電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第56回定期演奏会でハイドン、尾崎宗吉、ベートーヴェンを聴く(2)

2015年07月22日 20時20分58秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団第56回定期演奏会レポートの続きです。

2曲目は尾崎宗吉「小弦楽四重奏曲第1番」です。
1935年に書かれたというこの曲、2010年の第35回定期演奏会でも取り上げております(*1)ので、団体としては再演となりますが、2nd-Vnが今井さんに交代してからは初めてです。
第1楽章:アレグロ。カッコいい。集中力に富む、若さと情熱をぶつけるような音楽であり、演奏です。第2楽章:アンダンテ。どこか田舎風の、日本音階の要素もあるしっとりとした緩徐楽章で、懐かしさを感じさせながら様式感がしっかりとあります。第3楽章:ロンド、スケルツァンド、ヴィヴァーチェ。ピツィカートで始まります。「スケルツァンド」は「戯れるように」という意味か。不協和音も巧みに使って、若い作曲家の意欲的な工夫が光ります。チェロが雄弁に語ったかと思えば、低音でしっかりとリズムを刻む。アンサンブルが、緊迫感を断ち切るように、音楽が終わります。

15分の休憩のあとは、ベートーヴェンの「ラズモフスキー第1番」です。
第1楽章:アレグロ。2nd-Vn と Vla がリズムを刻む中で、チェロが主題を提示します。印象的な始まりです。続いてヴァイオリンが入って、活力と緊張感のある、いかにも中期のベートーヴェンらしい充実した音楽が始まります。チェロが何度も奏でるこの伸びやかな主題が、好きですね~。
第2楽章:アレグレット・ヴィヴァーチェ・エ・センプレ・スケルツァンド。イタリア語では、「A e B」は「A と B と」という意味になるらしい(*2)。活発にアレグレットで、かつ常に快活に、くらいの意味でしょうか。始まりはチェロから2nd-Vn→Vla→1st-Vnへ。4つの楽器が軽快に動きます。ここでもチェロが活躍、時に意表を突いた動きもします。ベートーヴェンは、チェロを使うのがうまいなあと感じます。
第3楽章:アダージョ・モルト・エ・メスト。悲痛さを感じさせる緩徐楽章。チェロのピツィカートの上でヴァイオリンが切実な訴えをするように歌います。作曲家は何を悲しんでいるのか、全曲中で最も長い音楽です。
第4楽章:ロシア風の主題で、アレグロ。ロシア風と言われればそんなものかと思う程度の安直な理解ですが、やっぱりチェロが重要な役割を果たします。四人の緊密なアンサンブルはもちろんのこと、もう一言よけいなコメントを追加すれば、ベートーヴェンがそう書いたことは間違いないけれど、チェロの茂木さんが、やっぱりスゲーうまいんだなあと感心してしまいました(^o^)/

曲が終わると、聴衆から複数のブラボーが飛び、思わずため息がもれておりました。ハイドンの軽やかさを、だいぶ楽しみましたし、ベートーヴェンの中期の充実を感じることができ、さらに日本人作曲家の室内楽作品を継続して取り上げてきた団体らしい、良い演奏会でした。

次回の定期演奏会は10月17日(土)の18時30分からと発表されています。ハイドンはOp.54-3、バックスのオーボエ五重奏曲、それにメンデルスゾーンの2番の予定とか。1番と3番は山形弦楽四重奏団の定期で聴いた記憶がありますが、2008年7月の第28回定期演奏会は残念ながら単身赴任中で聴くことができず、あらためて第2番が取り上げられるのは嬉しい。しかも、プレシャス・カルテットの山形公演で聴いて(*3)からもう二年になりますので、その点からも大歓迎です。

(*1):山形弦楽四重奏団第35回定期演奏会を聴く~「電網郊外散歩道」2010年4月
(*2):イタリア語の「o」と「e」について~「Yahoo!Japan 知恵袋」より
(*3):プレシャス・カルテット山形公演を聴く(2)~「電網郊外散歩道」2013年7月

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