転記 [2012年10月19日(Fri)]
宮城県における「がれき処理」の現状と課題―早く、安全に、
地元力アップを原則に ゼネコンのもうけ優先の見直しを
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新みやぎ1579号(10月25日発行)の第2面
東日本大震災で発生したがれきは、その甚大さと合わせ、津波被害や原発事故による放射能の影響など、これまでの災害廃棄物とは異なる特徴を持っています。日本共産党宮城県議団は、最初の石巻ブロックの契約議案のときから、「膨大ながれきを一日も早く処理することは復興への大前提」と位置付け、早く・安全に・地元力アップを原則に処理することが重要と考えてきました。
環境省が公表している「沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況」(平成二十四年八月三十一日)によれば、岩手県が二〇・五%、宮城県が二七・六%、福島県が一四・五%で被災三県合計では二四・五%ですから、やっと四分の一が片付いたに過ぎません。いよいよこれからが正念場です。
この間、がれき処理をめぐり様々な動きがありましたが、本論考では宮城県におけるがれき処理の現状と課題について、主に県議会の論戦を中心に紹介してみたいと思います。
1、宮城県のがれき処理をめぐる経過と8つの問題
横田有史県議団長は今年の六月県議会の一般質問で、宮城県のがれき処理をめぐる問題点を8つの角度から明らかにしました。
第一は、発災直後に仙台以外のがれき総量は一千五百十五万四千トン、処理費用は五千三百十三億円とされるペーパーが出回り、これが惨事便乗型でゼネコンが「活躍」する基礎となったことです。
第二に、曲折はありましたが、ほぼ談合情報通りの契約となったことです。県に届いたメールには、環境省とスーパーゼネコンが話し合い、「石巻ブロックは鹿島・清水、名亘ブロックは大林、仙台東は清水、気仙沼は大成」との割り振りが示されていました。結果は、表1の通り見事な談合ぶりを示すものとなりました。
第三に、それを支えた不透明な審査と異常な議会対応があったことです。県土木部予算の倍にも匹敵する石巻ブロックの約二千億円の契約をたった二日間の審議で採決が強行されました。プロポーザル方式による評価・審査は、最後まで評価者の名前や配点が伏せられ、落札できなかった業者の提案書は企業情報との理由で一切公表されませんでした。
第四に、はじめから県外処理に頼るゼネコン提案が当然視されたことです。石巻ブロックは、がれきの約四割を県外処理するというものでした。県は環境省には西日本以降での処理は放射能問題もあって困難と報告しながら、議会にはあたかも実現可能であるかのように偽った対応をしていました。
第五に、ゼネコン丸投げの仕掛けが巧妙に仕組まれたことです。代表企業は、建設業の総合評点値が千五百点以上とされ、全国で四十八社、宮城ではユアテックのみです。結局、県内では一社も代表企業になれない異常な発注劇が演出されました。
第六に、広域化と大手依存で処理の大きな遅れをつくったことです。県内には、表1に示すように、仮設焼却炉二十九基が稼働する予定です。しかし、広域化とゼネコン頼みにこだわり、処理全体が遅れました。仙台市は地元産廃業者を活用し、約百三十五万トンのがれきを三カ所で分散処理し、来年五月には完了予定です。
第七に、がれき総量の大きな見直しがあったにもかかわらず、広域処理の見直しをしなかったことです。県受託分について、契約時と見直し後の総量を比較できるようにしたのが表1ですが、石巻ブロックは当初の契約時の六四%も処理量が減っています。今年五月二十一日にがれき総量の大幅な見直しがありましたが、この時に冷静な決断をし、県内処理に転換していれば、また事態は違っていたと思います。
第八に、放射能問題に対する国の姿勢が問われています。今回のがれき処理は、その線量や濃度の多寡にかかわらず、従来の原発関連放射能汚染物の処理、すなわち百ベクレル以上の廃棄物はドラム缶に入れ、完全に密封し保管するという処理と明らかに異なる対応が推進されました。放射能の不安にまともに答えないまま広域処理をがむしゃらに進めてきた政府の態度は、全国に限りない混乱を持ち込みました。
2、いわゆる「広域処理」問題をどう考えるか
日本共産党宮城県議団は、がれき処理について、早く・安全に・地元力アップを原則に、県内処理を最大限追求するというのが基本であり、その上でどうしても処理できない場合は一定の広域で協力してもらうことは必要なことだと考えてきました。しかし、とくに石巻ブロックを中心に、当初からその大半を県外処理するスキームが当然視されなど、はじめから「広域処理ありき」で事が進められてきました。
