水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景(第十話) みんなの癖

2009年11月20日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
(第十話)みんなの癖

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他    ・・猫のタマ、犬のポチ

居間 昼
   タイトルバック
   片隅に置かれた注連飾り、ウラジロ、半紙などの神棚等から下げられた正月もの。それを新聞紙で包み、括る正也。居間へ入って正
   也に気づく恭一。チラッと見て、長椅子に座る恭
一。
  恭一  「今度こそ、終りか…」
  N   「じいちゃんが外した注連飾りが部屋の片隅に置かれている。僕はそれを神社へ持っ
ていこうと新聞紙に包み、紐で括りつけて
       いたところだった。そこへ、父さんが通り掛
かったという塩梅だ。じいちゃんは幸いにも離れへ行って不在だったから、思わず口
      
から漏れたひと言のように思えた」
   テーマ音楽
   タイトル「冬の風景(第十話) みんなの癖」
   キャスト、スタッフなど
   居間へ入る正也。長椅子に座っている恭一。
  正也  「それじゃ、これから持ってってくる…」
  恭一  「ああ…(新聞を読みながら)」
   正月ものを持って部屋を出る正也。
  N   「僕は父さんとは違い、主体性と責任感を今後も維持したいから、すぐ家を出た」

2.渡り廊下 昼
   廊下へ出た正也。離れからやってきた恭之介。二人が鉢合わせ。
  恭之介「おっ、正也。持っていくのか?」
  正也  「うん!」

3.玄関 内 昼
   玄関の框(かまち)を下り、靴を履く恭之介と正也。ポチが、犬小屋の中から顔だけ出し、クゥ~ン・・と
鳴く。

4.玄関 外 昼
   玄関を出て歩きだす二人。
  恭之介「よしっ、一緒に行くか。…いやな、儂(わし)も左義長の飾り付けを神主さんに頼まれた
んだ…」
  正也  「ふ~ん、そうなんだ…。父さんは左義長で見たことがないね」
  恭之介「ああ…恭一なあ。あいつは行事には無頓着だ。そのくせ、宴会などはその逆だがな…。お蔭で、儂が正也に、いつも云ってる
       安定し
たヒラだ、ははは…(大笑いしながら)」
   細道を歩き、鎮守の森へと近づく二人。鳥居が見える。
  N   「確かに、じいちゃんが云うように、父さんの安定感は抜群で、他者の追随を許さない」
   鳥居前に来る二人。正面に見える神社の拝殿。
   F.O

5.玄関 内 朝
   F.I
   戸を開けて入る正也。T 「次の日の朝」。ポチが、犬小屋の中から顔だけ出し、クゥ~ンと鳴く。
  正也  「ただいまっ!」
    靴を脱ぎ、小まめに整え、框(かまち)を上がる正也。

6.居間 朝
   恭之介と未知子が談笑している。恭一は黙って新聞を読んでいる。居間へ入る正也。
  N   「左義長も終って家へ帰ると、じいちゃんが頭を撫で回しながら母さんと談笑していた。
毛のない頭を撫で回すのは、じいちゃ

       の癖だ」
  恭之介「未知子さんは相変わらず綺麗で、結構結構。恭一は幸せ者です…」
  未知子「あらっ、お父さま、嫌ですわ・・(笑って)」
   二人の会話を聞かなかった態で、台所へ反転して歩く正也。
  N   「母さんの癖は? と考えれば、そう目立った癖はない。強いて挙げれば、父さんや、じ
いちゃんと話す時、『…ですわ』みたい
       に、少しお上品に語るところだろうか」

7.台所 朝
   冷蔵庫からジュースを出し、コップへと注ぐ正也。グビッと、ひと口、飲む。タマも、ペロペロと水を飲む。
  N   「『さて、どんじりにぃ控(ひけ)えしはぁ~~』と、じいちゃんに聞いた白浪五人男の口
上のように僕の癖を云うなら、こうして家族
       のことを観察眼をもって記録し、更にはそ
れを、皆様方に延々と語るという、何とも嘆かわしいところだろう。
だが、語る大方は
       事実であり、温かな我が家の一コマなのでお許し戴きたいと思う」
   F.O
   タイトル「冬の風景(第十話) みんなの癖 終」

 ※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「冬の風景(第十話) みんなの癖」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第十七回

2009年11月20日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第十七回
 見上げれば梅花の群落である。桜花には及ばないにしても、桃花とはいい勝負になりそうな一帯の開花である。一馬も左馬介も、暫(しば)し花に見蕩(と)れていた。風がないにも拘(かかわ)らず、花び
らが時折り降り注いで舞い落ちた。
「その後、剣筋の方は乱れが消えましたね」
 ぽつり、と一馬が訊いた。
「はあ…。どうのこうのと考えておる余裕もなくなりましたから…」
「そうでしたね。鴨下さんが来られて、左馬介さんも教える立場に
おなりでした」
「そういうことです。賄い方の責任もありますから、何かと…。鴨下
さんには悪いのですが、とても鴨葱だ、とは…」
「ははは…、葱八さんで鴨葱ですか? 上手いこと云いますねえ。まあ、そんな名でもありますが…。今の状況は、夏場辺りになれ
ば、お慣れになって楽になりますよ」
「そうでしょうか?」
 軽く笑って、左馬介は一馬へ返した。そして暫くは花を愛でなが
ら雑談などを交わした。既に昼は過ぎた頃の陽の高さである。
「付かぬ事をお訊きしますが、道場を去られた皆さんは、どうされておるのでしょう?」


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