感情は理由も分からぬまま、揺さぶられ続ける
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青葉が茂る夏の始まり。
まるで嵐のような強い風が、淳の心の中にまで吹き込んでくるようだった。
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彼女の掌が唇に触れたあの瞬間、時が止まったかと思った。
すぐ側にある彼女の顔から、まるで目が離せなくて‥。
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掌が外されてからも、淳はその場から動けなかった。
いつも彼女は、想定の範囲外へと飛び出して行く。
知らずして淳の心を、大きく揺さぶり続けながら‥。
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けれどどんなに近付こうと手を伸ばしても、彼女との距離はなかなか縮まらない。
「今度から学校にもこうして来ればいいのに!もったいないよ」
「へへへ‥」
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ようやく意識してくれるようになったと思ったのに、
「えっ聞いてないんですか?雪ねぇ、今日合コン行くんですよ」
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まるでなびいていなかったり。
「合コン?」
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そのことで苛立ちが募って、彼女の家まで会いに行ったり。
「送ってく」
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「君と一度食事することが、こんなにも大変なことなんてな」
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そんな捨て台詞を吐いた後、
こんなはずじゃなかったと、自分で自分が分からなくなったり。

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そして接点を一つ繋ぐ度、彼女との結び付きは強くなって行った。
「すみませんでした」「俺の方こそごめんな」
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感情はわけも分からぬまま揺さぶられ続けるが、
その一方で君に近付けている気がして

こんな話も出来るようになった。
「うちの父は頑固な上にプライドが高いから、立ち直るまでちょっと時間がかかりそうです」
「そっか‥」
「こうなった以上少しでも楽に考えればいいのに、そういう部分がもどかしくて‥。
どう励ましてあげればいいのかも分からないんです」

彼女の父親の事業が倒産することになったあの時、初めて胸に抱えて来た思いを口にした。
「俺にもそういう時あるよ。うちの父親は俺よりも断然大人で賢い人だけど、たまに融通が利かない時があるんだ。
それを俺がいくらどう言おうが、父さんの年くらいになれば、それを覆すのは難しいみたいで」
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「けど反対に俺への期待感が半端なくて‥」
「友達と比べたって仕方ないって分かってるのに‥」「多分誰しもがそうなんじゃないかな」
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「敢えて他人と比較することで、自分を慰めたり、尚更憂鬱になったりね」

互いをもっと知ることが出来ただろう?
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あの時口にしたその言葉は、そのまま淳の胸の内を映したものだった。
「それだけで充分なんだ」

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そうは言ったものの
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強く、激しい風が吹く。
その薫風が、二人の関係を大きく揺さぶり変えて行く。
「これってマジで河村亮なのか?」「女も連れてやがるぜ?」
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「へぇー生きてたんだな」
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嵐にも似たその風が、淳の心を波立たせる。
いや、
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それだけじゃ嫌だ
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一日に何十回も、そのことばかり考えてた
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繋いだ接点を手繰り寄せて、彼女の一番近くへ。
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するりと逃げ回るその兎を追いかけて、淳は手を伸ばした。
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「俺と付き合わない?」
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それは彼女を繋ぎ止めるための算段だと、自分では思っていた。
「どうして告白したんですか?」
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けれどあの時、雪にそれを問われた時、無意識の答えが口から出たのだ。
「好きだから‥」
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それは驚くほどシンプルな、彼の真心だった。
青嵐は茂る葉を全て落として、隠れていた本当の心を露わにする。
見たかったものも、そして見ないふりをしていたことも、全てをありのまま剥き出しにするのだ。
俺はどうしてこうなんだ?

