直方市内を流れる遠賀川の河川敷公園
夢野久作は福岡で数多くの伝奇、怪奇小説を発表した作家である。
久作の作品には玄洋社の頭山 満の盟友で、
明治、大正期に政治の裏面で活躍した父・杉山茂丸への反発と共感、
ひたすら近代化の道を走る当時の社会への批判がある。
「 犬神博士 」 は、昭和6年 ( 1931年 ) 9月から翌7年1月にかけて、
福岡日日新聞 ( 現・西日本新聞 ) に連載された作品で、
明治24年 ( 1891年 ) ごろの福岡と筑豊が舞台である。
主人公の犬神二瓶は浮浪者だが、予言がよく当たるので 「 犬神博士 」 と呼ばれている。
物語は彼が「チイ」と呼ばれていた7才のころ、炭坑の坑区争いに割って入ったり、
神に遣わされたような不思議な力をもって大人相手に痛快な活躍をみせる様子が描かれている。
「 当時の直方は現在の直方市の半分もない小さな町であったが、
それでも筑豊炭田の中心地として日本中に名をとどろかしていた。
しかもその当時の筑豊炭田というものが又、
まだ開けてから間もない頃のことで、鉄道がやっと通じたばかり・・・
集まって来る人々は何よりも先に坑区の争奪戦に没頭 」 していたという。
かつて石炭産業で繁栄した直方市は、北九州国定公園の指定を受けた福智山一帯と、
広大な河川敷を持つ遠賀川に代表される自然に恵まれた街である。
この遠賀川河川敷を活用し、87.5ヘクタールの直方リバーサイドパークがあり、
魅力ある水辺とのふれあいをテーマーに、市民が集う場である。
夢野久作 ( ゆめのきゅうさく ) は、ペンネームも楽しいが、
特異な雰囲気を持った多才な作家である。
26歳で出家し、名を泰道と改め、法名を萌円とするが、2年後に還俗する。
29歳で喜多流謡曲教授となった。