昨夜は、夫が帰宅してから簡単な夕食を摂った後、検査通院に備えて前泊するために病院最寄り駅へ向かった。
前回の骨シンチは調べてみたら2013年6月4日。実に8年ぶりのことである。
当時は息子もまだ高校生で家にいたし、前泊などという贅沢はしなかったようで、
“時間指定の検査前に採血だけ終わらせておけば良いので、いつもより1時間ほど遅い到着でOK。夫と息子を送り出して、ゆっくり新聞を読んで出かけた。JRも乗換駅始発に乗ったので、楽に席を確保して落ち着いて読書が出来た。”
とある。
まあ様々な治療を重ね、加齢とともにだんだん頑張りが効かなくなってきたのも確かである。
とはいえ、今回も普段より1時間半遅い到着で良かったので、前泊しなくても十分だったな、と思った。けれど、既に宿も予約していたし(以前から一度泊まってみたいと思っていた天空チャペルのあるウエディングホテルだった。)、そのままキャンセルせずに生かすことにしたのは、結果として正解だった。
予定より早めにチェックイン。9階の角部屋だった。部屋に入ると30度ある。空調を入れるがなかなか冷えない。一番低い20度にして強風に設定したけれど、30分しても1度しか下がらない。これではとても眠れないとフロントに訊くと、20度に設定すると部屋が冷えたと機械が勘違いして送風を止めてしまうので、24,5度に設定して空気清浄機を強にして風を廻してください、とのこと。
1時間半ほどしてようやく27度まで下がったけれど、それほど暑いのが苦手でない私もきつかったので、暑がりの夫や息子ではさぞや大変だったろう。夫にLINEで連絡したら部屋を替えてもらえばと言われたけれど、全館的にそのようだったし、もう着替えもしてしまったので、諦めてパラリンピックの開会式も見ないでさっと入浴して、そのまま休んだ。
果たして朝起きたら寒いくらいで、24度の設定どおり24度になっていた。随分時間がかかったものだ。
まあ、ある程度年季の入ったホテルでは、こういうことも覚悟しなければならないのかもしれない。
普段どおりスマホのアラームは鳴ったけれど、今日は少しゆっくり出来るのでベッドでニュースを見ながら30分ほどぐずぐず。ベッドから出て、浴槽足湯でなく朝風呂に入ってシャンプーもしてすっきりした。朝の連続テレビ小説をBSと地上波で2回視てからホテルを出て、近くの珈琲店でモーニングセット。
まだ開店間もなかったので席がそれほど埋まっていない。1人でも広々した4人テーブル席に案内される。新聞を読みながらポットのアールグレーティーとフレンチトーストのセットをゆっくり頂く。今日は長丁場になるので本は2冊携えてきた。
1冊目は近藤史恵さんの「私の本の空白は」(ハルキ文庫)。
帯には「記憶喪失で目覚めたわたし。何もわからないけれど、現れた夫を愛していないことだけは、心が分かっていたー。心に刻まれた愛の形が残酷な真実を探し出す傑作恋愛サスペンス」とある。近藤さんの作品は、自転車ロードレースの世界を扱った「サクリファイス」「エデン」「サヴァイヴ」や先日までテレビ放映されていたフレンチ・レストランのシェフが客から持ち込まれた謎を解いてゆく「ビストロ・パ・マル」シリーズ等を拝読しているが、今回も期待を裏切らない面白さで頁を繰る手が止まらなかった。
切りのいい所まで、もうちょっとだけ・・・と思いながら、なかなか本が閉じられない。10時からの骨シンチは15分前迄に来るように言われていたので、その5分前に到着するようにお店を出た。朝から湿度も高めで強い陽射しだ。
なんといっても病院まで5分とかからない。さらにまだチェックアウトもしていないので荷物も少なく身軽である。予定通りの時間に病院に到着し、自動再来受付機にIDカードを通す。面白いことに受付番号がホテルの部屋番号に0をつけた番号だった。
地下1階のRI受付に移動する。以前は検査室に入る時に黄色いスリッパに履き替えた記憶があるが、今回はそのまま土足OKになっていた。予約の5分前に厳重な二重扉を通ってクラークの方から検査室に案内される。
