≪脚色≫
秋の風景
特別編(上)スーパーじいちゃん(2)
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
N ・・湧水正也6
6.台所 夜
夕食。食卓を囲む四人。茶碗蒸しがテーブルに出ている。箸で中から銀杏(ぎんなん)を探し出す恭之介。
N 「夕飯の茶碗蒸しを食べながら、箸で実を探し当てたじいちゃんが、ポツンと云った」
恭之介 「おっ、銀杏ですか…。これは、これは…」
未知子「ええ…そうです。お義父さまがこの前、拾ってらした実ですわ」
食卓を囲む四人。
7.(フラッシュ) 神社 昼
古い社。鎮守の森。その中に聳(そび)える一本の銀杏(いちょう)の大木。銀杏(ぎんなん)を拾う恭之介と正也。
N 「家から五分ほど歩いた所には、古いお社がある。その中の鎮守の森に、一本の大層、大きな銀杏(いちょう)の木が聳えてお
り、毎年、たわわに実をつけるのだ」
8.もとの台所 夜
食卓を囲む四人。
N 「銀杏は食すまでが、ひと苦労なのである。さあ、これで食べられると思いきや、(◎に続いて読む)」
9.(フラッシュ) パケツに浸かったクルミの実
バケツの水に浸かって黄色くなった銀杏の実。中の種を取り出す作業をする恭之介と正也。
N 「(◎)まずは、実の中の種を出す工程がある(△に続いて読む)」
10.(フラッシュ) クルミの実
ペンチでクルミの種を割る恭之介。割れた種から実を取り出す選別をする正也。
N 「(△)さあ、これで食べられると思いきや、さにあらず。続いて、種の殻を割る工程が今や遅しと待ち構えている(◆に続いて読
む)」
11.もとの台所 夜
食卓を囲む四人。会話の弾む食事風景。電灯光に輝く恭之介の頭。
N 「(◆)じいちゃんは、そういうこともした上で恍(とぼ)け顔で母さんに、『おっ、銀杏ですか…』と、云ったのである。じいちゃんには口で表現出来ない包容力というか、偉大さというか…何かそういったオーラが漂っているのである。これは、光り輝く禿げ頭力によるものではない。じいちゃんに自ずと備わった仁徳のようなものであろう。まあ、スーパーマンと迄は云えないが、大したスーパーじいちゃんなのである」
F.O
タイトル「秋の風景 特別編(上) スーパーじいちゃん 終」
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「秋の風景 特別編(上) スーパーじいちゃん」をお読み下さい。