水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景 特別編(下) 禍福は糾(あざな)える縄(2)

2009年11月24日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
特別編(下) 禍福は糾(あざな)える縄(1) 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・叔母、従兄弟

5.(フラッシュ) 勉強部屋 夕方
   従兄弟とフィギュアを手に遊ぶ正也と従兄弟。和気あいあいの語らい。上がる二人の笑声。
  N   「(◇)同伴の従兄弟と楽しく遊べる時間も出来たりして、今年
の冬休みは、例年より好調に推移していくように思われた」

6.(回想) 台所 昼
   食卓テーブルで入れ歯を外し、いじくる恭之介。不機嫌な顔。隣から様子を窺う正也。
  正也  「じいちゃん、どうしたの?」
  恭之介「ん? いや、どうもありゃせん…(不機嫌に)」
  正也  「…」
  N   「ところが、である。叔母や従兄弟が一泊して慌しく帰った後、また悪いことが派生しようとして
いた。入れ歯の不具合により、じ
       いちゃんのテンションが低いのに加えて(△に続けて読む)」

7.(回想)
 夫婦部屋 昼
   ベッド上。氷枕を頭に乗せて寝込んでいる恭一。傍らに未知子が体温計を手に立つ。
  N   「(△)今度は父さんが流行りのインフルエンザでダウンしたのである。幸い、休日診療所なるものが
あって事無きを得たのだ
       が、ふたたび散々な、お正月へと逆戻りしてしまった」
   体温計の温度を見る未知子。
  未知子「もう、大丈夫! 微熱に下がったわ」
  恭一  「…そうかぁ?(薄眼を開け、疑い口調で)」

8.居間 昼
   賀状と一通の封書を手に立つ未知子。
  N   「今年の冬休みは結局、ローテンションで終わるのか…と、僕が諦(あきら)めた矢先である」
  未知子「あらっ? お義父さま宛だわ。…何かしら?」
   怪訝な表情で封を切る未知子。某会社からの旅行招待券、案内状、パンフレット。読み終えた後、喜
色満面になる未知子。未知子の
   嬌声。驚いて駆け寄る恭之介。充分に話せない口で、フガフガと未知子へ
何やら語りながら喜びを露にする恭之介。
  N   「じいちゃんが応募したクイズが当選し、五泊六日の海外旅行に二名様を、という豪華な通知
のパンフレットが同封されていた。
       父さんも、風邪でベッドに横たわりながら、その報に接し、
元気を取り戻したようだった」

9.離れ 夜
   稽古用広間で居合いの形(かた)を示す恭之介。その様子を見守る正也。
  N   「しかし、また、ひとつの問題が生じた 二名…、さて誰が行くんだ? ということである。僕は一計
を案じることにした」
  正也  「父さんと母さん、旅行したことって余りないし…。じいちゃん、どう思う?」
  恭之介「フガ? フガフガ…。フガガ、フガフガフガ」
  N   「解説すれば、じいちゃんは抜け歯語で、『ん? そうだな…。わしは、どうでもいい』と云ったのだ」

10.台所 朝
   朝食風景。和気あいあいの家族四人。
  N   「その努力の結果は、すぐに現れた。冬休みも残り僅かになった頃、僕の家の食事風景は、ふたたび活況を呈しだしたのであ
       る。じいちゃんだけは、相変わらずフガフガとテンショが
いけれど、それでも、入れ歯を歯医者へ持ってった結果、すぐ修理
       できるそうで、以前よりは
明朗さを取り戻しつつあった。よく考えれば、“禍福は糾(あざな)える縄のごとし”…で終始した冬
       休みだった。まあ、“終り良ければ、全て良し”とも云うから、父さんと母さんが海外旅行
できるようになった、という素晴らしい
       結果などを踏まえて、良し!! ということにしたい」
11.エンド・ロール
   冬の湧水家の畑。湧水家の全景。

   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O
   タイトル「冬の風景 特別編(下) 禍福は糾(あざな)える縄 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「冬の風景 特別編(下) 禍福は糾(あざな)える縄」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第二十一回

2009年11月24日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第二十一回
 さらに考えを進めれば、千鳥屋の誰と懇意なのか? そして、何が鴨下とその者を懇意にさせたのか? が、気になる。血縁関係なのか、或いは逗留中の偶然の奇縁か…、この二つの場合が考えれた。だが、左馬介の胸中には、考える程のことではない…という、
否定的な潜在意識も芽生えていた。
 堀川道場が目と鼻の先に迫っていた。普通の場合と異なり、代官所の招きで全員が出かける宴席に限り、影番が留守居をする決めがあった。無論、それ以外で道場が空(から)になる場合は新入りが残る。今回の場合、鴨下にとっては入門の時期がよく、新入りにも拘(かかわ)らず美味い馳走と酒にありつけたのは幸運であった。影番は云わずと知れた樋口静山だから、都合よく親子で面(つら)を付き合わせることもなかった。別に幻妙斎が命じたというのでもなく、決めによるものだから仕方がない。この決めは、道場が開かれた頃より踏襲されているのだが、幻妙斎の所用を熟(こな)す影番が出来たのは、一馬の言によれば、幻妙斎が六十の坂を越えた頃かららしい。勿論、一馬も誰とはなしに訊いた話だと云うのだから、正確なところは分からない。詰るところは風聞に過ぎぬ…とも考えられた。委細はともかくとして、一行は道場に到着し、通用門を潜った。


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