近ごろ、北朝鮮をはじめとした東アジア問題に、ドブッと浸かってしまいました。時事や政治や外交など、まったくのシロウトのわたしです。そろそろ抜け出ようと思うのですが、なかなか体と頭が動きません。それなら、えぃッ!もう少し、気が済むまで浸ってみよう。そう決めました。連載「現在ing」記録史の合間に、読んだ本や評論などを紹介します。わたしには東アジアの難局を語るだけの知識も見識もありません。先達の見解から考えてみたいと思っています。
今回は、凶悪な中国漁船について考えてみます。9月7日に起きた尖閣諸島での体当たり事件、映像をみたときだれもが驚いたはずです。あのビデオひとつで、わたしの中国観は一変してしまいました。ショックは何も日本だけではありません。世界中の良識ある膨大な数のひとたちが見たのです。そして「なぜ?」「中国を信用してはいけない」
国際世論はそのように判断してしまったようです。中国は体当たり事件で、国家の信用という大切なものを一瞬にして失ってしまいました。海保の一職員は、世界に意識革命を起こしたといっても過言ではありません。活字のウィキリークスと同等、あるいは映像だけにそれ以上のショックを数億の人類に与えたはずです。
いま継続している連載「検証北朝鮮・延坪島事件」でも間もなく記しますが、砲撃事件以降に2度、中国漁船は同様の事件を韓国に対して起こしています。先取りで掲載します。
11月29日、黄海での米韓合同軍事演習が前日から始まった。北朝鮮は29日、「全面戦争勃発へと導くための意図的で計画的な策動だ」と、韓国に警告。北朝鮮は「わが方は戦争を望みはしないが、決して恐れない」「挑発を仕掛けてくるなら躊躇なく迎え撃つ」
同日、韓国済州島南方沖海上で中国漁船員が棒で殴るなどの暴力をふるい、韓国海洋警察官6人が負傷した。そして漁船は逃走。同様の事件が発生するたびに、韓国側は中国政府に漁船の取り締まり対策を要請している。
そして12月18日。韓国軍は延坪島で21日まで訓練を開始。内1日は射撃訓練を実施すると発表した。初日の18日、悪天候「視界不良」を理由に射撃は見送った。周辺の天候は終日良好で、波も穏やかだった。射撃は20日か21日に実施する見通しと言う。
北朝鮮からの抗議について、韓国政府筋は「人殺しが『自分は被害者だ』と言うような妄言だ」と憤り、韓国軍当局者は「21日までに必ず訓練を行う」、「北に譲歩すれば、この水域での訓練が今後難しくなるばかりか、自国の『領海』とする北の主張を認めたとの誤解を国際社会に与えかねない」と強調した。
そして同日13時ころ、韓国中西部の黄海、於青島オチョンドの北西約130キロ。韓国排他的経済水域EEZ内で、中国漁船約50隻が不法に操業していた。取り締まりに当たっていた海洋警察の警備艦3000t級が停戦命令を出した。そして海洋警察官4名が、小型ボートから漁船に乗り込もうとしたところ、漁民は鉄パイプなどで暴行。韓国側4人全員が重軽傷を受け、警備艦に引き返した。すると漁船1隻約60tは警備艦に2度体当たりし、転覆してしまった。海上に放り出された乗員10名の内、4人は中国漁船が救助した。5名は韓国艦が救助したが内1名は死亡。韓国側は4人を拘束。また警備船6隻とヘリコプター4機を投入して、もうひとりを探したが行方不明である。
黄海の韓国EEZ内では、中国漁船が不法操業を繰り返し、取り締まりに当たる海洋警察官に漁民らが暴行する事例が目立ち、問題になっていた。しかし韓国外交通商省は漁船乗務員に死者と行方不明者が出たことに関し、在韓中国大使館に遺憾の意を伝えた。韓国政府は今回の事態が、中国との外交問題に発展するのを避けたい意向である。撮影されたビデオは公開されず、拘束した4人もすぐに釈放された。
