超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

<span itemprop="headline">東京オアシスの不安と希望</span>

2011-10-30 23:18:55 | 無題

新宿ピカデリーで小林聡美主演の映画東京オアシスを見る。(以下あらすじを含む)。
最初はコンビニをうろうろするカメラの目線。ドリンク剤とガムとアイスを買い、350円で500円渡す。
コンビニの前でアイスを食べているのは加瀬亮演じるレタス運送の運転手。すると通過するトラックに向かって突進する喪服の女トウコがいた。走って回転レシーブをしてトウコの挙動を止める運転手。トウコは笑って車に乗せてくれという。夜のトラックでのちぐはぐな会話。突拍子もないことを次々に語るトウコ。ラジオを付ける運転手。結婚詐欺の話が流れて慌ててラジオを止める。高速に乗って運転手が降りる出口で自分も降りたいというトウコ。サービスエリアできつねうどんを並んで食べる殺伐とした光景。
うどんを出すのは可憐な市川実日子。回転レシーブの話で元バレー部だということで話の合うトウコと運転手。二人でバレーのアタックの真似をしてみる二人。海にたたずむ二人。
第二話は映画館。カウリスマキの過去のない男と街のあかりを上映している。おばあさん役のもたいまさこが夜遅くに一人で困っている様子なのでモギリの男の子が送って行く。上映後の映画館ではトウコが酒に酔って眠りこんでいる。映画館員の原田知世演じるキクチとは旧知の間柄。キクチは元脚本家でトウコと仕事をしていた。トウコは女優。キクチはなぜ自分が脚本を止めたのか話し出す。また書いてみれば、というトウコ。そうかな、やれるかな、というキクチ。
第三話は動物園。入場券売りの面接を受けるのは、黒木華演じる気の弱そうな女の子。23歳でバイトは初めてだというと急に態度を変える面接係。どうやら面接は失敗の模様。ツチブタを見ようとする女の子にトウコは話しかける。ツチブタにやけに詳しいトウコ。女の子は美大志望で五浪中だという。運には見放されていると言う。ツチブタは先日姫路に移動したと謝る飼育係。姫路でもアフリカでも行きかねないトウコ。私も…と言う女の子。新宿の街をトウコが颯爽と歩く姿でドラマが終わる。行く先々で人との係わりのなかで変わって行くトウコと、そのトウコと出遭う人たち。時に強く、時に弱いトウコ。それでも他人と積極的に係わるなかで自分らしく生きて行くトウコには勇気づけられる。
孤独な都会で道を見失い、また立ち上がって前を向いて歩いてゆく登場人物には希望の光が差している。
それにしても最初に通過するトラックに突進しようとしたトウコは死ぬ気でいたのか、冗談なのかそこは謎のままだ。
真夜中にぽつりと漏らす世迷言生きる不安と生きる希望と



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<span itemprop="headline">アバドの凄絶DVD全集</span>

