不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

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2012-07-04 19:04:06 | Tweet Log



La resurrezione di Lazzaro

2012-07-04 13:42:00 | アート・文化
イエスキリストが起こしたいくつかの奇跡の中でも
よく知られるエピソードのひとつに
「ラザロの蘇生(La resurrezione di Lazzaro)」があります。

ベタニヤ(Betania)に暮らした3姉弟はかねてより
イエスキリストと面識があり、彼を慕っていました。
弟のラザロが重病に倒れたとき、
二人の姉(マルタとマリア)は
医者でも治せない病だけれど、
神であるイエスにならば治すことができると信じて
イエスの元に遣いを送ります。
しかし、イエスはそのメッセージを受けても動かず、
やがてラザロは死を迎えます。

ラザロが死んでしまったあとで
イエスはようやくベタニアに向かう準備をし
死後4日目にベタニアに到着します。

当時ユダヤ教徒は死後4日目から遺体腐敗が始まる、
つまり見かけの死ではなく、
完全な死は4日目をもって確信できると考えていました。
それを知っていたイエスは、
敢えてラザロの死後4日目以降に到着するようにしたのです。

そして、
「私は復活であり、命である。
私を信じる者は、死んでも生きる。
存命で私を信じる者は
誰一人として決して死ぬことはない。」と宣言して
ラザロの墓の前に立つと
神に祈りをささげ、
死んだラザロに「でてきなさい」と声をかけるのです。
すると死者を葬る際にまきつけた白い布をまとったままの
ラザロが蘇生し歩いて出てきたのです。

この奇跡を目の当たりにした人々は
イエスとイエスの教えを信じ、
ユダヤの指導者たちはますます、
イエス殺害をもくろむようになります。

イエス自身が磔刑にかけられる前の
一番最後の軌跡でもあり、
ラザロの蘇生は
そのままイエスの復活の暗示ともなっています。

このテーマもたくさんの芸術家により描かれていますが、
カラヴァッジョ(Caravaggio)も
マルタ島から逃亡した先のメッシーナの地で
1608-1609年にこのテーマの作品を描いています。
ジェノヴァの裕福な商人
ジョヴァンニ・バッティスタ・デ・ラッツァリ
(Giovanni Battista de' Lazzari)の依頼で
かなりの短い期間で仕上げた作品といわれています。
カラヴァッジョの作品らしい陰影の強い一枚ですが、
期間内に仕上げるために
半分以上を闇で埋め尽くしたのではないかとも言われています。
実際高さ4メートルほどもある作品の上半分はほとんど真っ黒です。
闇の中に浮かび上がるような光の筋によって
蘇生のシーンを浮かび上がらせています。

画面の左端に描かれるイエスが指し伸ばす右腕に沿って光が広がり
その先の光の中に蘇生したばかりのラザロの姿が描かれています。
ラザロは両腕を広げて、まるで十字架のような格好で描かれています。
これは後にイエスに降りかかる受難(磔刑)の
隠喩であると解釈されています。

メッシーナの州立美術館に通常は所蔵されている作品ですが、
昨年12月よりローマで修復に入っていました。
修復が終わっても
画面のほとんどが闇で包まれていることには変わりはないのですが、
今までほとんど認識不可能だった詳細が
いくつか認識できるようになっています。
ラザロに顔を近づけて口をあけている老女の口元や、
その後ろに立つラザロの姉マルタの髪などが
より鮮明に見えるようになりました。

7月15日まではローマのPalazzo Braschi
(ブラスキ宮殿)で特別展示され、その後メッシーナに戻されます。

作品の中に自分を描き込むのが好きなカラヴァッジョですが、
この作品のイエスキリストの伸ばした右腕の後ろ、
両手を合わせて、
蘇生するラザロとは逆の方向を向いている男性が
カラヴァッジョ自身です。

La resurrezione di Lazzaro di Caravaggio
会期:2012年7月15日まで
会場:Palazzo Braschi(ブラスキ宮殿)
    Piazza Navona 2、Roma
開館時間: 10:00-20:00
休館日:月曜日
入場料:9,00ユーロ