
雪が座る前方の席で淳は、一人授業を聴いていた。
胸の中がざわめき続けている。


右手にはペンが握られていた。先程雪から借りた物だ。
言ってみれば先輩の権限で、半ば強制的に‥。


猜疑心の塊のような顔をしてこちらを見る彼女の、あの表情が胸を燻らせる。
ふと淳は騒がしさを感じ、後方を振り返ってみた。

「モフモフ〜モフモフ〜」「ちょ‥止めてってば!」

そこには仲良さそうに戯れる三人の姿があった。
淳の胸中は、ますます靄がかかった様に曇る。
「‥‥‥‥」

思い出す場面があった。
冬休み前、突然彼女から服の端を掴まれた時のこと。


今まで話すことはおろか近付くことすらままならなかった彼女が、隣に居たあの瞬間。
あの時の驚きと心が震えるような感覚は、今も忘れられない。

けれどその後、雪は言った。
「あ‥すいません!間違えちゃって‥太一かと思っちゃって」

”福井太一と間違えた”のだと。
随分仲が良いんだな

フン

淳はまるで拗ねた様にフンと息を吐いた。
後ろの席では雪が、大きな溜息を吐いている。

その息遣いを背中で聴きながら、淳は窓の外を眺めていた。
どうして何度もこんな気持ちになるのか


自分でも分からなくてー‥

霞がかった、春の空気が胸を震わせる。
それは時に、弾むボールのように胸を弾く。

だから俄然興味が湧いた

ザンッ

ボールは放物線を描いてゴールへと吸い込まれて行った。
ゴールネットを揺らしたボールは地面に落ち、数度バウンドする。


まるでこのボールのように、彼女は胸の中で弾んで動いて、淳のペースを掻き乱していた。
思い浮かぶのはいつも、引き攣ったようなその表情。

その無理矢理な挨拶。常に逃げ腰のその姿勢。
「あっ!先輩」 「こっ‥こんにちは」

逃げる兎をなだめながら追い掛けてる気分‥

淳はゆっくりとボールを手に取った。
このボールのようにいつか、逃げ回る兎もこの手の中に収めることが出来るだろうと。
「ゆっくりと」

「負担を掛けないように‥」

計算通りに、囲い込む。
淳は口の端を微かに上げながら、そう一人呟いた。

所々ライトで照らされた夜のコートは、どこか白んでぼやけて見える。
春の空気は水蒸気を多く含む為、どこか朧に見えると言う。

掴みどころのない春の空気のせいだろうか。
その胸中が微かに、踊るように揺れるのは‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<<淳>朧>でした。
ポクシルってモフモフって意味なんですね(笑)

淳、この頃からあのモフモフな髪の毛が気になっていたのか!
私もモフモフしたい!
最後のシーンで出て来たバスケのコートは、
高校時代淳が亮をバスケに誘って行ったコートなのかなぁ‥。


(4部41話にバスケしてるシーンがありました。このコートかな?)
今は一人、っての切ないですね。。
次回は<<淳>風光る>です。
この淳の回想編は、全て春の季語をタイトルにしてみてます

☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
人気ブログランキングに参加しました



「雪ちゃんは俺と付き合ってる、太一じゃなくて」ってあのときは逃げも隠れもしない感が堂々としてカッコいい!って思ったもんでしたが、
実はずっと太一に嫉妬してたからなんですね。
知れば知るほど小さ…いや可愛い奴ですね。
まるで自信が無いんだねえ、、
色んな思惑と自覚できてない恋心があるにせよ、もう少し楽しむ余裕を持ってもいいのにね。。
前回の淳のモノローグと静香の回も同じく、自分を客観視していながら現実逃避していた点では2人は似てますね。。
奇しくもその2人をここに来てグイッと現実に引き戻したのはいずれも雪。
フワフワしていながら図らずも2人を更生させる強い意志!
実際は一番フワフワしてないよ!(笑)
イケメン雪!(笑)
途端に淳が女々しく見えてきました、、
本家が最終回迎えたということですごく寂しいです。日本語の本ほしいです~
このブログもこれから何回も読みたい。^^
最終回みたいなコメントしてすみません (笑)
いつも更新ありがとうございます…!
嫌なこと起きてたら雪ちゃんも警戒するの
決まってるのに(引きつってても挨拶返す雪ちゃんえらい…(;_;))むしろ関わりたくないのに笑
なんでそこは棚に上げて
太一にヤキモチしちゃってるのー笑)^o^(…
これから先輩が自分の行ってきたことを
反省した結果がこないだの涙なのだとしたら
それまで随分長かったですね…)^o^(
ここから恋愛に発展するのが
スゴイとしか言えないです…笑
続き待ち遠しい!
それなのに淳ったら猟じゃないんだから…。不器用なんだなぁ。
解説が丁寧だから本当によくわかります。漫画のときはそれほど深く考えてなかったです。
あ~あ私も恋したくなりました❗
キュンキュンしたい~💧
ごちそうさまです(笑)
先輩の嫉妬は評価が「可愛いor小さい」の真っ二つに割れますが、カヤノさんは「可愛い」ですね!なんてお優しいっ‥!
くうがさん
おっ?聞き逃さなかったですよ!小さい男という言葉を!w
そしてくうがさんのコメントで気づいたのですが、太一に対しての嫉妬でモヤモヤしてたからバスケしに行ったのか?!と。
「俺バスケ上手いから!太一も元バスケ部で上手いかもしんないけど俺だって上手いから!」という無言の嫉妬を感じましたよ!
どこまでも小さ‥いや可愛い奴ですね!
うめやんさん
静香と淳、二人を現実に引き戻したのは雪、という解釈!素晴らしいっ‥!!
いつだって現実を堅実に生きてきた雪ちゃんだからこそ、そんな芸当が出来たのでしょうね〜!
abさん
日本語単行本欲しいですよね〜!
でもそうなったら一体何巻分になるんでしょうか‥お金を貯めておかなければっ‥!
最終回までこのブログは後一ヶ月程ですが、最後までよろしくお願いします!
コタツさん
コタツさん「可愛い」に一票投じましたね‥!淳、良かったな!
Aliceさん
本当よくここから恋愛関係に持って来れましたよね先輩‥。
雪ちゃんもよく赦したものですわ‥
まさにタイムリーです。
この爽やかな作画と朧がかった空気感に、恋っていいよな‥と思えますよね〜!
大学生良いなぁ〜
ぷははは!さすがの鋭い切り口ですね!
なるほど、これまさか球技大会にむけての練習?!去年は横山に赤っ恥かかされ今年は雪に絶対いいとこ見せないとですもんね!
勝利してたから淳大活躍だったんでしょうが、太一は食あたりで倒れて不参加だから勝負つかず、残念!雪ちゃんは観戦してたんだろうか?