すると彼は、裸のままのその姿が、歪んでいることに気がついた。
それは彼が一番認めたくなかったことであり、今まで目を瞑ってきた、何よりも残酷な真実だった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<<淳>青嵐>でした。
なんだかダイジェスト感半端ないですね
こうしてみると、先輩普通の男子ですなぁ‥。
そして思い出すのは刹那の白川亮‥。
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やっぱりあれが告白のきっかけになったんですね。西条、知らずしてキューピットだったか‥
さて淳の回想編も今回で終わり。次回は現在へと戻ります。
<鍵の外れた扉>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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青葉が茂る夏の始まり。
まるで嵐のような強い風が、淳の心の中にまで吹き込んでくるようだった。
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彼女の掌が唇に触れたあの瞬間、時が止まったかと思った。
すぐ側にある彼女の顔から、まるで目が離せなくて‥。
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掌が外されてからも、淳はその場から動けなかった。
いつも彼女は、想定の範囲外へと飛び出して行く。
知らずして淳の心を、大きく揺さぶり続けながら‥。
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けれどどんなに近付こうと手を伸ばしても、彼女との距離はなかなか縮まらない。
「今度から学校にもこうして来ればいいのに!もったいないよ」
「へへへ‥」
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ようやく意識してくれるようになったと思ったのに、
「えっ聞いてないんですか?雪ねぇ、今日合コン行くんですよ」
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まるでなびいていなかったり。
「合コン?」
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そのことで苛立ちが募って、彼女の家まで会いに行ったり。
「送ってく」
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「君と一度食事することが、こんなにも大変なことなんてな」
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そんな捨て台詞を吐いた後、
こんなはずじゃなかったと、自分で自分が分からなくなったり。
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そして接点を一つ繋ぐ度、彼女との結び付きは強くなって行った。
「すみませんでした」「俺の方こそごめんな」
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感情はわけも分からぬまま揺さぶられ続けるが、
その一方で君に近付けている気がして
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こんな話も出来るようになった。
「うちの父は頑固な上にプライドが高いから、立ち直るまでちょっと時間がかかりそうです」
「そっか‥」
「こうなった以上少しでも楽に考えればいいのに、そういう部分がもどかしくて‥。
どう励ましてあげればいいのかも分からないんです」
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彼女の父親の事業が倒産することになったあの時、初めて胸に抱えて来た思いを口にした。
「俺にもそういう時あるよ。うちの父親は俺よりも断然大人で賢い人だけど、たまに融通が利かない時があるんだ。
それを俺がいくらどう言おうが、父さんの年くらいになれば、それを覆すのは難しいみたいで」
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「けど反対に俺への期待感が半端なくて‥」
「友達と比べたって仕方ないって分かってるのに‥」「多分誰しもがそうなんじゃないかな」
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「敢えて他人と比較することで、自分を慰めたり、尚更憂鬱になったりね」
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互いをもっと知ることが出来ただろう?
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あの時口にしたその言葉は、そのまま淳の胸の内を映したものだった。
「それだけで充分なんだ」
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そうは言ったものの
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強く、激しい風が吹く。
その薫風が、二人の関係を大きく揺さぶり変えて行く。
「これってマジで河村亮なのか?」「女も連れてやがるぜ?」
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「へぇー生きてたんだな」
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嵐にも似たその風が、淳の心を波立たせる。
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それだけじゃ嫌だ
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繋いだ接点を手繰り寄せて、彼女の一番近くへ。
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「俺と付き合わない?」
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それは彼女を繋ぎ止めるための算段だと、自分では思っていた。
「どうして告白したんですか?」
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けれどあの時、雪にそれを問われた時、無意識の答えが口から出たのだ。
「好きだから‥」
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それは驚くほどシンプルな、彼の真心だった。
青嵐は茂る葉を全て落として、隠れていた本当の心を露わにする。
見たかったものも、そして見ないふりをしていたことも、全てをありのまま剥き出しにするのだ。
俺はどうしてこうなんだ?
