不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Piazza della Repubblica

2012-05-09 08:35:00 | アート・文化

フィレンツェの街の中心にある共和国広場。
しかし、共和国広場(Piazza della Repubblica)と
今のような名称で呼ばれるようになったのは
実は最近のことで、
第二次世界大戦後から。
75メートル×100メートルの長方形の
現在の形に整えられたのは
フィレンツェが統一イタリアの首都となった1865年以降。

古代ローマ時代から街の中心であったといわれる
長い歴史のある広場です。
ローマ人は主要道路を交差させた地点を街の中心として
都市形成をしていましたが、
この広場も同じく、南北と東西を結ぶ主要道路があり
その交差点の部分に
現在は「豊穣の女神の柱
(Colonna dell'Abbondanza)」が建てられています。
数週間前に一部崩壊したために修復中です。
この豊穣の女神も、もともとは1431年から
Donatello(ドナテッロ)作の像が置かれていたのですが、
修復不可能なほどに傷んでしまったため、
1721年にGiovan Battista Foggini
(ジョヴァン・バッティスタ・フォッジーニ)が
再製作したものに置き換えられています。
そして1956年からはフォッジーニのオリジナルも
CRF(フィレンツェ預貯金銀行)の所有となり、
現在広場に置かれているものは複製品になります。

中世の時代になると、広場周辺は緑地や農地も減り、
建物が密集するようになります。
人口が増え、スペースが不足してくると
塔状の建物が多く建てられ
空間を求めて上へ上へと街が広がっていきます。
ほかのイタリアの主要都市と同じように
フィレンツェの街でも
広場は市民生活の中で重要な役割を果たすようになり、
ドゥオーモ前の広場は宗教(当時は政治にも密着)の中心、
シニョリア広場は政治の中心、
そして現在の共和国広場は商業の中心として
役割分担ができそれぞれに発展していきます。
これにより、現在の共和国広場は「市場」として活用され
1500年代にもっと川に近い部分に新しい市場が作られると
Mercato Vecchio(古い市場)と呼ばれるようになります。

そしてコジモ1世の時代になると
市場としての機能を除かれ
当時、街の各地に住んでいたユダヤ人たちを
一箇所に集めて生活させる
ゲットーとして利用されるようになります。
ゲットー内には
イタリア系ユダヤ人、スペイン系ユダヤ人、
レバノン系ユダヤ人の
それぞれの礼拝所として
3種のシナゴーグが建てられていたそうです。

やがてイタリアが統一され、
フィレンツェが一時的に首都となると、
大掛かりな街の整備が始まり、
1885年から1895年にかけて
共和国広場周辺も大きく様相を変えることになります。
このころフィレンツェ周辺で活躍していた
マッキアイオーリ派の
Telemaco Signolini(テレマコ・シニョリーニ)は
古きよき広場周辺の区域が
急速に変わり失われていくのを嘆き、
新しくできた建物を不恰好だと批判しました。
当時大人気だった建築家
Vincenzo Micheli(ヴィンチェンツォ・ミケーリ)、
Luigi Buonamici(ルイジ・ブオナミチ)、
Giuseppe Boccini(ジュゼッペ・ボッチーニ)が
この大整備の大半を手がけています。
現在の共和国広場の西側のアーケードと
そこにかかる巨大なアーチは
ルネッサンス建築にインスパイアされた
ミケーリの手によるものです。

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この大改修&大整備のあと
広場は当時の国王の名前を取って
ヴィットリオ・エマヌエレ2世広場と呼ばれるようになります。
広場にはエマヌエレ2世の騎馬像も置かれていたのですが、
これがフィレンツェ市民には不評で
1932年には広場から取り除かれ、
カッシーネの森の入り口に現在もおかれています。

ほとんどの建物は取り壊されてしまいましたが、
Vasari(ヴァザーリ)の手による
Loggia del pesce(魚介のロッジャ)は
一度解体され、チョンピ広場に再建されています。
またいくつかの建物の破片や石碑などは
現在もサンマルコ美術館に保存展示されています。

広場周辺は考古学的にも非常に興味深い場所で
近くには
ローマ時代の浴場跡が見つかったVia delle Termeや
ジュピター神殿があったであろうことが想像される
Via del Campidoglioなど
その考古学的発見の名残を残す通りの名前がいくつかあります。

何気なく歩いている場所も
歴史を刻んでいるのだなぁと改めて実感しています。

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