水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第二話) 馬鹿騒ぎ

2009年11月30日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第二話)馬鹿騒ぎ                

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

1.庭 早朝
   タイトルバック
   庭の樹木で鳴く蝉。早朝の陽射し。

2.子供部屋 早朝
   布団で眠る正也。蝉の鳴き声に薄眼を開ける正也。徐(おもむろ)に枕元の目覚ましを眠そ
うに見る正也。なんだ、こんな時間か…も
   う少し眠っていよう・・と、また布団を被る正也。が、
辺りの明るさに半身を起こして両手を広げ、欠伸をする正也。蝉の鳴き声。窓から
   入る陽射
しの明るさ。
  N   「蝉が唄っている。それも暗いうちからだから、寝坊の僕だって流石に目覚める。それ
に五時頃ともなれば冬とは違って外は明
       るいから尚更だ」
   テーマ音楽
   タイトル「秋の風景」(第二話) 馬鹿騒ぎ」
   キャスト、スタッフなど

3.庭 早朝
   半身裸の着物姿で木刀を振るい、剣道の稽古をする恭之介。恭之介の周りを元気に駆け巡るポチ。

4.渡り廊下 早朝
   歯を磨き終え、ラジオ体操に出ようと廊下を歩く正也。ガラス越しに見える恭之介。聞こえる
恭之介の掛け声。立ち止まり、稽古の模
   様を窺う正也。
  [恭之介]「エィ! ヤァー!(竹刀を振るいながら)」
   正也に気づく恭之介。
  [恭之介]「どうだ、正也も振ってみるか!」
  正也  「僕はいいよっ! ラジオ体操があるから!…」
   稽古を中断し、足継ぎ石に近づく恭之介。ガラス戸を開け放つ恭之介。
  恭之介「まっ、そう云うな、気持いいぞぉ、ほれっ! (正也の眼前へ竹刀をサッっと突き出し)」
   恭之介の勢いに押され、竹刀を手にする正也。
  N   「こういう主体性がないところは、父さんの子なんだから仕方がない」
   恭之介の指導通り、何回か竹刀を振るう正也。
  正也  「もう行くよ。遅れると、子供会で怒られるから…(急いでいる、と云いたげに)」
  恭之介「そうか…。じゃあ、行きなさい(素直に)」
   解放されたかのように、竹刀を置くと駆けだす正也。正也の後ろ姿に声を投げる恭之介。
  恭之介「帰ったら飯が美味いぞぉ~」

5.台所 朝
   ラジオ体操を終えて台所へ入る正也。恭之介の腕を揉む未知子。傍らには、起きたパジャマ
姿のまま見守る恭一。恭之介の横へ座
   る正也。
  恭一  「年寄りの冷や水なんですよ、父さん…」
  恭之介「なにを云うか! (激昂して)ちょいと、捻っただけだっ」
  N   「じいちゃんが気丈なのはいいが、父さんも、もう少し話し方を工夫した方がいいだろう。
僕の方が、じいちゃんの気性を知り尽く
       しているように思える」
  未知子「でもね、お義父さまも、もうお歳なんですから、気をつけて下さい…(揉みながら)」
   急に、顔が柔和になる恭之介。
  恭之介「ハハハ…、お二人にそう云われちゃなぁ。まあ、これからは考えます、未知子さん…」
   三人の様子を、椅子に座って見遣る正也。
  恭之介「さあ、飯にしましょう、未知子さん」
   隣に座る正也に気づく恭之介。
  恭之介「おぅ! 正也も帰ってたか…。虫に刺されなかったか?」
  正也  「うん、虫除け持ってったし」
  恭之介「ああ…、アレはよく効くからなぁ」
   台所の片隅で四人を窺うタマが、馬鹿な話はやめて夕飯にしませんか? とばかりに、ニャ~と鳴く。
  恭之介「さあ、飯にしよう。飯だ飯だ、飯…飯(立ちながら)」
   呆れたように恭之介を見遣る三人。
  N   「何かに憑かれたように、じいちゃんは母さんの手を振り解(ほど)いて、勢いよく立ち
上がった」
   F.O
   タイトル「夏の風景(第二話) 馬鹿騒ぎ 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第二話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第二十七回

2009年11月30日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第二十七回
 その時、
「お早うございます…」
 と、慌しく小走りしながら、鴨下が左馬介の背に声を掛け、前を横切った。後方から不意を突かれた格好の左馬介だったが、「お早うございます」と、咄嗟(とっさ)に返していた。この感覚は、相手の打ち込む竹刀を受け、そして払った後に打ち返すという剣捌(さば)きにも似ていた。井上も神代も、別に驚くことなく、「おう!」とだけ吐いて鴨下へ応じた。鴨下の方は遅れた負い目があるのか、慌て味に洗顔などをして三人に追いつこうとしていた。井上と神代自分の小部屋へと戻っていった。これから朝餉の準備があるら、左馬介は「慌てずとも、いいですよ。私は先に厨房へ行ってりますから…」と、言葉を残して歩き出した。残りの門弟達が対から、ドカドカと洗い場へ駆けつける。鴨下は漸く顔を拭いなが左馬
介の尻に従った。
 厨房へ入れば毎朝の単調な賄いの準備が始まる。最初の頃は覚束無(おぼつかな)かった鴨下の手つきも慣れ、そうは度々、止まらなくなった。左馬介のように流暢(りゅうちょう)と迄はいかないが、それでも失敗がなくなっただけ随分と左馬介も助かった。


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