横田議員は、六月議会で広域処理問題について、次のように述べました。
「私ども日本共産党は、北九州市をはじめ全国各地で広域処理の要請を受けとめて、協力していただいている自治体、住民のみなさんに、あらためて感謝の意を表するものです。知事としても、全国各地でがれきの広域処理の受け入れをめぐって多大な苦労をおかけしていることについて、礼節を尽くして感謝と謝意を届けるべきであります。同時に、がれきの総量が大幅に減ったもとで、宮城県のがれきの広域処理の計画を抜本的に見直し、最大限県内処理で行い、宮城県については広域処理を行わないでも済む方向を知事が決断すべき時期です」
横田議員は引き続き、九月県議会の予算特別委員会の総括質疑でも、党県議団の調査に石巻市が文書で「可燃物の広域処理についてはほぼ目途が立ちました」と答えていることも紹介し、知事の決断をあらためて求めました。
知事は、ついに北九州市との契約変更がありうることを認め、以下のように答えました。「もうこれ以上お願いしなくても大丈夫だという目途が立ってくれば、その時には御礼を言いながら、『結構でございます』ということがあるかもしれません」
さらに横田議員は、所管の環境生活農林委員会での質疑でも、北九州市への輸送に海上保安庁などが厳重な警備をしている異常な光景を指摘しつつ、できるだけ早い時期に見直しを決断するよう求めました。本木隆環境生活部長は「わかりました」と答えています。
この間、宮城県は広域処理の協力を検討していた大分県や愛知県などには丁重にお断りをするなど、費用対効果なども考慮に入れた慎重な対応をしてきました。北九州市とは来年三月末までの契約で、石巻分のがれき二万三千トンを処理してもらうことになっていますが、一トン当たりの処理単価が約二万七千円に対し、輸送費が約五万円ですから、県内処理すれば約一万五千円程度の単価で済むものを、たとえ全額国費だからと言っても、国民に復興増税までして生み出した財源の使い方として、はたして適切かどうかなど、多くの方々が素朴に疑問を持つのは当たり前です。来年四月以降、北九州市が年間処理可能量としている三万九千五百トンをあらためて契約するのかどうか、県議会の議論もふまえ注視していく必要があります。
3、宮城県におけるがれき処理の今後の課題
まず第一に、以下の方向で県内処理の拡大に全力をあげることが重要です。
①いっそう分別を徹底し、リサイクルに回せる量を拡大すること。
②県内の仮設焼却炉および既設も含めた活用と連携を図ること。
③県議会議員五十九名全員が参加する「いのちを守る森の防潮堤推進議員連盟」の活動を進め、がれきの将来に向けた活用を具体化すること。
④県の外郭団体である環境公社が管理運営する小鶴沢最終処分場は、まだ百十五万トンの余裕があり、広域処理が必要とされる不燃物の四十三万トンは地元合意を前提に最終的にはそこで処理することを検討すること。同処分場の水もれ問題は早急に解決すること。
⑤来年七月で完了する宮城東部ブロックには石巻分十万トンを要請すること。岩沼処理区も早く完了する予定と聞いており、石巻分を要請すること。来年八月で終了とされる山元処理区に建設したバイオマス発電所は、木くず処理のため期間延長すること。
こうした努力を重ねれば、高い輸送コストをかけて広域処理しなくとも県内で処理することができます。
第二に、表1に示すように、がれきの総量が大きく変わっています。それぞれの処理区の実態にあった契約変更が必要となっています。
石巻ブロックは、総量が六四%も減ったにもかかわらず、現場管理費や広域のための輸送費(一トン当たり約六万円)を高めに設定するなど、契約金額は二三%しか減額しないというずさんなものでしたが、そうしたごまかしや無駄づかいを許さない監視が必要になっています。
第三に、がれき処理はゼネコンのもうけのために行われるのではなく、震災復興につながるように、地元企業や地元雇用を重視して進める必要があります。
最近、気仙沼処理区で働くダンプ労働者から党県議団に十トンダンプの報酬(一日当たりの契約単価)が三万六千円でしかなく、これではやっていけないとの訴えがありました。県の震災廃棄物対策課にただちにダンプの労務単価や契約時単価を調べてもらいました。その結果、各処理区で四万円から五万円の契約となっていることが判明しました。その後、先のダンプ労働者も「最低四万円の保障、距離で割増しする」となったそうです。こうしたがれき処理で働く労働者の健康管理および生活と権利を守るたたかいが、これからますます重要になっています。
