チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

別宮貞雄に聴く~その2(オリヴィエ・メシアンについて)

2014-05-06 16:56:11 | 日本の音楽家

作曲家の別宮貞雄氏(1922-2012)はパリ音楽院ではミヨーだけでなく、オリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908-1992)にも師事しています。ミヨー、メシアンに同時に教えてもらってたなんて、別宮さんってすごいですね。

メシアンは最初はハーモニーのクラスの教授だったらしいのですが、あまりにも変わったことを教えるのでやめてもらって、音楽院はわざわざ彼のためにアナリーゼのクラスを作ったそうです。

以下「音楽芸術」昭和29年12月号、別宮貞雄の座談会記事より(聞き手は柴田南雄と平島正郎)。

柴田 メシアンとはアナリーゼのクラスの講義を聴かれた以外に個人的にも付き合われたのですか。

別宮 私は三年いたうち一年目はフランス語が十分わからなくて、彼のクラスに出たのは二年目からですがその二年目の終わり頃にミュンヘンで「トゥーランガリラ交響曲」の初演があった。そのときには練習が数回あって、それを全部聴かせてくれるというので、私はパリの様子を見ていると、パリでああいう曲が演奏される機会は恐らくないと思って実はこれは今年三月パリで初演されましたが、ミュンヘンまで何千フランか出して行ったんですよ。そうしたら、これはフランス人の性格に関係するけれども、フランス人というのは非常に良い意味でも悪い意味でも個人主義者で、自分の教師の曲が演られるからといってもなかなか聴きに行かないですよ。そこへ僕がわざわざパリからミュンヘンまで自分の曲を聴きに来たというので、彼が随分感激しちゃったのです。それで非常に親しくなった。

平島 そういう人情味の温かいところがある人なんだな。それから、メシアンは教会でオルガンを弾いているのでしょう。

別宮 トリニテ教会で毎日曜オルガニストとして働いているんです。向こうではミサが何回もあるでしょう。それで初めのミサではバッハを弾いているんですよ。最後の一回だけ特別に教会の許可を得て自分の音楽を弾いてもいいことになっている。即興じゃないけれども自分の宗教的な音楽を弾くんですよ。それは大体12時のミサですが、大きな教会だけれども会衆は二、三十人くらいです。

柴田 なるほど、そういう変な時間のミサにしか許さないのか。

別宮 そう。そこへ行けばファンも聴くことができるでしょう。だから教会の中でオルガンの横に聴きに行ってるのが必ずいるんですよ。彼は非常な秀才で物知りでしょう。音楽も非常に組織的に作り上げたところがあって、ある一部では彼はシステムによって自分の音楽を作っているから駄目だというやつもいるけれども、同時に人間的にもそうだし、音楽についても非常に素朴なところがあるのだ。だから例えば「トゥーランガリラ交響曲」なんかを彼がアナリーゼすると、よくもこんなに面倒くさいものを作ったなんて思うけれども、聴いてみると案外わかりやすいのだ。

(中略)

柴田 人間的には彼の書物に書かれているようなミスティック【神秘的な】ものを感じますか。

別宮 人間的にはやっぱりフランス人として非常に特殊なほうですね。

柴田 どこの人なんだろうね。

別宮 プロヴァンス生まれでグルノーブルで育った人です。勿論彼は自分の講義をエステティック・ミュージカル(音楽美学)のクラスと名付けているだけあって、相当文学的というのはおかしいけれども、単にテクニックだけについてだけでなく、音楽外のことと関係させて説明することがよくある

(中略)

平島 話は違うけれども、ピエール・ブーレーズ(1925-2016)とメシアンが離反したとかいううわさを聞いたけれど。

別宮 いや、個人的にはあの二人は非常に親しいよ。ブーレーズはまだ25、6。あれはともかく相当の男らしいよ。なんでも非常に物知りで、頭がいい。第一ああいうことをやっていて対位法の大家なんだ。だからミヨーのクラスでブーレーズの悪口を言うとミヨーは皮肉を言うよ。「お前は対位法はブーレーズよりできないだろう」と。

↑ 別宮氏撮影。

 


↑ きれいなロリオさんと。「にくい、にくい!」とひかやされ頭をかく(?)


。。。メシアンは彼の音楽どおり、フランス人としては変わってて、神秘的な人だったんですね!