2011-10-27 16:58:01 | 無題

クラウディオ・アバドのベートーヴェンのDVDのライヴ映像を見た。
ベーレンライター版を使った現代楽器による古楽器的演奏である。アバドはベルリンフィルの重厚さを避けたかったらしく、楽器編成も小編成で小ざっぱりとした音を聞かせる。
だがアバドは病み上がりで痩せ過ぎていて痛々しい。
第九を録音した後がんに倒れ、奇跡的に復活したアバド。そのドラマ性は十分感動的なのだが、闘病の傷跡が凄まじい。
体力の限界で全身全霊で指揮しているのは一目瞭然。それに応えようとベルリンフィルが本気を出しているのも手に取るようにわかる。
その全てを知り尽くしたローマの観客が熱い思いで拍手喝采しているのもわかる。
映像とは恐ろしいもので、それだけ痛切な感覚が直に伝わってくる。
同じベーレンライター版を元にした演奏でもハイティンクなどは元気溌剌。ティンパニーの強打など新機軸を打ち出した。
マッケラスのエジンバラ・ライヴもベーレンライター版ながらひじょうにヴィヴィッドな好演だった。
ベーレンライター版ではないが、シャイーの全集もベートーヴェンのメトロノーム記号に忠実であろうとするところはアバドと共通していて、ともに早いテンポの全集になっている。
病を乗り越えて指揮をするアバドはどこか吹っ切れていて、颯爽とした様子でさえある。
指揮を終えたアバドの眼は爛々と光っていて、音楽をする楽しみを全身で現している。
だがこれは音楽なのか。
痩せ過ぎたアバドは痛々しくて見ていられない。
高齢のギュンター・ヴァントが指揮している姿はこういう痛々しさは微塵も感じられなかった。
これは安価で売って万人が拍手喝采するような映像ではない。
アバドの熱烈なファンには嬉しい映像かもしれないが、繰り返し見るのは辛いベト全である。
yamagishi kenichi氏のサイトで絶賛されていたが、こうまで凄絶とは知らなかった。
今回再発売されて見た人は何を思うだろう。



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<span itemprop="headline">クレンペラーのEMIのマーラー届く</span>

2011-10-19 19:02:12 | 無題

待望のクレンペラーのマーラー交響曲集(EMI音源集)をきく。
17日が発売日で6時半の段階でオンラインで入荷待ちだったのでこれは発売延期かと思ったら新宿の回転寿司に行く前にタワーレコードに寄ると入荷済みで店頭で売っていたので買って帰りたかったが、通販とダブると困るので泣く泣く買うのをあきらめた。回転寿司で友人と会って安い皿とビールを頼み、談笑して1481円。
友人は名古屋のトゥーサムという店でクワイアーで歌った。憑かれたように歌い尽くしたと言っていた。

家に帰って十時半頃オンラインで入荷済みになっていた。買って帰らなくてよかった。翌日出荷準備中、発送準備中、発送となった。
今日宅配で受け取って聞く。
今、マーラーの7番を聞いている。7番は一時期入手困難で中古で数千円で売られていた(9番も事情は同じ)。EMIで再発売してからも2枚で二千数百円だったのでちょっと手が出なかった。
クラシック好きの友人によると究極の演奏だという。
聞いてみると確かにクレンペラーのベートーヴェン交響曲全集のようにひじょうに遅い。ゆったりとした止まりそうなテンポでマーラーの思い描いていた音を執拗に表現する。友人が言うように異常な時間感覚がある。それが何とも言えない美音なのである。
このマラ7は癖になる。2番、4番、7番、9番、大地の歌と歌曲つきで二千円を切る破格のお値段。
クレンペラーはマーラーでも同じ曲ばかり何度も録音していて、1番など見向きもしない極端な審美眼。
とても全集を残すようなタイプのマーラー指揮者ではなかった。
その異常な時間感覚、執拗な楽譜表現、独特の審美眼が堪能できるのがこのマーラー交響曲集(EMI音源集)である。
スタジオ録音だけあって録音状態も万全である。クレンペラーのような頑固で巨匠テンポの長大な世界を垣間見たい人に是非お勧めのEMIフランスの快挙と言えるボックスセットである。

御大の巨匠の深い審美眼垣間見るならこの音を今



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<span itemprop="headline">シャイーの快演全集</span>