宮城県における「がれき処理」の現状と課題―早く、安全に、
地元力アップを原則に ゼネコンのもうけ優先の見直しを
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新みやぎ1579号(10月25日発行)の第2面
東日本大震災で発生したがれきは、その甚大さと合わせ、津波被害や原発事故による放射能の影響など、これまでの災害廃棄物とは異なる特徴を持っています。日本共産党宮城県議団は、最初の石巻ブロックの契約議案のときから、「膨大ながれきを一日も早く処理することは復興への大前提」と位置付け、早く・安全に・地元力アップを原則に処理することが重要と考えてきました。
環境省が公表している「沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況」(平成二十四年八月三十一日)によれば、岩手県が二〇・五%、宮城県が二七・六%、福島県が一四・五%で被災三県合計では二四・五%ですから、やっと四分の一が片付いたに過ぎません。いよいよこれからが正念場です。
この間、がれき処理をめぐり様々な動きがありましたが、本論考では宮城県におけるがれき処理の現状と課題について、主に県議会の論戦を中心に紹介してみたいと思います。
1、宮城県のがれき処理をめぐる経過と8つの問題
横田有史県議団長は今年の六月県議会の一般質問で、宮城県のがれき処理をめぐる問題点を8つの角度から明らかにしました。
第一は、発災直後に仙台以外のがれき総量は一千五百十五万四千トン、処理費用は五千三百十三億円とされるペーパーが出回り、これが惨事便乗型でゼネコンが「活躍」する基礎となったことです。
第二に、曲折はありましたが、ほぼ談合情報通りの契約となったことです。県に届いたメールには、環境省とスーパーゼネコンが話し合い、「石巻ブロックは鹿島・清水、名亘ブロックは大林、仙台東は清水、気仙沼は大成」との割り振りが示されていました。結果は、表1の通り見事な談合ぶりを示すものとなりました。
第三に、それを支えた不透明な審査と異常な議会対応があったことです。県土木部予算の倍にも匹敵する石巻ブロックの約二千億円の契約をたった二日間の審議で採決が強行されました。プロポーザル方式による評価・審査は、最後まで評価者の名前や配点が伏せられ、落札できなかった業者の提案書は企業情報との理由で一切公表されませんでした。
第四に、はじめから県外処理に頼るゼネコン提案が当然視されたことです。石巻ブロックは、がれきの約四割を県外処理するというものでした。県は環境省には西日本以降での処理は放射能問題もあって困難と報告しながら、議会にはあたかも実現可能であるかのように偽った対応をしていました。
第五に、ゼネコン丸投げの仕掛けが巧妙に仕組まれたことです。代表企業は、建設業の総合評点値が千五百点以上とされ、全国で四十八社、宮城ではユアテックのみです。結局、県内では一社も代表企業になれない異常な発注劇が演出されました。
第六に、広域化と大手依存で処理の大きな遅れをつくったことです。県内には、表1に示すように、仮設焼却炉二十九基が稼働する予定です。しかし、広域化とゼネコン頼みにこだわり、処理全体が遅れました。仙台市は地元産廃業者を活用し、約百三十五万トンのがれきを三カ所で分散処理し、来年五月には完了予定です。
第七に、がれき総量の大きな見直しがあったにもかかわらず、広域処理の見直しをしなかったことです。県受託分について、契約時と見直し後の総量を比較できるようにしたのが表1ですが、石巻ブロックは当初の契約時の六四%も処理量が減っています。今年五月二十一日にがれき総量の大幅な見直しがありましたが、この時に冷静な決断をし、県内処理に転換していれば、また事態は違っていたと思います。
第八に、放射能問題に対する国の姿勢が問われています。今回のがれき処理は、その線量や濃度の多寡にかかわらず、従来の原発関連放射能汚染物の処理、すなわち百ベクレル以上の廃棄物はドラム缶に入れ、完全に密封し保管するという処理と明らかに異なる対応が推進されました。放射能の不安にまともに答えないまま広域処理をがむしゃらに進めてきた政府の態度は、全国に限りない混乱を持ち込みました。
2、いわゆる「広域処理」問題をどう考えるか
日本共産党宮城県議団は、がれき処理について、早く・安全に・地元力アップを原則に、県内処理を最大限追求するというのが基本であり、その上でどうしても処理できない場合は一定の広域で協力してもらうことは必要なことだと考えてきました。しかし、とくに石巻ブロックを中心に、当初からその大半を県外処理するスキームが当然視されなど、はじめから「広域処理ありき」で事が進められてきました。
