夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

カスレとアルザスのワイン(『ピエロの赤い鼻』追記)

2005年06月08日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
前述の『ピエロの赤い鼻』では
作品中に登場するワインやお料理によって
戦時中の食べ物に対する思いを知ることもできます。

ジャックとアンドレは酔った勢いで
ドイツ軍の乗る列車に向かってワインの瓶を投げつけます。

「ワインを投げつけてやったよ」とふたりが得意げに報告すると、
ルイーズは「たかがワインでしょ」と笑います。
するとジャックはこう言います。
「たかがワインじゃない。アルザスのワインだぞ」。

作品の舞台はドイツ占領下のフランスですから、
その領土争いの因縁の地であるアルザスのワインは
「たかがワイン」ではないというわけです。

アルザスのワインって確かに超おいしいですが、
こういう歴史的背景を持つと聞くと、
もっと感じて飲まなきゃと思わずにいられません。

爆破成功を祝ってルイーズが用意してくれたのは
ラングドック地方の有名な郷土料理「カスレ」でした。
これはソーセージや肉類を白インゲン豆とともに煮込んだお料理です。
ルイーズがこっそり取り置いていたソーセージのおかげで、
戦時中はまずありつけないカスレにめぐりあえて、ふたりとも大喜び。
兎肉やジロル茸なんて、聞き慣れない食材も登場します。
3人はカベルネ・ダンジューというワインで乾杯。

人質となったあと、放り込まれた穴の中で
ジャックとアンドレはカスレがいかに旨かったかを
あとの2人の人質、ティエリーとエミールに語ります。
しかし、こんな時期にカスレを食べられるなんて
羨ましすぎて信じたくないと思うティエリーは
ただのホラ話だと決めつけます。

爆破の犯人は自分たちなのに、このままだと
罪のないティエリーとエミールも見せしめに射殺されてしまう。
ジャックとアンドレはようやく腹を括って
自分たちが爆破の犯人だと告白しますが、
カスレを食べたとホラを吹くような奴らだからと、
それも信じてもらえません。

ピエロの鼻をつけたドイツ兵ベルントに向かって、
ジャックが「酔いを表す語がフランス語にはいっぱいある。
その分野では、フランスはドイツに圧勝だ」と言い放ち、
ベルントと人質たちが穴の外と中で対決を始めるのも楽しいです。
「ほろ酔い」「泥酔」などなど、日本語訳もついていっているところを見ると、
酔いを表す語は日本語にも結構ありますね。

公開時のキャッチコピーは
「いまはただ、君を笑わせることしかできないけれど」。
笑わされて泣かされます。

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