ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

戦時中の動物たち №7

2009-02-15 | Weblog
 高島春雄著『動物渡来物語』昭和22年3月、日本出版社刊。(増訂版・学風書院刊・昭和30年3月発行)。現代語表記にあらためて、同書本文「猛獣渡来考」からの意訳再録です。

 平時でも動物は、動物園やサーカスから脱走する。実際のところ、手ひどい空襲を受けた場合に、トラ、ヒョウ、サイ、ゾウなどが、右往左往するひとびとの中に狂奔するようになっては一大事である。江戸市中の大火に逃げまどうひとびとの中に、クマが飛び出して騒ぎを一層大きくしたという話もある。
 ヨーロッパの動物園は戦時中、日本より早く空襲の危険にさらされていた。ロンドンの動物園に爆弾が落ちたが、落とした相手国のドイツ・ベルリン動物園などは、さんたんたる目にあった。ハンブルクの動物園は助からなかったにしても、ハンブルク郊外にある有名なハーゲンベックの動物公園など、どうなったであろうか。
 戦争のために犠牲になった動物たちの多くは、永年勤続して見物人のご機嫌を取り結んだ功労者である。しかしいずれも知らぬ他国の土となり、われわれに「警世無限の鐘」を乱打してくれる。
 二頭のアメリカ野牛を除けば、ほかの種類は戦後において、だいたいが補充はたやすい。第一次欧州大戦終了の後、敵味方の動物園の復興はわりあいに早かったという。
 命を捨てた捨身動物はいずれも巨体であったが、上野動物園では資材難を克服してその大部分を剥製に仕上げ、かつての猛獣舎に生きるがごとき姿で陳列し、ありし日をしのぶ資とした。これからは、猛獣はそうした死顔で我慢せねばならないのである。
 上野であの世に逝ったのは、ライオン3頭、トラ1頭、ヒョウ6頭、チーター1頭、ホッキョククマ1頭、ニホンクマ2頭、マライクマ1頭、チョウセンクロクマ2頭、ホクマンクマ(北満州)2頭、アメリカヤギュウ(野牛)2頭、インドゾウ3頭、アミノメニシキヘビ1頭、ガラガラヘビ1頭などの多数にのぼった。しかし巨獣でも、カバやキリン、そしてワニも陸上では運動遅鈍のためか、命が助かった。
<2009年2月15日 続く>

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