ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

戦時中の動物たち №5

2009-02-07 | Weblog
 連続で紹介しています高島春雄著・現代語訳『動物渡来物語』ですが、先日手に入れた増補版(昭和30年4月刊)の「はしがき」を現代語にかえて紹介します。なお片瀬の連載が長い間、更新されず(更新せず)、なまけ癖には辟易しております。「自由」きまま尊重ですので、ご容赦を。

「本書第一版は昭和22年という緒物資欠乏、人心なお落ち着かぬ時代に出版されたので、表紙はこのうえなく簡素、本文用紙はいたってお粗末であったが、著者としては出たことだけで十分の喜びであった。この第一版は昭和24年までにあらかた売り切れてしまい(その間に表紙だけは美しくなって発売されたようであるが)、発行元の日本出版社に損失をかけずに済んだのは、著者としての喜びであった。
 発行後、多くの同好諸君からいろいろご教示をいただいたのは感謝にたえない。戦災により動物渡来関係の資料をすべて失ってしまったわたしは、意気消沈して、この関係の調査を再開するこころが容易に起きなかったのであるが、次第に世のなかが落ち着いてくると、妙なものでペンギンあたりを手はじめに、またもこり出し数編の考察を書いた。
 昭和22年にわたしは、東京文理大から山階鳥類研究所に移り、24年には慈悲深かった父をうしない、それから転居したり身辺に異変が相次いだ。思いがけずこの夏、わたしと最も関係深い出版社・学風書院から本書の増訂版を出したいとの相談を受け、いま面目を一新して江湖の各位に見えるを得たのは、わたしにとり深い喜びである。また発行所が学風書院であることを、亡き父もさぞや満足しているにちがいない。」[後略]
 昭和29年11月3日 文化の日
<2009年2月7日 みずのと・ひつじ 旧暦1月13日>
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする