夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ライフ・イズ・ベースボール』

2007年10月09日 | 映画(ら行)
『ライフ・イズ・ベースボール』(原題:Game 6)
監督:マイケル・ホフマン
出演:マイケル・キートン,ロバート・ダウニー・Jr.,
   グリフィン・ダン,アリ・グレイノール他

松坂がレッドソックスに入団していなかったら、
おそらく日本では日の目を見なかったであろう、
2005年のアメリカの作品です。

『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998)をパロったかのような
安直な邦題が付いていますが、原題は“Game 6”。
これは、大リーグ史上最悪の逆転負けだったと言われる、
1986年のワールドシリーズ第6戦を指しています。

1986年10月25日。
68年間も優勝から遠ざかっているレッドソックスが
メッツを相手に王手をかけている。

大のレッドソックス・ファンで、劇作家のニックにとっては、
今日は新作公演の初日でもあり、朝からそわそわし通し。
コメディ路線で人気を博してきたが、今回は一転、
シリアスな自伝的作品を上演するため、公演後の評判を聞くまでは落ち着けない。

路上で偶然出会ったひとり娘のローレルから、
妻が離婚弁護士を雇ったことを聞かされ、さらにそわそわ。

床屋へ向かう途中、同業者のエリオットを見かける。
ホームレスかと見紛うほどの風体の彼に
「いったいどうしたんだ」と声をかけると、
「今晩、お前にもそれがわかるさ」と言う。
辛辣な覆面批評家として知られるスティーヴンに
自作をこき下ろされたが最後、何も書けなくなるのだと。

自分はただの物書きで、芸術家肌のエリオットとは違うから、
スティーヴンにどう批評されようが平気だと
必死で自分に言い聞かせるが、やはり不安で仕方ない。

開演時刻が迫り、劇場に近寄りたくないニックは、
拾ったタクシーの女運転手と、同乗していたその孫を誘い、
メッツ・ファンで埋め尽くされたスポーツバーへ。
ワールドシリーズの中継に見入るのだが……。

たまたまレンタル店で見つけて、野球の映画は大好きだし、
83分という短さにもつられて借りただけでした。
ところが、参りました。
野球を愛する人なら、このエンディングには笑って涙。
特に、優勝できないチームの長年のファンは
胸を揺さぶられること、まちがいなし。

ニックがレッドソックスを愛する理由、
「重大な試合で魅力的な負け方をする。
 夜中に目が覚めるような敗北」。
どうです、これだけで泣けるでしょ?
んー、でも、もうちょい情けないかな、ウチのチームは。

野球で繋がる、人と人。
小品ながら佳作です。

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『幸せのレシピ』

2007年10月05日 | 映画(さ行)
『幸せのレシピ』(原題:No Reservations)
監督:スコット・ヒックス
出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ,アーロン・エッカート,
   アビゲイル・ブレスリン,パトリシア・クラークソン,ボブ・バラバン他

お目当てだった先週末の封切り映画はこれ。

ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』(2001)を、
オーストラリア映画『シャイン』(1995)の監督が、
ハリウッドスターを起用してリメイク。
子役には『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)のあの子、
ついでにオリジナルの主演は『善き人のためのソナタ』(2006)の彼女となると、
好きな映画と気になる人が関わりまくりで見逃せません。

ニューヨークのマンハッタン。
大人気の高級フレンチレストラン“22ブリーカー”で
料理長を務めるのは、38歳の独身女性ケイト。
完璧主義で、自分にも他人にも厳しいため、
厨房の中は常にピリピリとした空気に包まれている。

料理にクレームをつける客と口論になることもしばしばで、
客の言うことは絶対的だというスタンスの経営者ポーラは、
ケイトの性格に頭を痛め、セラピーを受けるように勧める。
しかし、セラピストにも料理について延々講義する始末。

