ふぶきの部屋

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宝塚コラム・・・さよなら朝海ひかる

2006-12-16 20:11:47 | 宝塚コラム

 ついに「さよなら朝海ひかる」を書く事になってしまうとは・・・

時の流れは速いのね・・・いえいえ、4年もよく頑張ってくれた・・と、感謝すべき

なのかもしれないですよね 

とはいうものの、この寂しさは当分埋めようもないと思います。

トップになる前から・・そしてなってからも、彼女に対しては厳しい評価ばかり

してきた私です(素人のくせにごめんなさい)

今だって、けちをつけようと思えばいくらでも・・・でも、それもこれも同郷の

よしみで許して欲しいです。

結果的に、どんなにああだこうだ言っても決して嫌いになれなかった男役。

そして常に「護ってあげたい」と思わせる男役でした。

 

彼女につけるキャッチフレーズがあるとすれば

さよなら、永遠の弟役者・朝海ひかる」でしょうか

そう、朝海ひかる・・・あなたはどんな時でも「護られる」「庇われる」のが

似合う不思議な、そして憎めないトップスターでした

 

私は花組をあまり見なかったので、彼女の名前を知ったのは1997年の

TCAスペシャル97」のビデオの中でした。

当時、同期の安蘭けい成瀬こうき春野寿美礼は知っていました。

その時に名前を覚えて、次に見たのが宙組の「香港公演」のビデオの中。

ドレス姿でとっても綺麗な人をみて「この人素敵」って思ったら実は男役で

びっくりしたやら「なんでーー」と惜しむやら

で、実物を見たのが宙組の「エクスカリバー」でした。

その時に仙台出身だとわかって、俄然注目するようになったのですが。

まだ当時はめちゃくちゃ可愛い男役といった風情でした。

 

宙組「エリザベート」大劇場公演を経て雪組に組替え。

(歌が不得手なエキセントリックなルドルフで・・・・)

そうそう77期で「3兄弟」と呼ばれた時期がありましたよね

この頃もやっぱり安蘭や成瀬の方が実力的には上で、朝海はどこまでも

「可愛い男役」だったと思います。

何と言ってもその華奢な体つきと綺麗な顔はどうみたって娘役向きで

いつか転向してくれないかと密かに祈っていたほどです

それが劇団のプッシュを受けて、安蘭や成瀬を蹴落として雪のトップに

なった時、正直これはミスキャストだと思いました。

(ダンス力はあるにしても、横に並ぶ娘役が軒並み太く見えるようでは

男役としてちょっと・・・と思ったんです)

 

今でもそうですけど、朝海ひかるは決してファンにこびるタイプではありません。

どちらかというといつも自分の世界に閉じこもって、孤独の中で自己完結

していそうな人でした。

ファンを見ていない・・・とでも言いましょうか。

トップになった時も「荷が重い」という風情を隠そうとせず、誰かに頼りたいと

いつも思っているような? そんな頼りなさを持っていた人だったのです。

 

正直にいいましょう。

大劇場お披露目「春麗の淡き光に」は貴城けいの方が素敵でしたし、

上手でした。

演技力も滑舌も歌唱力も何もかもです。

ショーでだって藤井先生が考えてくれた渾身のデュエットダンスで

相手役に微笑まない彼女に腹を立てたものです

男役・・そしてトップスターに必須条件の「包容力」「観客サービス」というものが

朝海には欠けていました。

回りへの信頼も当時はあったのかどうか・・・という所でしょうか

「この先トップとしてやっていけるのだろうか」と随分不安になったものです。

 

けれど、朝海ひかるのすごい所は1作ごとに、薄皮が

一枚一枚はがれて脱皮していく蝶のように成長したことです。

「今回は歌が上手になったね」

「今回はとっても笑うようになったね」

「よかったー組子に思いやりを示すようになったんだーー」

みたいな? ファンをみーーんな「お母さん」状態にしてしまう不思議な人。

そしていつの間にか一本立ちして、実はどんなに踊っても息が切れない

恐るべき腹筋を持ったタフなスターになっていました

 

彼女には「娘役との普通のラブシーン」を求めるのはムリだったけれど、

孤高の天使を演じさせたら天下一品でした。

孤独で寂しがりやの少年を演じさせたら本当に一番でした。

彼女につきまとっている「愛され感のなさ」がファンを魅了してやまないのだと

(ちょっとやおいが入るけど、ファンが彼女を幸せにしたいと思うタイプ)

そういう意味では、彼女もまた「仙台が生んだ稀代の名トップ」なのだと

思います。

 

この3年間、成長していくトップスターの姿を見る事が出来たのは

本当に幸いでした。朝海ひかるを見る度に新しい発見があり、それは

ちょっと誇らしくもあり・・・・

男役に向くとは言えなかった華奢な肢体とあまりに美しすぎる顔。

でも、頑張ったよね。本当に頑張った・・・

細い体から出る声は誰よりも大きくてどこまでも天井知らず。

細い足はまるで羽根が生えてるみたいに軽やかで疲れ知らず。

彼女の可能性は尽きない泉のようで、観客に発見と安心を与えました。

 

色々特性を持ったトップスターは多いけれど、怪我や病気が相次ぐ昨今、

常にマイペースで変わらない姿を見せてくれた事は幸いでした。

ありがとう。

 

私が心配なのはむしろ退団後の事。

どうするのか今はまだわからないけど、彼女の前にあるのは現実の社会です。

今までのようにま正直だけでは渡っていけない荒波を

どうやって超えていくのでしょうか。

少し愛想を覚えなさい。嫌な仕事でも我慢なさい。いつもあなたを助けて

くれる人達に心から感謝して欲しい。

退団後も変わらずあなたを応援し続けるファンには優しくして欲しい。

「ガラスの心」を強化して、強くたくましく生きていってほしいのです。

 

そして、疲れたら仙台へ戻ってらっしゃい

霊屋橋の上から広瀬側を眺めつつ萩の月を食べましょう。

あなたの母校のそばにある大年寺山に上ってみるのもいいしね。

行き詰まったら原点に返るのが一番・・・・・

こんな風に先々まで心配させてしまうトップスター、それが朝海ひかる

だったのです。

純粋無垢で孤独で孤高の天使・・・・さよなら。

コメント (6)
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