同じ時間に集合がかかっていたのが私ともう一人、年配の男性。奥様と思しき付き添いの方とご一緒だった。中廊下で放射線技師さんお二人から丁寧な説明があった。私は注射の後3時間後に検査で、男性は3時間半後とのこと。予約の15分前までにまた受付に戻ってくるように言われる。その間、しっかり水分を摂って何度もお手洗に行って膀胱に薬品を溜めないよう指示がある。
とても久しぶりの検査なので「ポートは大丈夫ですか?」などと質問(前回はかつらも外すように言われている。)したら、ノープロブレムとのこと。別室に移動し、5分ほどして女性のドクターが見えて放射性医薬品の静脈注射。針刺しは殆ど痛まずお上手だった。前回は院内にいるように、とのことだったが、今回は外出OKと伺っていたので、そのままホテルに戻る。チェックアウト迄小一時間だが、こちらに戻って来るまでにまだたっぷり2時間半以上ある。
ホテルに戻って靴を脱ぎ、涼しくて静かな部屋で水分を摂りながら本の続きを読めたので、有難かった。
チェックアウトの時間ぎりぎりまで部屋にいた後は、別のカフェに移動。まだあと1時間半潰さなければならない。15時には造影CTを控えているので昼食を摂るなら12時迄に終えるように、と言われていたけれど、朝いつもより遅い時間にしっかり頂いているのでそれほどは空腹ではない。とはいえ、全く何も食べずに4時近くまではちょっときついので、ホットのチャイ・ティーラテとアールグレースコーンをチョイスして読書の続き。
平日の午前中で、PC片手にお仕事中の方も複数いたけれど、かなり空いていたので、席は選り取り見取り。「この席は使わないように」と貼られたテーブルの隣のテーブルをチョイスした。結果的に荷物置きを含めて3つの椅子が使え、隣の2つの椅子には誰も来ないことになり、広々と読書とティータイムを過ごすことが出来た。冷房は効きすぎているほどでカーディガンを羽織って快適に過ごした。
時間が迫ってきたので再び病院に戻り、直接地下1階のRI受付に戻ったことを伝える。お手洗いを済ませ、時間より2,3分前にもう一度お手洗いに行くように言われ、ダメ押しでお手洗いを済ませて中へ入る。
午前中説明してくれた技師さんのお一人が検査着を持って更衣室を案内してくれる。今日は検査用にブラトップにカットソー、ゴムウエストのスカートなので着替えしないで大丈夫かと訊いたところ、「コロナで着替えるのがどうしても嫌と言う方もいるので強制は出来ないけれど、出来れば着替えをされた方が間違いない。」と言われたので、観念して上下着替える。
時間通りに骨シンチのカメラのベッドに横になる。確か顔の極々そばまで近づくのだったな、と思い出す。圧迫感が苦手な人は結構辛いかもしれないけれど、私は目を瞑ってしまえば大丈夫だった。時間通りに開始。
枕が痛かったので取りたいと言ったら「顎の位置を固定したいので、頭部が済んだら外しましょう、それまでちょっと我慢してください。」と言われる。
15分ほどかけて頭の上からつま先まで、間近に接近したカメラに舐められるように撮影。8分ほどしたところで硬い枕を外してもらい続行。ベルトで身体を固定されているので暑い。「手はなるべく重ならないように開いておいてください。」と言われるけれど、狭いのでなかなか難しい。
続いて胸部と腹部をベルトでそれぞれ固定し、両手を万歳に。耳にピタリと付くように指示され、カメラが回転しながらの撮影。合計で15分。こちらも8分して胸部が終わったところで一度声がかかる。腹部撮影は両手を少し緩めても良いとのこと。
寝ているだけ、目を瞑って動かないようにしているだけだし、どこも痛くないので問題ないけれど、カメラが触れそうなくらいうんと迫ってくるので、圧迫感と閉塞感が耐えられないという方も多いという。そしてずっと万歳をきちんと出来る人もなかなか少ないそうだ。
「ちゃんと出来ていたので、綺麗に撮れましたよ。」とお褒め頂く。