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すると彼は、裸のままのその姿が、歪んでいることに気がついた。
それは彼が一番認めたくなかったことであり、今まで目を瞑ってきた、何よりも残酷な真実だった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<<淳>青嵐>でした。
なんだかダイジェスト感半端ないですね
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こうしてみると、先輩普通の男子ですなぁ‥。
そして思い出すのは刹那の白川亮‥。
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やっぱりあれが告白のきっかけになったんですね。西条、知らずしてキューピットだったか‥
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さて淳の回想編も今回で終わり。次回は現在へと戻ります。
<鍵の外れた扉>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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本当あの「好きだから‥」は全員「ほんとかぁ〜?」でしたよねww
まさか本人もとは‥。良い意味で皆裏切られたというw
白川‥白河亮、私結構この名前良いと思うんですよね〜。韓国名の「ペクインホ」の「ペク」は「白」ですし。
Aliceさん
分かります‥先輩の過去編はとてもニヤニヤしちゃうけど、いかんせん現在の話が佳境すぎてイマイチ入り込めないという‥
しかしこれはスンキさんの最後の壮大なトラップなのですよ!あと一ヶ月、楽しみましょう
紋甲いかさん
本当に切ないすれ違いですよね。
最初の印象が悪すぎた‥先輩‥
くーままさん
先輩本人もビックリって感じですよね。
保健室では「正体不明の何かが胸を騒がせる」とか頑張って理論的に考えようとしてたけど、結局純粋な恋心だったという‥。
コタツさん
まぁ!お友達!では早速私のラインIDを‥(ノリノリ)
私もリアルでチートラ語れる友達が居なかったので、本当にお気持ち分かりますよ!
関西で良ければオフ会開催しますので!
実はこれまで3度開催してるんですよ!いつも大体同じメンバーですが‥笑
さて淳のピュアピュアさとスンキさんが神という話ですよね(まとめ方)
本当にこの物語は、伏線回収すげーなと思わせてその回収した伏線ですら淳の本心を欺く為の伏線だったというね‥。
もうスンキさん神!ゴッド!ゴッドブレスユー!(テンション)
物凄いことをやってのけてるのに、登場人物達の設定がブレることなく、読み返しても変な所が無いどころか読み返した方がシックリするという‥。
ゴッド!ゴッドブレスユー!(だからテンション)
淳の心情も紐解いてみると、根っこの部分がピュアな恋心で、そこから動く時にいつもの策士淳になっちゃってただけ、という単純さ‥。雪ちゃん目線だとあんなにも読めない男だったのに‥。もう本当すごいですよね。
言葉にならない‥と言いたいですが私も散々語ってしまったのでこのへんで‥
また熱いコメントお待ちしてますよ!!
ゆーたんばーさん
ゆーたんばーさん、お久しぶりです!!
相当久々ですよね!一年ぶりくらい‥?
物語、めちゃ動きましたでしょ!
胸キュン通り越して胸ギュンですよね(造語)
本国のチートラは最近完結したんですよ!
とりあえず私はチトラロスを読み返しで埋めようと思ってます(涙)
パクヘジンファンミ、滋賀なんですかww
本当なぜに滋賀ww
ソガンジュンファンミは今度神戸であるみたいです!でも参加費1万円!高ーーっ!
興奮が止まりません。怒涛の伏線回収!!
なんですかね、興奮して、胸キュンしすぎて胃が痛くなりました…
青田派の私にとって、想像の斜め上行く展開で脳内大フィーバーです。
てか、ここまで来てまた読み返したくなったけど道のりが長過ぎて序盤で断念。
日本の単行本でいうと、もう30巻くらい行ってる気がします(笑)女性向けでは20巻超えるの珍しいですよね。だいたい少女漫画は主人公以外の友人とかの物語で引き延ばすのですがチートラは登場人物増えないのに、いろんな視点から、時系列を行ったり来たりしながら深く深〜く掘り下げて行くという斬新なスタイル、だからおもしろい。
またゆっくり時間をかけてニヤニヤしながら青田の初恋を見守りたいと思います。
Yukkanenさん、いつもありがとうございます!
さっきパクヘジン7月にファンミーティングという記事があったので食いついたら滋賀でした。
なぜ滋賀?東京じゃないんかーい!(笑)
ウルっときたとこで、西条キューピッド説っていうね。爆弾を投下してくる、この感じ。
正直ね.....大好きです(笑)
西条キューピッドwwwwwwwグハッッッw
最高です!!!!
