水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景(第三話) 教養人

2009年11月13日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
(第三話)教養人

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]  
   N      ・・湧水正也
   その他   ・・従兄、叔母

1.湧水家の玄関 外景 昼
   タイトルバック
   玄関戸の上部に飾られた注連飾り。どこからか聞こえる獅子舞が奏でる笛、太鼓の音。

2.子供部屋 昼
   従兄と楽しそうに話をする正也。みかんを食べる二人。二人が愉快に話す光景。
  N   「久しぶりに都会の叔母と従兄弟がやって来た。大人同士の会話もいいとは思うが、子供同士の会話というのも、いいもので教
        養深く乙なものだ。話は弾んで、年末年始の諸収入の話となり、クリスマスで、せしめた贈りもの談義も大いに盛り上がって、
       サミットは閉幕した」 

3.湧水家の玄関 外景 夕方
   従兄弟、叔母が帰る姿。見送る家族四人。

   テーマ音楽
   タイトル「冬の風景」(第三話) 教養人」
   キャスト、スタッフなど

4.台所 夜
   食卓テーブルの椅子に座る恭之介。後片付けを炊事場でする未知子。
  恭之介「未知子さん、お疲れでした。毎年のことながら、ご苦労をかけます(炊事場を見ながら)」
  未知子「あらっ、お父様。そんなお気遣いは無用に願います。ここが実家なんですから、お帰りになって当然ですわ」
  恭之介「はあ、そらまあそうですが…」

5.居間 夜
   長椅子に座り、本を読む正也。台所から聞こえる恭之介と未知子の声、そして見える遠景。
  N   「最近、嗜(たしな)み始めた碁の本を居間で読んでいると、そんな二人の会話が聞こえてきた。すると…(◎へ続けて読む)」
   恭一が居間へ入る。続けて、テーブル椅子を立った恭之介も台所から居間へ入る。暗黙の了解が出来ているように、窓際へ向かい
   将棋を指し始める二人。
  N   「(◎)二人はいつの間にか将棋を指し始めた」
   ふと、将棋盤から視線を長椅子へ移す恭一。
  恭一  「おい、正也。何、読んでんだ?」
  正也  「ん? 五目並べの本だけど…」
  恭一  「五目並べか…。父さんや俺の跡を継いで、将棋をやれ。…なら、三代目も夢じゃない」
  恭之介「まあ、お前、そう云うな。正也には正也の生きる道ってもんがある。それに、五目並べと馬鹿にするが、なかなかどうして、奥深
       いものなんだぞ。連珠と云って、プロの有段者もいる」
  恭一  「ほお…、そうなんですか? …王手!」
  恭之介「ウッ! いつもながらズルい奴だ。儂(わし)にしゃべらせておいて油断させるとは…。呆れてものも云えん!」
  恭一  「父さんが勝手に話してんじゃないですか」
  恭之介「うるさい! 黙りおろぉ~~!!」
  N   「ピカッ! っと光る、じいちゃんの時代劇言葉が炸裂して父さんを直撃した。父さんは防御のバリアを張って、だんまりを決め込
       み、己が身を守る。暗黙の了解が出来た関係はどこへやら、両者の間に暗雲が漂う」
   チューハイのレモン割りのコップとツマミの小皿を載せて入る未知子。恭之介と恭一が座る畳横へ、しゃがみ込み、静かに盆を置く未
   知子。
  恭之介「あっ、これは…。いつもすみませんな、未知子さん(軽く会釈して)」
  未知子「いいえ…」
  恭一  「気が利くな(未知子を見て)」
  恭之介「当たり前だ! (恭一を見て、笑顔で)」 
   笑いながら、無言で居間を出る未知子。その様子を垣間見る正也。
  N   「二人の機嫌は一変し、すっかり仲良くなった。僕は二人の様子を見て、この教養人の方々には、とても勝てない…と確信した」
   F.O
   タイトル「冬の風景(第三話) 教養人 終」

 ※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「冬の風景(第三話) 教養人」をお読み下さい。  


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第十回

2009年11月13日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第十回
 その梅見の宴席が近づいていた。師範代の井上が、そのことを皆
の前で伝えたのは、昼稽古の後だった。
「今日の稽古はこれ迄とする。さて、今年も恒例の梅見の宴が催されることとなった。昨日、代官所から文箱が届き、期日は七日後の道場が閉まる十五日に招待するとあった。皆も心するように…。久
々に蟹谷さんとも心置きなく話が出来るぞ。以上じゃ…、解散!」
 そう云い終えた井上は稽古場を後にした。残された門弟達は、木
刀を刀掛けに戻すと、ざわついて話しだした。
「何分にも、よく分かりませんので、良しなに御願いを致します」
 左馬介は一馬に頭を下げた。一馬はその言葉を聞き、思わず笑
った。
「ははは…、別に頼まれるほどの大したことじゃありません。要は、皆で楽しんでいればいいだけです。今度は謹慎の心配もありませ
んから、鴨下さんと安心して参加して下さい」
 年始には、千鳥屋の饗応で謹慎蟄居の処分を受けた一馬の言
だから、間違いがないように思えた。
「はあ、そう云って戴くと安心ですが…」
 廊下を進みながら、左馬介は小声で云った。楽しくはあるが、不安も混じる妙な気分だった。


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