2011-10-08 12:19:46 | 無題

リッカルド・シャイーとゲヴァントハウスのベートーヴェン交響曲全集を聞いた。
ゲヴァントハウスらしい重厚さはそのままに、シャイーの持つドライブ感が生かされた渾身の快速演奏。
序曲も重厚かつ濃厚でずんずん進んで行く。交響曲はみな構成感の巧みな重層的な厚みのある演奏。
間は詰めているが、ベートーヴェンらしい典雅な曲運びは十分味わえる。英雄などは胸躍る名演。CD5枚が本のような厚紙製の収納ボックスに収められている。これは初回生産のみか。
ドライブしても美的な造形が崩れないところはさすがシャイーである。録音に奥行きが感じられる。
奥行きを生かす技術は同じシャイーのブルックナー全集でも感じられた。シャイーの得意技である。
コンヴィチュニーの時代からゲヴァントハウスは木管楽器の美しさが際立っている。英雄を聞いて久しぶりに感動した。サウンドクラウドと言うサイトの試聴からは重層性は感じ取れなかったが、実際は重みのある聞きごたえ。四番も深い闇から光が立ち昇るような快演。
運命も快速だが聞き応えのある演奏。底光りする楽器の音色が見事。聞き慣れた曲が新鮮に響く。終章は雄大。
田園がアップテンポなのには驚いた。それでも、細かい描写は置き去りにされていない。終章の曇りない音像には救いがある。視界が一気に広がる七番もいい。終章の歓喜の舞踏も流れるようだ。八番も軽快な曲ながらオケの持つ重厚感が生かされている。ここでも底光りする楽器の音色が際立っている。
第九もかなりテンポが速い。聞いているとこっちまでテンションが上がってくる。深刻さは薄く、最初から歓喜が通奏的にほとばしっている。美低音のオケにつられてシャイーの指揮も思わず走っているようだ。けれどもこの絵本のような収納ボックス、扱いが難しそうだ。通常盤がこうした体裁でないなら、通常盤の方が扱いやすいかも知れない。私は日頃から第九は天をも突くような一種の神通力が感じられないとだめだと思っているが、この第九にはそのような昂揚感が感じられた。
全体としてアップテンポだが重心が低いところが良い。そしてゲヴァントハウスの底光りする楽器の音色が生かされている。音の奥行きも感じられる。シャイーのベートーヴェンは旨く行ったと思う。これからゲヴァントハウスでブラームスの交響曲全集も出すようだから期待大である。

重厚な底光りする美音オケ思わず走る指揮棒の冴え



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<span itemprop="headline">発売延期は寒空に辛い</span>

2011-10-01 08:33:12 | 無題

シャイーとゲヴァントハウスのベートーヴェン交響曲全集、サウンドクラウドというサイトで試聴してテンションの高い名演だと思っていたので発売延期は残念の極み。
仕方がないのでアバドのベートーヴェン交響曲全集のローマ版を聞く。
アバドのベートーヴェン交響曲全集のDVDは予定通り発売されるのだろうか。
クレンペラーのEMIのマーラー音源集はどうだろう。
最近ブログラムというのを試してみたが、ここ十数回のブログで見どころを判断されて違う気がして止めてしまった。
ブログラムによれば私のブログの見どころはブルックナーだそうだ。
でも私はマーラーも好きだし、ブラームスもベートーヴェンも好きなのだ。
作曲家の伝記も紹介した。バルトーク、コダーイ、プロコフィエフ、シベリウス、ドヴォルザーク等を記事にした。
小林聡美のテレビや映画もまめに取り上げた。すいか、プール、マザーウォーターなどである。
哲学書の紹介も最近ではクラシックの記事に埋もれてはいるが特徴のひとつである。
ニーチェ、フッサール、ハイデガー、キルケゴール、レヴィ=ストロース、ユング等を取り上げて論じた。
そういう面をすべて省いて私を数語で判断しないでほしいと思ってブログラムは止めてしまった。
今は季節の変わり目で寂しい時期である。ミルクティーを飲んで、過去の日記を読み返し、色々聞いてみた。
ハイティンクのクリスマスマチネのマーラー選集、ハイティンクのLSOとのベートーヴェン交響曲全集、アンドラーシュ・シフのシューベルトピアノソナタ、などである。
なかでも孤独な心に灯をともしたのはワルターのモーツァルトのレクイエムである。
レコード店の皆さん、音楽は季節季節の心の支えですから、安易にシャイーとゲヴァントハウスのベートーヴェン交響曲全集を発売延期にしないで下さいと切に思うこの頃である。



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