まるで尖閣諸島事件を思わせるような光景です。さらにこの暴挙では、中国漁民に2名の死者が出たのです。一体なぜ、このように緊迫した日を選んで、攻撃を仕掛けてくるのでしょうか。
雑誌『正論』2011年2月号(産経新聞社)に用田和仁「国民よ、中国の脅威を直視せよ」が掲載されています。用田氏は昨年まで、陸上自衛隊・西部方面総監だった方です。以下、ダイジェストで引用します。
軍事的に見るならば、海上における南シナ海や尖閣の動きの中で海上民兵といわれ、平時は漁民だがいざとなったら軍人として正規軍の渡海・上陸作戦を支援する「多数の漁船群」に着目しなければならない。これらと旧軍艦等の監視船、そして現役の軍艦が役割を分担して行動している。ちなみに海上民兵は、小型漁船の二百から二百五十隻で一個歩兵師団を運ぶ(中国軍事雑誌「艦船知識」2002年)といわれているので、それらが島嶼へ侵攻する場合の先導とし、まず港湾に殺到して来る。尖閣のまわりでは、すでに八月から二百七十隻の漁船が操業し、その内の約七十隻が日本領海にいた。見方を変えると尖閣諸島は、約一個師団の海上民兵に長く包囲されていたことになる。漁民の保護、すなわち国民の保護という大義名分で戦争に及ぶのは、古典的な常套手段である。このやり方でいくと、南西諸島まで戦火を拡大することは、いとも簡単なことである。中国は「人海戦術」を得意とする。
中国海軍の近代化、ハイテク化は驚くほどのスピードで進行しています。いま建造している、はじめての空母2隻の完成も近い。高性能潜水艦の保有量の多さにも驚く。ハワイ以西の西太平洋を制覇しようとしているのが、いまの中国です。さらにはインド洋も、石油のライフラインとしている。米国と並ぶ海洋帝国の誕生は決して遠い未来の話しではないようです。
外国の違法漁民を取り締まることは国際法上、対処に困難がつきまとうという。彼の国の狙いは、きっとそこにあるのでしょう。末端ではあるが、彼ら漁民たちは中国海軍に組み込まれた海兵であることを、わたしたちは知らねばならないようです。
中国は米国に、こう言いました。「ハワイを境に西太平洋は中国に、東太平洋は米国の管轄に」。夢物語ではありません。わたしたちは太平楽なのではないでしょうか。
<2011年1月2日>
今回は、凶悪な中国漁船について考えてみます。9月7日に起きた尖閣諸島での体当たり事件、映像をみたときだれもが驚いたはずです。あのビデオひとつで、わたしの中国観は一変してしまいました。ショックは何も日本だけではありません。世界中の良識ある膨大な数のひとたちが見たのです。そして「なぜ?」「中国を信用してはいけない」
国際世論はそのように判断してしまったようです。中国は体当たり事件で、国家の信用という大切なものを一瞬にして失ってしまいました。海保の一職員は、世界に意識革命を起こしたといっても過言ではありません。活字のウィキリークスと同等、あるいは映像だけにそれ以上のショックを数億の人類に与えたはずです。
いま継続している連載「検証北朝鮮・延坪島事件」でも間もなく記しますが、砲撃事件以降に2度、中国漁船は同様の事件を韓国に対して起こしています。先取りで掲載します。
11月29日、黄海での米韓合同軍事演習が前日から始まった。北朝鮮は29日、「全面戦争勃発へと導くための意図的で計画的な策動だ」と、韓国に警告。北朝鮮は「わが方は戦争を望みはしないが、決して恐れない」「挑発を仕掛けてくるなら躊躇なく迎え撃つ」
同日、韓国済州島南方沖海上で中国漁船員が棒で殴るなどの暴力をふるい、韓国海洋警察官6人が負傷した。そして漁船は逃走。同様の事件が発生するたびに、韓国側は中国政府に漁船の取り締まり対策を要請している。
そして12月18日。韓国軍は延坪島で21日まで訓練を開始。内1日は射撃訓練を実施すると発表した。初日の18日、悪天候「視界不良」を理由に射撃は見送った。周辺の天候は終日良好で、波も穏やかだった。射撃は20日か21日に実施する見通しと言う。
