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目を覚ますと、雪は大学病院のベッドに寝かされていた。
手の甲に付けられた点滴の針が痛々しいが、気分はいくらかマシになったようだ。
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ベッドの周りには、赤山家全員が勢揃いしている。
「ストレス性胃炎ですってよ。大した病気じゃなくて良かったわ。薬飲んで寝てなさい!」
「へ~ここが姉ちゃんの大学の大学病院か~」
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ワイワイと自分を囲む家族の中で、雪はどこか変な気分だった。
覚えてはいないが、何か怖い夢を見ていたような気がしてならない。
「亮君から電話もらった時、どれほど驚いたか!
事故にでもあったんじゃないかって思ったわよ」
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母の口から出たその名を聞いて、雪はギクリとした。
「あ‥河村氏が‥」
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蓮は、先程の状況をこう振り返る。
「亮さんがあんなにテンパってんの初めて見たよ。もう口から魂抜けんじゃないかと思っちゃった。
でもお医者さんの話聞いたらすぐに出てっちゃったんだよね。なんでだろ?」
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亮が自分の為に必死になっていたのだと思うと、苦い気分が胸に広がった。
返す言葉が見つからないが、それ以上は蓮も突っ込んでこなかった。
「もう大丈夫なの?」「うん、さっきよりは‥ちょっと休んだら良くなると思う」
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そう言ってすぐにでも起き上がりそうな雪に向かって、母は怖い顔をして諭し始める。
「まったくもう!奨学金のことはもういいわよ。そのせいで倒れたようなもんでしょう?当分店で働くのも止めときなさい」
「そうだぞ。もうすぐ四年生だし、就活のことだけ考えなさい」
「姉ちゃんのガッコ変なやつ多すぎだからさー、そのせいで倒れたんじゃね?」
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家族は三人三様に、それぞれが雪を心から心配していた。中でも母親はとびきり、雪の抱えたそれを強調する。
「雪は変に頑張っちゃうからねぇ‥。とにかくストレスのせいよ、ス・ト・レ・ス!」
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性分のせいだと思っていても、ストレスは知らず知らずのうちに自分を追い込んでいた。
雪は返す言葉もないまま、しばしの休息を余儀なくされたのだった。
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しばらくしてから父が退室し、続いて蓮が席を立った。
「そんじゃお先ー」「勉強しに行くんでしょうね?」「そうだってば!」
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雪は今の状況を、携帯メールに書いて送る。
TO 聡美と太一「お腹痛くなって病院で寝てる。今日は授業出れないやTT」
TO 河村氏「河村氏、もう目が覚めました。助けてくれてありがとうございました」
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すぐに返信があった。
From 聡美「へっ?!大丈夫なの?!ゆっくり休みなよTT
深刻な症状じゃないよね?そーだよね??」
From 太一「去年も倒れてるし、虚弱体質になっちゃってるんじゃないでスカ?
運動しましょうネ!」
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亮からの返信は無かった。
続けて雪は、淳へのメールを書く。
TO 先輩「先輩、私今大学病院で寝てます。お腹痛くなっちゃって‥TT
一日だけ入院するかもです」
From 先輩「え?大丈夫なの?」
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雪が引き続き携帯を眺めていると、母親が時計を見ながら立ち上がった。もう昼食の時間なのだ。
「病院のご飯食べたくないでしょ?お粥でも買ってくるわ」「うん」
「とりあえず今日は入院して、明日退院だわね」「ん」
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母はそう言うと、財布を片手に病室を出て行った。
雪は寝たままで母を送り出す。
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カーテンが閉じられると、先程まで賑やかだったそこは急に静かに感じられた。
雪はぼんやりと天井を見つめる。
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カーテンで仕切られただけの個人スペースからは、あちらこちらで面会の人の声やテレビの音が漏れていた。
回診で訪れる医者や看護師の声、運ばれるベッドのキャスターが転がる音、病院には色々な音が溢れている。
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「‥‥‥‥」
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雪はだんだんと落ち着かない気分になった。
慣れない今の状況もそうだし、気掛かりなことが多すぎるのもその要因だった。
あ‥財務学会始まったんだっけ‥。しかもすぐ期末テストだ‥
奨学金も‥本気で諦められるわけないし‥どうしよ‥
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うーん‥
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重ね合わせた手は、点滴のせいか冷たかった。
いつの間にか目を閉じていた雪は、母が帰ってくるまで暫し微睡む‥。
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<賑やかな病室>でした。
赤山家、ほんといい感じになりましたよね。
皆が雪のこと心配して顔を揃えている様子を見てると、胸がじーんとなりますね‥。
次回は<影響ー受けるー>です
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何だか先輩って何を言っても本音か疑うようになります。
例えば今回のメール。
先輩が雪ちゃんの事好きなのは確かですけど、
私は彼のメールを見ると本音か空世辞か疑ってしまいます。
彼なりには心配してるはずですが・・・
先輩の言動、本心なのか裏があるのか疑ってしまうこと。
数々の裏工作を知ってるんで(読者は特に)
根回しのプロ!