横田議員は、六月議会で広域処理問題について、次のように述べました。
「私ども日本共産党は、北九州市をはじめ全国各地で広域処理の要請を受けとめて、協力していただいている自治体、住民のみなさんに、あらためて感謝の意を表するものです。知事としても、全国各地でがれきの広域処理の受け入れをめぐって多大な苦労をおかけしていることについて、礼節を尽くして感謝と謝意を届けるべきであります。同時に、がれきの総量が大幅に減ったもとで、宮城県のがれきの広域処理の計画を抜本的に見直し、最大限県内処理で行い、宮城県については広域処理を行わないでも済む方向を知事が決断すべき時期です」
横田議員は引き続き、九月県議会の予算特別委員会の総括質疑でも、党県議団の調査に石巻市が文書で「可燃物の広域処理についてはほぼ目途が立ちました」と答えていることも紹介し、知事の決断をあらためて求めました。
知事は、ついに北九州市との契約変更がありうることを認め、以下のように答えました。「もうこれ以上お願いしなくても大丈夫だという目途が立ってくれば、その時には御礼を言いながら、『結構でございます』ということがあるかもしれません」
さらに横田議員は、所管の環境生活農林委員会での質疑でも、北九州市への輸送に海上保安庁などが厳重な警備をしている異常な光景を指摘しつつ、できるだけ早い時期に見直しを決断するよう求めました。本木隆環境生活部長は「わかりました」と答えています。
この間、宮城県は広域処理の協力を検討していた大分県や愛知県などには丁重にお断りをするなど、費用対効果なども考慮に入れた慎重な対応をしてきました。北九州市とは来年三月末までの契約で、石巻分のがれき二万三千トンを処理してもらうことになっていますが、一トン当たりの処理単価が約二万七千円に対し、輸送費が約五万円ですから、県内処理すれば約一万五千円程度の単価で済むものを、たとえ全額国費だからと言っても、国民に復興増税までして生み出した財源の使い方として、はたして適切かどうかなど、多くの方々が素朴に疑問を持つのは当たり前です。来年四月以降、北九州市が年間処理可能量としている三万九千五百トンをあらためて契約するのかどうか、県議会の議論もふまえ注視していく必要があります。
3、宮城県におけるがれき処理の今後の課題
まず第一に、以下の方向で県内処理の拡大に全力をあげることが重要です。
①いっそう分別を徹底し、リサイクルに回せる量を拡大すること。
②県内の仮設焼却炉および既設も含めた活用と連携を図ること。
③県議会議員五十九名全員が参加する「いのちを守る森の防潮堤推進議員連盟」の活動を進め、がれきの将来に向けた活用を具体化すること。
④県の外郭団体である環境公社が管理運営する小鶴沢最終処分場は、まだ百十五万トンの余裕があり、広域処理が必要とされる不燃物の四十三万トンは地元合意を前提に最終的にはそこで処理することを検討すること。同処分場の水もれ問題は早急に解決すること。
⑤来年七月で完了する宮城東部ブロックには石巻分十万トンを要請すること。岩沼処理区も早く完了する予定と聞いており、石巻分を要請すること。来年八月で終了とされる山元処理区に建設したバイオマス発電所は、木くず処理のため期間延長すること。
こうした努力を重ねれば、高い輸送コストをかけて広域処理しなくとも県内で処理することができます。
第二に、表1に示すように、がれきの総量が大きく変わっています。それぞれの処理区の実態にあった契約変更が必要となっています。
石巻ブロックは、総量が六四%も減ったにもかかわらず、現場管理費や広域のための輸送費(一トン当たり約六万円)を高めに設定するなど、契約金額は二三%しか減額しないというずさんなものでしたが、そうしたごまかしや無駄づかいを許さない監視が必要になっています。
第三に、がれき処理はゼネコンのもうけのために行われるのではなく、震災復興につながるように、地元企業や地元雇用を重視して進める必要があります。
最近、気仙沼処理区で働くダンプ労働者から党県議団に十トンダンプの報酬(一日当たりの契約単価)が三万六千円でしかなく、これではやっていけないとの訴えがありました。県の震災廃棄物対策課にただちにダンプの労務単価や契約時単価を調べてもらいました。その結果、各処理区で四万円から五万円の契約となっていることが判明しました。その後、先のダンプ労働者も「最低四万円の保障、距離で割増しする」となったそうです。こうしたがれき処理で働く労働者の健康管理および生活と権利を守るたたかいが、これからますます重要になっています。