水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第一話) 夕涼み

2009年11月29日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第一話)夕涼み

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也

1.庭先 夕方
   タイトルバック
   風呂から上がり、庭先の縁台で涼む恭一。団扇で手足の蚊を払う浴衣姿の恭一。
  N   「今年も暑い夏がやってきた。父さんは、のんびり縁台で涼んでいる。時折り、手や足をパチリ
パチリとやるのは、蚊のせいだ
       (◎に続けて読む)」

2.子供部屋 夕方
   勉強机から、窓の網戸越しに恭一を眺める正也。
  N   「(◎)僕は、その姿を勉強机から見ている(△に続けて読む)」

3.台所 夕方
   夕食準備のため、炊事場で小忙しく動く道子。
  N   「(△)母さんは、と云うと、先ほどから台所付近を夕餉の支度で、小忙しく動き回っている(◇に
続けて読む)」

4.庭 夕方
   軒(のき)に吊るされた風鈴が楚々と鳴る。ビールを縁台で飲む恭一。
  N   「(◇)父さんは風呂上りの生ビールを枝豆を肴(さかな)に味わっているから上機嫌である。庭の風
鈴がチリン…チリリンと、
       夕暮れの庭に涼しさを撒く」
   テーマ音楽
   タイトル「夏の風景」(第一話) 夕涼み」
   キャスト、スタッフなど

5.(フラッシュ) 庭 昼
   麦わら帽子を被り、ランニングシャツ姿の恭一。首に手拭いを巻き、高枝バサミで樹木の選定をす
る恭一。 
  N   「今日は土曜だったので、父さんは庭の手入れ、正確に云えば剪定作業をやっていた(○に続けて読む)」

6.もとの庭 夕方
   ビールを縁台で飲む恭一。  

7.子供部屋 夕方
   勉強机から窓の網戸越しに、庭の恭一を眺める正也。
  N   「(○)だから一汗かいたあとのビールなんだろうが、実に美味そうにグビリとやる。その喉越しの音が、机
まで聞こえてきそう
       だ」
   開いた戸から、突然、、風呂上がりの恭之介が入り、正也の背後に立って机上を覗き込む。
  恭之介「おう! 頑張っとるじゃないか…(云いながら正也の頭を撫でつけ、笑顔で)」
   驚いて、振り返る正也。
  N   「急に後ろから頭を撫でつけた無礼者がいる。振り返れば、じいちゃんが風呂上りの赤く茹で
あがった蛸になり、笑顔で立って
       いた」
  正也  「なんだ、じいちゃんか…(笑顔で、可愛く)」
  恭之介「正也殿に、なんだと申されては、埒(らち)もない」
  正也  「…(意味が分からず、無言の笑顔)」
   そのまま、ただ笑いながら居間へ立ち去る恭之介。

8.居間 夕方
   居間へ入る恭之介。庭先の足継ぎ石へ下りる恭之介。
  N   「僕の家には風呂番という一ヶ条があり、今日は、じいちゃんが二番風呂だった。この順はひと月
ごとに巡ぐるシステムになって
       いる。提案したのは僕だが、母さんにはすまないと思ってい
る。終いの湯があるから…と、母さんは笑いながら僕の提案を抜け
       ると宣言したのだ。男女同
権の御時世からすれば、時代遅れも甚だしいことは、小学生の僕にだって分かる」

9.庭 夕方
   徐(おもむろ)に縁台へ座る恭之介。二人の間に置かれている将棋盤と駒箱。
  恭之介「恭一、また…どうだ」
  恭一  「お父さん、もう夕飯ですから…(やや迷惑顔で、遠慮しながら、残ったビールを飲み干し)」
  恭之介「いいじゃないか。お前…確かこの前も負けたな。もう勝てんと音をあげたか?(フフフッ・・・と
笑いながら、縁台上の殺虫剤をブ
       シューっとやり)」
  恭一「違いますよ!」
  恭之介「なら、いいじゃないか(即座に返し)」
  恭一「分かりました。受けて立ちましょう(やや依怙地になり、即座に返し)」
   慣れた手つきで、瞬く間に駒を並べ終え、盤上に視線を集中させる二人。

10.子供部屋 夕方
   勉強机から、窓の網戸越しに二人を眺める正也。突然、未知子が現れ、正也の背後に立つ。机上に置
かれた蚊取り線香から流れる
   煙。
  未知子「正也!…早く入ってしまいなさい (やや強く)」
  
N   「母さんの声が背後から飛んできた。僕は勉強をやめ、風呂へ入ることにした。蚊が
机の上へ無念そうにポトリと落ちた」 
 

   F.O
   タイトル「夏の風景(第一話) 夕涼み 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は 「短編小説 夏の風景☆第一話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第二十六回

2009年11月29日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第二十六回
 瞼を閉ざしていると、眼に映るものが無いだけ聴覚が鋭敏になる。左馬介は、既に四半時は座り続けていた。眠くはないが、心は雨音で幾らか集中を欠いている。未だこの程度の自分なのだ…と、思えた。そうこうしている内に、辺りは少し明るさを増していた。左馬介は瞼を開けるとスッ! と立ち、薪入れ小屋を素早く出ると一目散に分の小部屋へと急いだ。手燭台に灯りを入れていない分だけ手
は省けた。
 小部屋へ戻って暫くすると、魚板を叩く音が響いた。皆を起こす合図である。叩き手は、誰が決めたのか定かでないが、新入りの案内係を仰せつかっている大男の神代である。この男の背丈からすれば、腕をそう伸ばさずとも叩けるから疲れることはない。音も
きくなるよう造作なく強く叩ける訳だ。
 魚板が鳴れば、辺りには急に喧噪が漂う。云う迄もなく、門弟達が各々の動きを始める為である。堂所横に設けられた水洗い場は、歯を磨いたり顔を洗ったりする者達で、ごった返す。左馬介も、その要領は既に心得ていたから、手拭いを袴の腰紐へと通しな
がら、洗い場へと急いだ。
 洗い場には井上と神代がいたが、後の者達は未だ来ていなかった。


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