雪との関係は少しずつ深まってはいるかもですが、心底信用出来ませ~ん。
でも、今までも雪との間になんどもピントのズレがありましたので、ん?て思う言動全てが本心でないとか裏があるっていうわけてわもないんですよね
う~ん…彼の闇深いですね…
先輩もよくピントずれてますねって話です
ぷはは…自分も先輩と仲間だ。笑
昨年も雪ちゃんって倒れているですよね、確か。
気になってたのですが、今のところここからそれに繋がっていく感じはしないですね。
yukkanen(お師匠)様、出張のこと覚えていてくださって光栄です。
結局自由時間なくて、(シネコンもお客さんと一緒だった…)GETできませんでした。
でもいいんです。わたしにはこのブログの方がありがたいです。
スンキさん自身のブログも覗いてはみましたが、韓国語なのでどこに何が書いてあるのか何一つわからず…
スンキさん自身が結末をブログで予告したというのは事実なのでしょうか?
ここでこんな質問をしてしまい本当にすみません>_<
もしおわかりなら教えていただけると嬉しいです。
先ほどの質問は、今日Web漫画誌のコメント欄でそう書いているのを発見して、かなりショックで、作者本人が本当に内容を予告したりするのか疑問だったので、お尋ねしました。
これだけ先輩の本性を目にしてきている読者ですら、彼の本音かどうかが分からないってすごいですよね‥。
それでもこれだけ人気があるのはなぜなんでしょう‥よく分からなくなってきました(汗)
りんごさん
根回しのプロ!本当その通りですね。
思考回路がちょっと人と違っているというか‥読者ですら「おかしな子供」目線で彼を見てますからね‥孤独ですよ彼は(苦笑)
ragoさん
お仕事おつかれさまでした!単行本ゲットならずは残念でしょうが、今回のセットは特に改稿なども無かったので大丈夫ですよ!(何が)
ブログ、これからも頑張って更新していきます!!
吉ゾウさん
はじめまして!コメありがとうございます。
このブログのコメ欄には「呪いの顔文字」というのがありまして、><←こういう顔の絵文字を打つとそれ以降の文章が消えてしまうのです‥。今まで数々の方々が呪われてしまいましたので(涙)、以後お気をつけ下さい!
ご質問の件ですが、<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ー
http://blog.goo.ne.jp/yukkanen/e/8baf89a3a6f34819982272ff9b2e40dc#comment-list
にも同じ質問が来ておりまして、
私が出来る回答としては、「スンキさんは最終回の内容を<皆がびっくりするような展開ではない>と言った」という情報しか知りません‥。
このような解釈ブログをかいてくださるだけでもチートラファンの私にとっては本当に嬉しいことなのに、一つ一つコメントに丁寧に答えて下さり感激しています(*^^*)!
しかめ顏の絵文字で文が消えるのですね、気をつけておきます!
それから、スンキさんが語っていたことを教えていただきとても嬉しいです(^-^)!!誰とどうなるとはやはりはっきりとは語られてないようですね^^その言葉なら納得できますし良かったです。
これからも漫画の展開もこちらの解釈ブログも楽しみに読ませていただきます!
本当にありがとうございました(*^^*)!!
何かを読んだのか勘違いをしていたのか‥謎ですね。。
本家はあと少しで最終回だそうなので(多分‥)、楽しみに見守っていきましょう!
また遊びに来てくださいね!