不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Chiesa di San Carlo alle Quattro Fontane

2012-05-16 19:01:32 | アート・文化

ローマに行くことは多くても、
いつも同じ場所ばかり歩いて、
訪れる教会もいつも同じところ。
それも芸がないと思い、いつもとちょっと違うところへ。

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クイリナーレ通りに面した、とても小さい教会。
交通量の比較的多い通りで、
外壁は排気ガスで真っ黒に汚れています。
四噴水(Quattro Fontane)の交差点にあり、
教会の壁にも4つの噴水のうちひとつである
テヴェレの噴水(Tevere)が設置されています。

これほどの交通量があるにもかかわらず、
教会内に一歩踏み込むと
外の喧騒がまるでうそのような静けさ。

教会は17世紀の建築で、
ローマバロックの傑作のひとつとも言われます。
教会、修道院、そして小さな中庭からなる建築物は
大部分は1634年から1644年にかけて
Francesco Borromini
(フランチェスコ・ボッローミニ)が手がけています。
彼の在命中に完成しなかった部分は、
彼の死後も1680年まで
Bernardo Borromini
(ベルナルド・ボッローミニ)が引き継いでいます。

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スイス人のボッローミニは
1620年ころからローマで活動し
ヴァチカン・サン・ピエトロ寺院の
主祭壇前におかれる
巨大な飾り天蓋も手がけています。

この教会は聖三位一体修道会
(I Trinitari)の依頼によるもので
あまり裕福でなかった修道士たちのために最低限のコストで、
限られた小さなスペースを有効に使うよう工夫され、
なおかつエレガントで質の高い建築物に仕上げられています。

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I Trinitariのシンボルでもある十字架紋章。

教会正面ファサードは二層構造になっており、
3つに区分される下層部分は
両脇が凹状、中央入り口のある部分は凸状になっています。
それに対して上層部は同じく3つに区分されていますが、
すべてが凹状で
中央部分に凸状の壁がんが取り付けられて
アクセントとなっています。
この凹凸の動きが、
ファサード全体に躍動感を与える効果を生み出しています。
Carlo Borromeo(カルロ・ボッローメオ)の
立像の置かれる中央入り口上の壁がんは
ケルビム天使の羽で装飾されています。
また上層部の中央には空を舞う天使に支えられるようにして
メダリアの装飾がつけられています。
当時はここにもカルロ・ボッローメオの肖像がはめられていたそうです。

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教会内部は直線と曲線の入り混じる構造で
ギリシャ正十字が少し縦方向に伸びた形になっています。
楕円形のクーポラは
八角形、六角形、十字架の3つのモチーフの組み合わせで
格間装飾されています。
このクーポラの明り取り窓から入る光で格間装飾にも陰影ができ
動きのある美しさを強調しています。
きれいな曲線で動きのある内部には華美な装飾はなく、
三位一体を思わせる3を基本とした装飾や組み合わせが各所に見られます。

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隣接する回廊つきの小さな中庭も
八角形を基本として
教会内部と同じように
直線と曲線の組み合わせの美しい空間になっています。
回廊は二層構造になっており
特に上層部はシンプルな柱で支えられ、
装飾として用いられている欄干の小柱には
三角形の装飾が交互に使われています。
このようなシンプルで動きのある装飾のおかげで
非常に狭い空間でありながら、
明るく圧迫感のない仕上がりになっています。
中庭の真ん中に置かれた井戸もさりげなく八角形で統一が取れています。

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冠している名前は
ミラノの司祭Carlo Borromeo(カルロ・ボッローメオ)。Nfc__1443
ヴァチカンのサン・ピエトロ寺院の丸天井を支える
4本の柱の一本分しかない、その大きさから
San Carlinoの縮小詞をつけて呼ばれ親しまれています。