夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ルーム』

2016年04月19日 | 映画(ら行)
『ルーム』(原題:Room)
監督:レニー・アブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン,ジェイコブ・トレンブレイ,ジョーン・アレン,
   ショーン・ブリジャース,ウィリアム・H・メイシー他

映画をハシゴするさいは、たいてい効率重視の私が、
「はたして本当に観たいのはどれか」を考え、2本目に選択したのは本作。

前述の『ボーダーライン』はなんばパークスシネマで、
同じなんばで本作を上映中なのはTOHOシネマズなんば。
そこで観られたらいちばんよかったのですが、ちょうどいい時間には上映なし。

ハシゴ可能なところに上映劇場はないかを調べたら、
未体験ゾーンのあべのアポロシネマで間に合いそうな時間に上映あり。
なんばで15:00に上映終了、天王寺で15:30に上映開始。
車はなんばパークスの駐車場に入れたまま、地下鉄で天王寺へ向かいました。

余裕で間に合ったものの、ちょっとしたカルチャーショック。
こんなことを言うと偏見だと怒られそうですが、
大阪の北と南はどことなくちがう。淀川のあっちとこっちではちがうんです。
これが大和川を越えるとさらに変わるそうなんですけど。

アポロシネマの入るビルは昭和な雰囲気たっぷり。
シネコンだけど、劇場が回廊を挟んだ両側に点在していて、
渡ったところにあるチケットカウンターの頭上には雲浮かぶ空の絵。
ひなびた趣の売店に、古い旅館のロビーを思わせる劇場入口付近。
入場するとなんだかキャバレーが思い出されて。
へたった座席は引き出そうとするとバコンとでかい音。
しまうときには全力で押さないと畳めません。

客席には茶髪じゃなくて金髪の人がやたら多く、
私はさすがに“おひとりさま”のときにしかしない、
「靴を脱いで座席上で体操座り」というのをしている人、多数。
カルチャーショックを受けはしましたが、なんかこういうのもいいかも。

劇場の話だけにこんなに割いてしまいました。(^^;
やっと作品自体の話。ネタバレを含んでいますのでご注意を。

見知らぬ男に拉致監禁され、犯人の子を出産したジョイ。
狭い納屋にベッドやクローゼット、洗面台などをしつらえた部屋に、
ジョイと5歳になる息子ジャックは監禁されつづけている。
最低限の生活に必要なものは、毎日曜日に犯人が届けに来る。

ここで生まれ育ったジャックは、外に世界があることを知らない。
幼いジャックを混乱させぬよう、ジョイもそう教えてきた。
しかし、ジョイはジャックに真実を明かすことを決意。
部屋から脱出するために行動を開始するのだが……。

犯人の目を盗んだり格闘したりして脱出するまでのサスペンス劇ではありません。
前半1時間でジャックは脱出に成功、保護されます。
婦人警官の機転でジョイの監禁場所を突き止めた後は、
犯人逮捕がニュースで知らされるだけで、怖いシーンなし。

こういう誘拐監禁事件は、無事保護されただけでは終わらないということ。

今までママとしか接してこなかったから、
ほかの人に声をかけられると怖くてひるむジャック。
雑菌に異常に弱く、眼が日光に耐えられない。
そんな身体的問題がまずあります。

それをクリアしても、マスコミが殺到して平穏には過ごせず。
監禁されている間に離婚してしまった両親は、
ふたり揃って会いに来てジョイを抱きしめてくれるけれども、
父親は孫であるジャックの顔を直視することができません。
娘が犯人に強姦されてできた孫なのですから。

対する母親は孫をとても可愛がってくれるけれど、
父親と別れて別の男性と暮らしている母親のことをジョイは責めてしまいます。
「私がいないときに別の男を連れ込んで幸せに暮らしていたんじゃないか」と。
長らく犯人が部屋に来る気配におびえていたから、悪夢も見ます。
生きていることがつらくなり、ジャックに当たってしまうことも。

外の世界のほうが幸せなはずなのに、あの部屋に戻りたいと時折こぼすジャック。
最後にジョイが取る行動こそが、前を向いて歩こうとする決意の表れ。

いい作品でした。

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