東京新聞より転載
【秘密保護法 言わねばならないこと】
(4)公文書公開に逆行 歴史学者 久保 亨氏
2013年12月21日
日本は公文書の保存、管理、公開では後進国だ。国立公文書館の保存資料やスタッフ数は欧米、中国と比べて桁違いに少なく、各国の公文書館を利用する歴史学者は皆、日本の立ち遅れを痛感してきた。世界的な情報開示の流れを受けて二〇〇一年に情報公開法、一一年に公文書管理法が施行され、法的枠組みがようやく整ったのに、特定秘密保護法は逆行している。外交でも、情報公開した上で自国の立場を説明するのが本来の道筋だ。
もちろん守られるべき秘密はあるが、現行法制で対応できる。二つの法律の補正、強化が大切なのに、なぜ脅しのような新法が必要なのか。政府は十分に説明していない。行政の長が秘密を指定し、解除の基準もはっきりしないことに、文書管理に携わる現場の懸念も大きい。法案の土台をまとめた有識者会議に、公文書管理の関係者を入れなかったことも非常識だ。
欧米やアジアでは市民革命や独立運動の後、公文書館がつくられた。自分たちの歴史が文書で記録され、公開される大切さを知ったからだ。しかし下からの民主化の経験がない日本では、パブリック(公)の概念が確立しないまま近代国家のふりをし、公文書への認識も抜け落ちてきた。
国民が情報を獲得してチェックし、行政はチェックされていることを念頭に動く仕組みがなければ、真の民主主義国家とはいえない。秘密保護法の廃止を目指すのはもちろん、同時に、民主社会を支える情報公開で日本がいかに遅れているか、それが国際的な立場をどれほど危うくするものか、国民全体が自覚しなければいけない。
くぼ・とおる 1953年生まれ。信州大教授。専門は中国近現代史。特定秘密保護法に反対する学者の会に参加。
【秘密保護法 言わねばならないこと】
(4)公文書公開に逆行 歴史学者 久保 亨氏
2013年12月21日
日本は公文書の保存、管理、公開では後進国だ。国立公文書館の保存資料やスタッフ数は欧米、中国と比べて桁違いに少なく、各国の公文書館を利用する歴史学者は皆、日本の立ち遅れを痛感してきた。世界的な情報開示の流れを受けて二〇〇一年に情報公開法、一一年に公文書管理法が施行され、法的枠組みがようやく整ったのに、特定秘密保護法は逆行している。外交でも、情報公開した上で自国の立場を説明するのが本来の道筋だ。
もちろん守られるべき秘密はあるが、現行法制で対応できる。二つの法律の補正、強化が大切なのに、なぜ脅しのような新法が必要なのか。政府は十分に説明していない。行政の長が秘密を指定し、解除の基準もはっきりしないことに、文書管理に携わる現場の懸念も大きい。法案の土台をまとめた有識者会議に、公文書管理の関係者を入れなかったことも非常識だ。
欧米やアジアでは市民革命や独立運動の後、公文書館がつくられた。自分たちの歴史が文書で記録され、公開される大切さを知ったからだ。しかし下からの民主化の経験がない日本では、パブリック(公)の概念が確立しないまま近代国家のふりをし、公文書への認識も抜け落ちてきた。
国民が情報を獲得してチェックし、行政はチェックされていることを念頭に動く仕組みがなければ、真の民主主義国家とはいえない。秘密保護法の廃止を目指すのはもちろん、同時に、民主社会を支える情報公開で日本がいかに遅れているか、それが国際的な立場をどれほど危うくするものか、国民全体が自覚しなければいけない。
くぼ・とおる 1953年生まれ。信州大教授。専門は中国近現代史。特定秘密保護法に反対する学者の会に参加。