/e7/65cbaf3588615abbd831b0e32f03d73d.jpg)
‥と見せかけてもう一度亮の方を見た。
「!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/fd/75dc2877bfe23ef26f290df3e3644bbd.jpg)
男と視線が合ってしまった亮は、その警戒を解く為にニッコリと笑顔を浮かべる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/2b/69169c478cf907a9a63b15f2a9a488a8.jpg)
だんだんとこの会社の本質が露呈する。
亮はその鍵穴を開けるチャンスを窺いながら、じっと息を潜めていた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<露呈>でした。
あの賭博師ばりにザワザワする雪‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/71/7afaa8d4f0862e338da6ce34da4852b7.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/d9/5fab7c25071e8b81a3162406d4cf050c.jpg)
蓮がエスポワールに乗ることになったらどうしよう!‥と慌てないのは、
亮さんがついててくれるからこそですね。
さて次回は<突撃>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
人気ブログランキングに参加しました
![](http://image.with2.net/img/banner/banner_21.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)