更衣室に入って時計を見ると、1時間近く経っていた。予定より20分超過してしまったことになる。次の造影CTの受付までたっぷり1時間以上あるので、また院内のカフェかなと思っていたけれど、着替えを済ませたらもう1時間を割っていたのでそのまま2階の放射線受付に上がる。
まだ早いかなと思ったけれど、ひとまず受付番号を取る。予約時間の30分前になったら受付します、と言われたのでお手洗いを済ませ2冊目を読み始める。
2冊目は桜木紫乃さんの「砂上」(角川文庫)。
桜木さんの作品も好きで何冊も拝読しているが、今回は創作の苦しみに息苦しくなったほどだった。いや~、作家になりたいなんて大それた夢を持たなくて良かった・・・と胸をなでおろす。
帯には“「あなた、なぜ小説を書くんですか」主人公は応募原稿を読んだと言う編集者に問われ、渾身の一作を書く決意をする。いつか作家になりたいと思いつつ40歳を迎えた主人公にとって、書く題材は亡き母と守り通した家族の秘密しかなかった。執筆にのめりこむうち、主人公の心身にも、もともと希薄だった人間関係にも亀裂が生じー。直木賞作家が創作の苦しみを描き切る、新たな到達点!”とあった。
解説をカリスマ書店員・新井賞の選考委員である新井見枝香さんが書いておられる。「やっぱりどう考えても、この小説はクソ面白い、という結論に至った」だそうだが、私も本当に面白かった・・・(小学生並みの語彙力貧困な感想文)である。
言われた通り30分前に受付が終わり、15分前にCT準備室へ行くように言われる。今日は放射性医薬品注射、今回の造影剤注入のためのルート確保と2回目の針刺し。右手の血管、頑張っている。止血テープは紙テープにしてもらっているので、なんとかなっているが、普通の粘着テープを貼ったりはがしたりするとあっという間に赤くなってしまう。
準備室の看護師さんはベテランのKさん。着替えはなしで、荷物をロッカーに入れる。食事は12時までに終えたというと、もし気持ち悪くなったらすぐに横を向いて吐瀉物が喉に詰らないように、と脅かされる。造影剤用の針は太いし、午前中と別の位置から刺したからか痛みは若干強い。
中廊下に出ると5分ほどして予約より10分前に名前を呼ばれた。そのままCT装置に寝っ転る。
ベッドに寝て顎を上げ加減にして万歳の姿勢をとり、最初は造影剤なし、次に造影剤を入れて、2回の撮影。この流れはもうお馴染みで、始まったら所要時間は10分とかからない。
ドクターがやってきて造影剤が注入されるや否や、薬液の匂いがツーンと鼻を突くし、味覚にも嫌な後味が残る刺激があって、口の中が気持ち悪い。血流と共に瞬く間に造影剤が体中を駆け巡り、体の芯までカーッっと熱くなってじーんと痺れる感じ。
「息を吸って。止めて下さい・・・。」を繰り返して終了。良かった。気持ち悪くならなかった、とほっとする。看護師Kさんから針を抜いてもらい、止血テープをグルグル巻きにされて「外廊下でお待ちください。」と言われ、ロッカーから荷物を出して廊下で待つ。10分ほどで外して頂き、無事終了。放射線受付に戻ってファイルを戻し、会計へどうぞと言われる。
1階の会計に向かうと、待合椅子はかなり混んでいたが、15分ほどの待ち時間で済んだ。自動支払機で25,000円ほどをカード支払。本日の病院滞在時間は6時間弱だった。もうランチタイムは終了しているし、昼前におやつ程度は摂っているし、これから何か食事をしていたら帰りはラッシュになってしまう、とそのまま帰宅することにした。
外に出ると、陽射しが強くむわっと照り返し。あっという間に汗ばむ。
なんとか最後の快速電車に乗り込むことが出来、本の残りを無心に読んだ。
いつもより少し早く帰宅が叶ったが、生協のお届け物を取り入れながら、汗だくになった。お豆腐を落としてしまい1つをぐしゃっとさせてしまってがっくり。
あれこれ片付けをしているうちに夫が帰宅。なんとかミールキットで夕食を整えた。明日は猛暑日の予報。通常勤務である。