水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 秋の風景 特別編(上) スーパーじいちゃん(2)

2009年11月08日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      秋の風景
      特別編
(上)スーパーじいちゃん(2)

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]  
   N      ・・湧水正也6
6.台所 夜
   夕食。食卓を囲む四人。茶碗蒸しがテーブルに出ている。箸で中から銀杏(ぎんなん)を探し出す恭
之介。
  N   「夕飯の茶碗蒸しを食べながら、箸で実を探し当てたじいちゃんが、ポツンと云った」
  恭之介 「おっ、銀杏ですか…。これは、これは…」
  未知子「ええ…そうです。お義父さまがこの前、拾ってらした実ですわ」
   食卓を囲む四人。

7.(フラッシュ) 神社 昼
   古い社。鎮守の森。その中に聳(そび)える一本の銀杏(いちょう)の大木。銀杏(ぎんなん)を拾う恭之介と
正也。
  N   「家から五分ほど歩いた所には、古いお社がある。その中の鎮守の森に、一本の大層、大き
な銀杏(いちょう)の木が聳えてお
       り、毎年、たわわに実をつけるのだ」

8.もとの台所 夜
   食卓を囲む四人。
  N   「銀杏は食すまでが、ひと苦労なのである。さあ、これで食べられると思いきや、(◎に続いて読む)」

9.(フラッシュ) パケツに浸かったクルミの実
   バケツの水に浸かって黄色くなった銀杏の実。中の種を取り出す作業をする恭之介と正也。
  N   「(◎)まずは、実の中の種を出す工程がある(△に続いて読む)」

10.(フラッシュ)
 クルミの実
   ペンチでクルミの種を割る恭之介。割れた種から実を取り出す選別をする正也。
  N   「(△)さあ、これで食べられると思いきや、さにあらず。続いて、種の殻を割る工程が今や遅しと
待ち構えている(◆に続いて読
       む)」

11.もとの台所 夜
   食卓を囲む四人。会話の弾む食事風景。電灯光に輝く恭之介の頭。
  N   「(◆)じいちゃんは、そういうこともした上で恍(とぼ)け顔で母さんに、『おっ、銀杏ですか…』と、
云ったのである。じいちゃんには口で表現出来ない包容力というか、偉大さというか…何かそういったオーラが漂っているのである。これは、光り輝く禿げ頭力によるものではない。じいちゃんに自ずと備わった仁徳のようなものであろう。まあ、スーパーマンと迄は云えない
が、大したスーパーじいちゃんなのである」
   F.O
   タイトル「秋の風景 特別編(上) スーパーじいちゃん 終」

 

 

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「秋の風景 特別編(上) スーパーじいちゃん」をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第五回

2009年11月08日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第五回
 当の本人の左馬介も、以前よりか木刀が軽く捌(さば)けることを自覚しながら一馬に対している。何が幸いするか分からぬ…と、
馬介は思った。
━━ 剣聖への道 ━━ それは程遠いに違いない。左馬介がそこへ辿り着くには、まず、多くの門弟達の頂点に立つ技を極めねばならないのだろう。隠れて行う早朝の素振り稽古は、勿論、剣の(さば)き方を磨けることにはなる。だが、抜きん出た技を自らが工夫して編み出さねば、門弟の中で少し腕が上達した…程度のことで五年が終わってしまうのではないか…。左馬介は稽古の合間、
面防具を取って汗を拭きながら、そう巡っていた。
 左馬介が入門した時とは異なり、幻妙斎は全く姿を現さない。一馬の言によれば、それが当然であり、左馬介の入門に際して幻妙斎が姿を見せたことの方が、むしろ特異だということらしい。それに、入門以降も折りに触れ、左馬介の前へ幻妙斎は姿を見せた。自分だけが何故…という謎は未だに解けず、この先も解けそうにないが、左馬介は、一度でいいから自分から出向き、会ってみたい…とは思った。今迄は全てが一方的で、幻妙斎の出没に終始したからである。だがそうなると、何処(どこ)へ出向けばいいのかが問題となる。


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