友達になってほしいレベルです。
あ、こっからみょーに語り出しますのであしからず。
チーズインザトラップ語る友達もいなくて、ここしかないんです。
当時は、あの「好きだから...」の前のちょっとした間をネガティヴに解釈し、てっきり淳はその場で取り繕ったと思いますよね。
そして、その後の淳の独白で、あれは淳の罠だったのだと納得までしてしました。やはり、あの時の間は取り繕いか、と。フラグ回収きたこれ、と。
ものの見事に踊らされました。
でも、確かに淳の表情に視点を当てて読み返してみると、そのとき初めて自分の感情に気づいた純粋な好意に見えることに気づきました。
さすがはスンキさん。華麗なる伏線ですね。素晴らしすぎます。
そこからの保健室のトラップ事件ね。題名から連なる重大なフラグ回収に見せかけて、読者に淳のあの告白の理由が嘘だと信じさせました。
そこからのまさかの展開。そう、あれはフラグ回収に見せかけた嘘の回収だったのです。(壮大な音楽)
いや、あのトラップ思考も淳の一部ではあるのでしょう。よく考えると、誰でもあのような思考をしていますよね。
好きな人に近づきたいと思いますし、他の男に取られたくないのは至極当然。囲いたくもなる。むしろ嫉妬かわいい。それに好きな人ができたら、その人に話しかける練習をすることもありますよね。(頭の中で話しかける妄想をする人は多いんじゃないでしょうか。)
...う...ん...?...え!?そう思うとめっちゃかわいいんですけど!!!
あの保健室で真顔だったのも、普通。だって逆に現実で親でもなんでもない人が、寝てる人の横でニヤニヤしてたらキモいです。あーゆうとこで慈愛の微笑みを浮かべていいのは2次元の人だけです。
うん、ちょっと淳さんに好意的に捉えすぎたかしら?
脱線しましたが、淳さんは、全てを含めて、実はピュアに好きだから、の行動。まあヤンデレの起源は相手への好意ですし、雪ちゃんのこと好きだとは知ってたんですが、あんなピュアっピュアだとは...感動....って感じですね〜。
こんなに美しく実は腹黒ではなくピュアだった、という漫画を読んだことないです。読み返しても、表情などにも矛盾がなく、いえ、表情こそ素晴らしすぎて、読んでいて全くイライラしないものに出会えてよかったなと思っています。(最終回みたいになってしまった。あ、でもミスがないのは、ただし服装と風景を除く、ですねw)
最初に嫌われからの恋人設定を決めたとは思います。でも、きっとスンキさんはこのお話の詳細はまず淳目線で組み立てて、そこをいかに雪ちゃんが疑うか、そして淳がいかに黒いオーラを纏わせるか、って考えたのかなって思いました。
あまりに、淳からみたこのお話が綺麗な恋愛物語だったので。
おう、はい。
このコメントを読み返すと、めっちゃ語るじゃん(笑)って感じですねww
淳が、ついに、ついに....!!!のシーンですからね。過去を思い出して語り合いたくもなります。
クララが立った!的なノリです。感動具合は比べるべくもないですが。(ハイジはもちろん面白いですが、個人的にです。)
この感動をチーズインザトラップのファンの方と共有したくて....。
心の赴くままポチポチ文章をうってしまいました。後悔はないです。
長文たびたび失礼してます。
毎回思っていますが、いつもありがとうございます。
yukkanenさんみたいな友達が欲しいです。
最後には仲良く笑い合う二人になって欲しいです。
そんなにピュアだったんですか…(;_;)
「好きだから」の答えまで間があったものだから
読者も雪ちゃんも
「先輩には打算があって、
きっと類友を見つけて手元に
置いておきたかった」って思いましたねww
実はその答えに先輩自身も
驚いてたんですね…
ただ他の人に取られたくない、
自分が隣にいて笑顔にさせたい…と。
打算も策略もなく、純粋な恋心(;_;)
チートラにある、物語が過去に戻って
少しずつ捕捉されてく感じ、糸がほどけて
真っ直ぐに線が繋がるようにとても
スッキリはするのですが、
何せ現在の続きが気になりすぎて…!!!笑
先輩泣いちゃってるし…
最終回へ向かうのは寂しいですが
先輩たちの幸せな姿を早く見たいです!
淳、雪ちゃんのこと好きすぎですな…あの「好きだから」って言ったときの間と表情に、読者も雪ちゃんも「ほんまか~?」と思ったはず(笑)自分の行動の全てがそんなシンプルな感情によるものだと自覚してなかったのかな…自分でも驚き( ゚д゚)って顔なのでしょうか