超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

<span itemprop="headline">マーラーの交響宇宙</span>

2010-09-19 11:32:32 | 無題


今日は近所の本屋さんでモーストリー・クラシックのマーラー生誕一五〇年記念特集号を買い、近所のカフェで熟読した。カラー写真が多く、説明も丁寧である。ドナルド・キーンが若い頃のアメリカでのマーラー事情、ラジオで聞いたパツァーク、フェリアーの大地の歌が印象的だとか、大地の歌の漢詩の翻訳の問題点などを書いて巻頭を飾っている。
その他マーラーの生涯のポイント別解説や交響曲曲別解説など盛りだくさんである。マーラーの復活のコンセプト、何の裁きもなく誰もが救済されるのはキリスト教的というよりマーラー独自の発想ではないか、とか交響曲第三番はニーチェとキリスト教が並列されていて驚きだとか村井翔氏には色々気づかされた。
楽しいのが鈴木淳史氏の交響曲全集聞き比べで、アブラヴァネルはあっさりと淡白にまとめているが、オーケストラが下手なだけに返って独特の頼りなさが魅力となっている、バーンスタインの最初の全集は情熱的で、二度目の全集は執拗に迫ってくるなどと書いてある。
面白いのが鈴木淳史氏がクーベリックのドイツグラモフォンの全集について舩倉武一氏のクラシックジャーナルと同じ見解を取っているところだ。すなわちクーベリックのドイツグラモフォンの全集は後期ロマン派的でかつボヘミア的な所が生かされたマーラーだと言うのである。
鈴木淳史氏は高校生の頃、父親から成績が上がったらマーラー全集を買ってやると言って励まされたという。その頃CDは一枚三五〇〇円ぐらいしたのでとても高校生には手が出ないのがマーラーの全集だったというが、現在ではマーラーの精神病理を面白く腑分けして見せたシノーポリのマーラー全集が三千数百円で売っている時代になり、マーラーの交響曲を一番から十番までハシゴできるようになったという。私も以前マーラー全集の価格破壊の好例として、シノーポリのマーラー全集がついに三千六百円まで値下がりしたと書いたことがあるので鈴木淳史氏には共感した。
また鈴木淳史氏はアブラヴァネル、クーベリック、バーンスタインの全集の後、ステレオフォニックな音を効果的に使った、ショルティやハイティンクや美音ベルティーニなどが続々と全集を出し、音響史上の質の向上を促したが、現在最もマーラー的な全集はミヒャエル・ギーレンのSWRとの全集で、最も先鋭的でえぐい演奏を聞かせると言っていた。多様なマーラー情報が読めるのは悦ばしい限りだ。
マーラーが宇宙のように鳴っている 好機を待てば時代振り向く



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする