不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Apertura Straordinaria del Corridoio Vasariano

2008-10-14 13:27:17 | アート・文化

通常は一般公開されておらず、
グループ予約をして入館する以外に
なかなか入場機会のない「ヴァザーリの回廊」が
10月14日から12月31日まで
期間限定で個人客に対しても門戸を開きます。

フィレンツェのヴェッキオ宮殿(Palazzo Vecchio)から
ウフィツィ美術館(Galleria Degli Uffizi)と
ヴェッキオ橋(Ponte Vecchio)を通り
ピッティ宮殿(Palazzo Vecchio)までを繋ぐ廊下。
1565年にトスカーナ大公コジモ1世
(Granduca Cosimo I de' Medici)が
息子フランチェスコ(Francesco)と
ジョヴァンナ・ダウストリア(Giovanna d'Austria)の
婚姻を記念して
既にウフィッツィ(行政庁舎)を完成させていた
ヴァザーリ(Giorgio Vasari)に命じ
竣工後わずか5ヶ月で完成。

この二人の婚姻を機会に集うメディチ家の主要メンバーが、
ライバルや外敵の襲撃から護られた状態で
市庁舎であるヴェッキオ宮殿と
居住宮殿であるピッティ宮殿を
自由に往来するために考案されたもの。
当時はそれまでの共和制が倒され
メディチ家の独立権力に移ったばかりで
まだメディチ家の大公としての政権が
確固たるものになっていなかったために
市民からの反発や反感も根強く残っており、
そうした攻撃から
君主一族を護るためには必須の回廊だったのです。

ヴェッキオ橋の上で営業していた肉屋は、
高貴な人々が上層階を通過するのに
悪臭を放ってはならないというだけの理由で全店撤去され
代わって貴金属店が軒を連ねるようになり現在に至っています。

ヴェッキオ橋の南端の
マンネッリの塔(Torre de' Mannelli)の部分で
回廊は一部迂回しているのが橋の上からも確認できます。
この中世の塔の所有者であったマンネッリ家は
自分の所有建物をメディチ家の廊下が通過することを
毛嫌いし、粘り強く反対しました。
回廊の完成を急いでいたメディチ家は
このマンネッリ家の根強い抵抗を見て
一部迂回という苦策をとったのです。
またヴェッキオ橋の中央部分で
下流のサンタ・トリニタ橋(Ponte Santa Trinita)
に向かって、大きく開かれている窓があります。
回廊の経路上にある窓はどれも
ルネッサンス時期の開口部の狭い小さな窓ですが、
この端の中央部分だけパノラミックな窓になっているのは
ムッソリーニ(Mussolini)が望んだから。
1939年にヒトラー(Adolf Hitler)が
イタリアとドイツのナチ政権の連帯を強めるために
イタリアを訪問し、
その際にフィレンツェにも立ち寄ったのですが、
この機会にムッソリーニが大きな窓に取り替えて、
ヒトラーはここからの非日常的な眺めを堪能したのです。
このときに見た風景が感動的であったために
ドイツ・ナチ軍のフィレンツェ撤退時の市街爆撃の際にも
他の橋はすべて爆撃したものの
ヴェッキオ橋だけは爆撃しなかったのだとも言われています。

ヴェッキオ橋を越えると回廊はサンタ・フェリチタ教会
(Chiesa di Santa Felicita)の正面ファサードへ繋がります。
この教会内にはメディチ家のメンバーが
外に出ずとも、他の人の目に触れずとも
神に祈りを捧げることができるように、
教会内側にバルコニーが設けられています。

現在ヴァザーリの回廊はウフィツィ美術館の一部とされており、
世界的に有名な肖像画コレクションで飾られています。
フィレンツェで仕事をした画家たちの肖像画や
海外で活躍したイタリア人画家たちの肖像画などが中心。

今回一般公開になるのはウフィツィ美術館3階西翼から
ボボリ庭園のブオンタレンティ(Buontalenti)の洞窟彫刻まで。

たった2ヶ月だけの特別開館です。
この機会にイタリアにいらっしゃる方は是非足を運んでみてください。

Apertura Straordinaria del Corridoio Vasariano
会期:2008年10月14日から2008年12月31日まで
開館時間:火曜日・木曜日:9:00と11:30、
                  水曜・金曜:14:00と16:30
       それぞれ定員20人の完全予約制
入場料:14,00ユーロ
予約先: ウフィツィ予約センター +39-055-294883

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