電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

梶よう子『柿のへた』を読む

2017年01月18日 06時03分22秒 | 読書
集英社刊の単行本で、梶よう子著『柿のへた』を読みました。図書館でたまたま手に取った本でしたが、「御薬園同心水上草介」という副題にピピっと反応したもので、おそらくこれは薬草とか漢方とかそういう方面の話に違いないという、元生化学専攻の中高年らしい思い込みです(^o^)/
そして、その思い込みは見事に当たり〜!

第1話:安息香
第2話:柿のへた
第3話:何首烏
第4話:二輪草
第5話:あじさい
第6話:ドクダミ
第7話:蓮子
第8話:金銀花
第9話:ばれいしょ

という具合で、いずれも薬草とか毒草とか、本草学がらみのお話です。

主人公は水上草介。幕府直轄の小石川御薬園の若い同心で、手足がひょろ長く吹けば飛ぶような体躯を笑われているのですが、当人はいたって人が良く、いっこうに気にしていないようです。こののんびりした加減が「水草どの」の持ち味で、対照的に植物の観察力や本草学に関する知識がすごい。

まあ、二輪草とトリカブトの類似性、取り違えというか間違いは予想の範囲ですが、これを父子の思いやりに昇華させたところは、なるほどです。また、純情で一途な千歳様と水草どのとは好一対です。



そうそう、安息香酸(C6H5-COOH)でなじみ深い安息香が惚れ薬だなととは、初めて聞きました(^o^)/
怪しい話も、実は小石川養生所の見回り同心の高幡啓五郎と若い女看病人のおよしとの間を取り持つ話に変わっていくのであれば、まあいいでしょう(^o^)/
読み返して、雑学談義も面白いし、死人の出ない(=作者の都合で勝手に殺されたりしない)時代小説です。男女の仲は超スローモーですので、やきもきしてしまう人には合わないかも(^o^)/

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