水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 「ターゲット」

2009年11月27日 00時00分01秒 | #小説

≪創作シナリオ≫

     ターゲットより

1.車の中(真夜中)
  高速道路を走る一台の車。運転する女。車線の左右に流れる銀光の照明灯。照明灯に照らされ銀光に浮かぶアスファルトの道。固
  
定して流れ続ける道。カーラジオから流れる音楽。車窓から入る照明灯に照らされ浮かぶ女の顔。助手席をチラッと見る女。
 女「もう少し待っててね。そしたら、あなたの出番よ…(カメラに言い聞かせるように)」
  助手席に置かれたデジタルカメラが銀光に浮かぶ。黙って運転する女。前方にインターチェンジの案内板。ウィンカーを出し、左へ車線
  変更をする女。

2.車の外(真夜中)・外景
  車線変更する車。減速し、走行する車。
  O.L

3.車の外(真夜中)・外景
  O.L
  減速し、走行する車。一般道を走る車。

4.車の中(真夜中)
  山並みを走る車。木々がヘッドライトの光でアンバーイエローに浮かび、流れていく。自動ウインドウを開ける女。微かな風に目を細
  める女。窓から入る穏やかな潮騒の音 S.E。さらに、車を走らせる女。

5.車の外(早暁)・外景
  山並みを抜け、海岸沿いの小道に出て走る
車。

6.車の中(夜明け前)
 女「着いたわよ…(カメラに言い聞かせるように)」
  車を停める女。サイドブレーキを引き、エンジンを切る女。助手席のデジタルカメラを手にする女。

7.車の外(夜明け前)・外景
  車を降り、小道から一歩一歩とゆったり歩を進める女。海が一望できるところを目指す女。その場所に至り、佇む女。薄暗い水平線を、
  ただじっと眺める女。
  O.L

8.車の外(夜明け)・外景
  O.L
  日の出前の水平線を、ただじっと眺める女。カメラを構える女。静かにオレンジ色の円を描いて姿を見せる太陽。陽光を浴びながらシ
  ャッターを切り続ける女。
                                        完
                                                   ※ 坂本博 氏「徒然雑記」内記事より脚色


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第二十四回

2009年11月27日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第二十四回
完全な独自性に富み、更にその剣筋に、相手を圧倒する絶妙の捌きが加味されている。更に加えるならば、相手の受けに隙がない…というのが最低限の条件であった。そのような技を編み出すには、長い月日を要するのだろう。左馬介自身、その点は解している。ただ、その最初の起点と最終の到達点が見えないのである。具体的に云えば、新技の姿が皆目、摑めず、脳裡に浮かばないのだった。そうした剣筋の構築への想いは、踠(もが)きにも似た迷路となっていった。左馬介は全てを考えないことにし、無から出直そうと思った。以前、左馬介の前へ数度は出現した幻妙斎も、新弟子の鴨下が入門した少し前頃から全く音沙汰がない。勿論これは、左馬介に限ったことではなく、最近、幻妙斎の姿や獅子童子の姿を見た者は、門弟達の中で皆無であった。師範代の井上すら、連絡が全くとれず困り果てていた。左馬介の方から幻妙斎へ近づく術(すべ)を一馬に訊ねた一件も、結果的には不首尾に終わり、未だに幻妙斎の詳細は分からない。今度こそ会えたときには教えを乞おう…
と、左馬介は想いを暖めるのだった。
 無からの出発は、今迄の修練で培(つちか)った剣の上達を放棄する心構えから始まる。即ち、剣を手にしたことがない者が、初めて剣を手にする心境と一(いつ)になることを意味するのだ。


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