電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『呉越春秋 湖底の城(七)』を読む

2017年01月11日 06時05分49秒 | -宮城谷昌光
講談社刊の単行本で、宮城谷昌光著『呉越春秋 湖底の城(七)』を読みました。2016年9月刊行と奥付にあり、当方にはまだ発行間もない印象です。第6巻で予想した(*1)とおり、第7巻は越の側から描かれるようになります。始まりは「将来の妻」の章から。

魯の国で養蚕と製糸業を営む施氏の、生まれたばかりの女児と一種の見合いをするために、楚の北部にある苑の大賈・范氏の子、蠡(れい)が出かけていたとき、范氏の家が賊に襲撃され、家族は皆殺しになります。范蠡は、従者の開と臼とともに留守だったおかげでかろうじて難をのがれますが、運命の女児とは離れて、越の叔父を頼って移り住みます。叔父の范季父は越の豪族となっており、住民に敬慕されていました。范季父は范蠡をかわいがり、斉から来ていた計然という学者のもとで学ばせます。

越の君主である允常が没した後に、范蠡は喪中の嗣君・句践(こうせん)に仕えます。呉王・闔閭(こうりょ)が軍を発し越を攻めるという情報に接し、句践は喪を払い、即位して対策を立て始めます。呉に比べて国力が小さい越でしたが、外交と諜報を担当する大臣である胥犴(しょかん)の策により、なんとか押し返します。呉越の戦いはまだ范蠡の活躍が中心ではなく、経験を積み、成長する過程が描かれるところです。その意味で、本巻はまさしく「范蠡登場!」の巻で、たぶんこれで物語の主要な役者がそろったことになるのでしょう。

(*1):宮城谷昌光『呉越春秋・湖底の城(六)』を読む~「電網郊外散歩道」2016年10月



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