北朝鮮からの抗議について、韓国政府筋は「人殺しが『自分は被害者だ』と言うような妄言だ」と憤り、韓国軍当局者は「21日までに必ず訓練を行う」、「北に譲歩すれば、この水域での訓練が今後難しくなるばかりか、自国の『領海』とする北の主張を認めたとの誤解を国際社会に与えかねない」と強調した。
そして同日13時ころ、韓国中西部の黄海、於青島オチョンドの北西約130キロ。韓国排他的経済水域EEZ内で、中国漁船約50隻が不法に操業していた。取り締まりに当たっていた海洋警察の警備艦3000t級が停戦命令を出した。そして海洋警察官4名が、小型ボートから漁船に乗り込もうとしたところ、漁民は鉄パイプなどで暴行。韓国側4人全員が重軽傷を受け、警備艦に引き返した。すると漁船1隻約60tは警備艦に2度体当たりし、転覆してしまった。海上に放り出された乗員10名の内、4人は中国漁船が救助した。5名は韓国艦が救助したが内1名は死亡。韓国側は4人を拘束。また警備船6隻とヘリコプター4機を投入して、もうひとりを探したが行方不明である。
黄海の韓国EEZ内では、中国漁船が不法操業を繰り返し、取り締まりに当たる海洋警察官に漁民らが暴行する事例が目立ち、問題になっていた。しかし韓国外交通商省は漁船乗務員に死者と行方不明者が出たことに関し、在韓中国大使館に遺憾の意を伝えた。韓国政府は今回の事態が、中国との外交問題に発展するのを避けたい意向である。撮影されたビデオは公開されず、拘束した4人もすぐに釈放された。
まるで尖閣諸島事件を思わせるような光景です。さらにこの暴挙では、中国漁民に2名の死者が出たのです。一体なぜ、このように緊迫した日を選んで、攻撃を仕掛けてくるのでしょうか。
雑誌『正論』2011年2月号(産経新聞社)に用田和仁「国民よ、中国の脅威を直視せよ」が掲載されています。用田氏は昨年まで、陸上自衛隊・西部方面総監だった方です。以下、ダイジェストで引用します。
軍事的に見るならば、海上における南シナ海や尖閣の動きの中で海上民兵といわれ、平時は漁民だがいざとなったら軍人として正規軍の渡海・上陸作戦を支援する「多数の漁船群」に着目しなければならない。これらと旧軍艦等の監視船、そして現役の軍艦が役割を分担して行動している。ちなみに海上民兵は、小型漁船の二百から二百五十隻で一個歩兵師団を運ぶ(中国軍事雑誌「艦船知識」2002年)といわれているので、それらが島嶼へ侵攻する場合の先導とし、まず港湾に殺到して来る。尖閣のまわりでは、すでに八月から二百七十隻の漁船が操業し、その内の約七十隻が日本領海にいた。見方を変えると尖閣諸島は、約一個師団の海上民兵に長く包囲されていたことになる。漁民の保護、すなわち国民の保護という大義名分で戦争に及ぶのは、古典的な常套手段である。このやり方でいくと、南西諸島まで戦火を拡大することは、いとも簡単なことである。中国は「人海戦術」を得意とする。
中国海軍の近代化、ハイテク化は驚くほどのスピードで進行しています。いま建造している、はじめての空母2隻の完成も近い。高性能潜水艦の保有量の多さにも驚く。ハワイ以西の西太平洋を制覇しようとしているのが、いまの中国です。さらにはインド洋も、石油のライフラインとしている。米国と並ぶ海洋帝国の誕生は決して遠い未来の話しではないようです。
外国の違法漁民を取り締まることは国際法上、対処に困難がつきまとうという。彼の国の狙いは、きっとそこにあるのでしょう。末端ではあるが、彼ら漁民たちは中国海軍に組み込まれた海兵であることを、わたしたちは知らねばならないようです。
中国は米国に、こう言いました。「ハワイを境に西太平洋は中国に、東太平洋は米国の管轄に」。夢物語ではありません。わたしたちは太平楽なのではないでしょうか。
<2011年1月2日>