
本日は気持ちの良い秋晴れ。
しかしそんな抜けるような空の下で、赤山雪は眉間にしわを寄せていた。

お腹の辺りを押さえながら、優れない顔色で一人思う。
胃もたれが‥昨日の夕飯かな‥。てかあの雰囲気で食べれた私ってスゴイ‥
お腹がイタイ‥しかも疲れ取れないし‥。

悪いのは顔色と身体だけではなかった。心まで様々な気掛かりが押し寄せる。
てか蓮のヤツ、薬はちゃんと渡したでしょうね?
私から直に渡すのはちょっとね‥。二人きりってのはさすがにマズイ‥


亮への気遣いのみならず、今の状況下で自分がどう振る舞えば良いのかにも気を配らなければならず、
雪の思考はグルグルと渦を巻く。
きっと先輩と同じくらい怪我してるんだろうけど、あの人の性格上放っとくに決まってるもん‥。
あ、てかてか今日先輩会社で大騒ぎなんじゃないの?もうっ 二人共後先考えず一体何やってんのよ!

心の中で爆発する二人への不満。
‥ていうか私も自分のことで手一杯なのに何やってんだか‥。頭イタ‥

そしてそんな二人に振り回される自分への不満。
雪は溜息を吐きながら、大学院の方へ歩いて行った。

そこはまだ朝早い時刻だというのに、沢山の人で賑わっていた。
わぁ‥大学院にこんなとこあったんだ

暫し驚いた後、ガラス戸を開けて入室した。雪は担当者らしき人物に向けて口を開く。
「おはようございます。ここが財務学会で‥」

最後まで言い切る前に、視界に入って来た人物を見て雪は言葉を飲んだ。
「あれ?佐藤先輩?」 「え?赤山‥」


そこにいたのは、経営学科四年の佐藤広隆だった。
担当者は笑顔を浮かべ、雪に向かって口を開く。
「お知り合いですか?それは良かったですね。
赤山雪さんですよね?時間ピッタリですよ」

「お会い出来て光栄です。財務学会MSTAへようこそ」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「では佐藤君の隣に座って下さい」

はい、と雪は返事をした後、佐藤広隆の隣に着席した。
漂うのは、そんなに親しくないのに隣にされてしまったという、なんとも気まずい雰囲気‥。

そして雪が座るやいなや、担当者からの説明が始まった。
「志願書には全セッションに参加可能と書いてありますが‥大丈夫ですか?」
「あ、はい!なんとしても‥」

「ひとまず今日から毎週金曜の午前は企業別財務諸表、または討論を行います。
土曜の午前は最近の企業イシューを個々に分析する時間になっています。勿論全ての活動は英語で行いますので」
「はい‥」

英語で発表‥。覚悟はしていたが、これは相当大変そうだ。担当者はそんな雪の表情を見て、柔和な態度で話を続ける。
「少しハードに感じられるかもしれませんが、現在金融機関で働いている先輩達からのアドバイスも聞けますし、
コンテストや資格証の準備をする時も有利ですから、根気強く取り組めばとても役に立つでしょう。
ですが、出席が足りなかったり準備不足が続けば除名しますので覚悟して下さいね」
「はい。分かりました」

雪がそう返事をすると、担当者は笑顔で頷いた。
「その他詳細につきましては、隣の佐藤君に聞けば良いでしょう」「ハイ‥」

担当者からそう言われても、佐藤は雪の方を見もしなかった。
ただ軽い咳払いをしだけだ。
佐藤先輩がここにいるとは‥

雪は佐藤の横顔をちらと見ながら、ソワソワと落ち着かない気分になった。
やっぱり皆水面下で頑張ってるんだな‥。
私ももうすぐ四年だし、もっともっともっとしっかりしなくちゃー‥

雪の心はじわじわと焦り始めた。
財務学会に受かったことに満足してちゃいけない。更に前進し続けなければー‥。


その後、入会初日の雪は見学だが、その他メンバーは通常通りの活動を始めた。
全て英語で行われるやり取り、慣れない状況‥。覚悟はしていたが難しい。


そんな中、佐藤広隆のプレゼンが始まった。佐藤は流暢な英語で、サクサクと説明を進めて行く。
雪は手元の資料とホワイトボードを見比べながら、流れに付いて行くのに必死だ。

佐藤は涼しい顔をして丁寧な仕事をしていた。
しかしその陰には、おそらくたゆまぬ努力があるのだ‥。

雪は今まで意識することのなかった佐藤の勤勉さを目の当たりにし、その説明に聞き入った。
そして佐藤は一つのミスもしないまま、その流暢なプレゼンを終えたのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<隣の佐藤君>でした。
ちょっと他の漫画のタイトルをパロった題名にしてしまいました^^;ははは‥。
最後の方は絵しか無いので、優秀な佐藤先輩の描写はほぼ私の想像です。あしからず‥。
(でもきっと佐藤先輩はかなりデキる子だと思う!)
次回は<健太襲来>です。
人気ブログランキングに参加しました



努力家ですし。
もうどっかいってよ健太ーーー!!
ところで、また日本語バージョンのチートラを一話から見て、その後このHPも最初から見てみました!
わ、わ、わ、わかりやすい…
なんぞこの絵の解釈…とか思ってたところが多々あるんで、本当わかりやすいです!
感謝感謝です!
佐藤先輩、改めてすごい先輩なんだなぁと感じました^ ^
こんな努力家の先輩があの健太先輩に振り回されていると思うと可哀想で胸が痛い…
次回のタイトルが憂鬱です笑
やはり佐藤先輩は優秀ですよね!
彼は手堅い所に就職出来そうです。
ゆきんさん
健太ウザすぎてしょうがないですよね!
ブログ読みやすいですか!そう言っていただけると嬉しいです~^^
パルッチョさん
ありがとうございます!
ここにも健太嫌いが!佐藤先輩本当に可哀想ですよね‥。幸せになってほしい‥涙
彼は大丈夫ですよ
いいところに就職したら自信もついて堂々と振る舞えるようになるでしょう
君の時代はあと十年後よ(笑)
なのに最新版でまた健太。。せっかく亮さんで萌えてたトコに。ったく。
もうそろそろ、きとんとこっぴどい目にあって完全に消えてくれても良い頃合いだぜ!
師匠の書く文章、やっぱりホレボレ
後半の授業風景のところ、状況が浮かんできて、シックリ。
と思っていたら、師匠の想像だったって…!
涼しい顔して丁寧な仕事をしていた。しかしその陰にはたゆまぬ努力がある…
↑彼をよく言い表されていると思いました。
佐藤先輩、素敵じゃないか!
堅実だし良いとこの坊っちゃんぽいし、結婚相手としては理想的ですよね、佐藤先輩。
十年後の先輩が楽しみです。(ていうか十年後健太もう39歳‥ヒィィ)
姉様
きとんと!
横山の時も散々読者はウンザリさせられましたからね。健太に関してもまだまだイライラさせられるんでしょうね‥憂鬱‥
りんごさん
いらっしゃいまし!待っておりましたよ!
佐藤先輩の描写にはそこはかとなく彼への好意が滲み出ちゃいますね!横山とか健太はその逆ですけどね!