ある日、ケイトの姉と姪ゾーイが交通事故に遭い、
姉が急死したと連絡が入る。
遺されたゾーイをケイトが引き取ることに。

母親を亡くしたショックから、9歳のゾーイはほとんど口をきかず、
食事にもまったく手をつけようとしない。
ゾーイを置いて出かけるわけにもいかず、
ケイトはゾーイを仕事場に連れて行くのだが……。

オリジナルにかなり忠実です。
ケイトの不在中にポーラが雇う新副料理長で、
最初、ケイトの神経を逆撫でするニックも、オリジナル同様、とても魅力的。
バジルの香りでゾーイを惹きつけるシーンもやはりいい。

オリジナルでは、フォアグラにクレームをつけた客に
「大衆食堂へ行け」と言い放っていましたが、
リメイクでは「角のホットドッグ屋へ行け」。
「レアを頼んだのに、焼きすぎだ」と二度も肉を返品した客には、
ナイフに突き刺した生肉を持参するシーンも笑えます。

ラストはこれぞハリウッド。
私はオリジナルのほうが好きですが、
リメイクを先に観て気に入った人なら、オリジナルのラストは物足りないかも。
オリジナルが秋なら、リメイクは春。いや、初夏かな。
どちらも木漏れ日のような温かさがあることは間違いありません。

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『夜の上海』

2007年10月02日 | 映画(や行)
『夜の上海』
監督:チャン・イーバイ
出演:本木雅弘,ヴィッキー・チャオ,西田尚美,
   塚本高史,ディラン・クォ,竹中直人他

先週末、映画をハシゴ。
封切りになったばかりの目当ての1本があり、
どうせならもう1本観ることに。
時間の都合だけで選んだこの作品、
土曜日の昼間だというのに、シネコンに観客は5人。
しかも私を含めて全員、ひとり客。なんで?

ヘアメイクアーティストの直樹はカリスマ的存在。
音楽祭の出演者にヘアメイクを施すため、上海を訪れる。

誰もが彼にちやほやし、仕事も順調に進むが、
どこか空虚な気持ちがつきまとい、
公私ともにパートナーの美帆との関係はくすぶり続けている。

仕事が一段落した晩、仲間たちのもとを離れて、
直樹はひとりで街へ出かける。
サッカーに興じる子どもたち、
踊りながら練り歩く女性たち、楽器を演奏する男性。
何気ない上海の日常に触れながら、散歩を楽しむ直樹だったが、
突然、走ってきたタクシーに追突される。

タクシーの女運転手はリンシー。
人をはねてしまったことで気が動転するが、
直樹が無事とわかり、安心する。

言葉の通じないふたりでは会話にならない。
直樹のことを観光客だと思ったリンシーは、
上海を案内するからと、断る直樹を強引に後部座席に押し込む。

ところが、リンシーに1本の電話が入る。
彼女がずっと好きだった車の修理工ドンドンが、
明日、別の女性と結婚するらしい。
ドンドンに会いに行く決意をしたリンシーは、
直樹に別のタクシーに乗り換えるように言うが、
なんと直樹は財布もパスポートも持っていなかった。
宿泊先のホテルの名前すら覚えておらず、
無一文で言葉の通じない直樹を放っておけなくなって……。

たまに観ているのが恥ずかしくなります。
主演カップルはいいんですが、
それ以外の登場人物の動きも台詞もクサすぎる。
直樹の仕事仲間がバーで女性歌手を口説くシーンや、
美帆を慕う後輩が、美帆に言い寄るシーンとか。

それにしても私が寂しく思っているのは、
最近、西田尚美(美帆役)がシリアスな綺麗どころの役ばかりなこと。
彼女はコメディのセンスがあると思うので、
『ひみつの花園』(1997)みたいな彼女、復活希望。

と、文句タラタラですが、
直樹とリンシーの過ごす上海の一夜は楽しい。
リンシー役のヴィッキー・チャオ、可愛すぎ。
キスシーンすらないのは、文化庁推奨ゆえ?

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