ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

さようなら、と言う前に

2019-01-09 | アメリカ事情

istockphoto.com

 

 

 

私の勤める大学のキャンパスには、多くの野良猫がいる。この野良猫を捕獲して、避妊手術を受けさせ、毎朝早くに餌を持ってきて与えている女性がいた。彼女はキャンパスのある学部で働き、この暮れの12月、とうとう博士論文を仕上げて提出したばかりだった。このキャンパスに彼女が働いてすでに25,6年は経っていただろうか。彼女は働くだけではなく、学位をどんどん取得して、かなりの頑張り屋さんのまだ49歳の女性だった。だった、というのは、今朝のキャンパスニュースで、彼女が1月3日に突然の大きな心臓麻痺で逝去したと知ったからである。

 

志を高く掲げ、長い間をかけて、とうとう先学期で博士号を持って卒業するはずだった。人生がこんなカーブボールを投げてよこすとは。ついこないだ論文を書き上げ、教授陣による口頭試験(デイフェンス)を無事終了し、博士号取得の最終関門を終えたばかりだった。その喜びようを目のあたりにして、これからは、本当に楽ですね、などと話したばかりだった。年一回の卒業式(5月)に、晴れて博士のレガリアを着けて檀上に進み、証書を受け取るのね、とも。大学ではこうした学生には、死後学位を授与するが、これまでの学位へのその勉強や試練は、とても傍の人間にはわからないが、彼女はその得た知識を持って旅立った。道理で学校が始まって以来、キャンパスの猫たちは、所在なげにしていたはずだ。

 

多くの学生を相手にしていると、非常に優秀な学生が卒業式のあと、河遊びに行き、そこで溺死した、とか、不幸な交通事故に巻き込まれて失命した、とか様々な旅立ちを知ることが多い。そのたびに「まだまだ若くてこれからなのに!」と悲しむのだが、案外ご本人たちは、「今はこんなに自由で、すべての疑問が解決されているし、」とお思いかもしれない。例え、信仰があろうとも、こうした死は、いつも心に釘を打たれたような気持ちになる。そして人間はいつ旅立つかもわからないのだから、日々出会う方々には、いつも心を込めて接していきたいと切に願う。

 

 

 

jooinn.com

 

コメント (3)
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