≪脚色≫
冬の風景
(第八話)雪の朝
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
N ・・湧水正也
1.勉強部屋 早朝
タイトルバック
パジャマ姿で寒そうに窓から外を見る正也。辺り一面、銀世界と化した雪景色。深々と降る雪。
N 「起きると、辺り一面は雪に覆われていた。それも何年かに一度という積雪に思えた」
震えながら剣道着に着替える正也。庭の雪景色。深々(しんしん)と降る雪。包む静寂。雪灯りに映える窓。
テーマ音楽
タイトル「冬の風景(第八話) 雪の朝」
キャスト、スタッフなど
2.庭 早朝
寒稽古をする恭之介と正也。二人の素振りと掛け声。小降りになった雪。
3.洗面所 早朝
風呂場のシャワー室を出て、渡り廊下を歩く正也。
N 「じいちゃんの慈悲で二十分、短くして貰い、寒稽古を済ませた後、シャワー室で汗を流した」
居間へと向かう正也。部屋から洗面所へ出てきた恭一。途中の洗面所前で出くわす二人。
恭一 「参ったなぁ…。いやぁ、参った参った(歯磨きチューブを絞り出し、歯ブラシにつけながら)」
正也 「おはよう!(笑顔で可愛く)」
恭一 「◎※▲×…!(歯ブラシを口に突っ込んで歯を磨きながら)」
止まらず、恭一と擦れ違い、居間へと向かう正也。
N 「何を参っておいでなのか知らなかったので、僕は愛想をふり撒いて、居間へ行った」
裏戸から中へ入る上半身裸の恭之介。赤ら顔で竹刀を片手に持つ恭之介。その恭之介の肩から昇る幾筋もの湯気。出くわす恭之
介と正也。止まる正也。
恭之介「ははは…、洗い場で拭こうとしたんだが、この雪で生憎(あいにく)、足場が悪くてなあ…」
正也 「けっこう、積もってたね(可愛く)」
恭之介「そうだな…。ここ最近、見ない豪雪だ。三十、いや四十ほどはあったな」
正也 「足が冷たかったけど、直ぐ温まった…(可愛く)」
恭之介「ははは…。正也には悪いが、これも長い目で見れば、お前の為だからな。頑張れ!(正也の頭を撫でながら)」
N 「大蛸に頭を撫でられたが、まさか僕も伝染して蛸頭になるとは思えず、されるまま従っておいた。まあ、いずれにしろ、師匠に
逆らうなどということは出来ないのだが…」
4.台所 朝
食卓テーブルで、バタつきながら味噌汁を飲む恭一。呆れながら恭一を見る未知子。
未知子「あなた、そんなに急いで…、身体に毒よ!」
箸を止め、未知子を見る恭一。
恭一 「そうは云うがな。会社の初打ち合わせがあるんだ。この雪なら、恐らく交通マヒだろう。間に合うか、冷や汗もんだしな…」
ふたたび、聞く耳を持たない態で、食べ急ぐ恭一。
恭之介「恭一!! もっと、よく噛んで食べなさい!」
いつの間に現れたのか、未知子の後方に立って恭一を見る恭之介。
恭一 「(驚いて見上げ)…はいっ!」
食べる速度を落とす恭一。
N 「母さんの後方には、仏様の光背のように光り輝く禿げ頭のじいちゃんが立っていた。迂闊にも父さんは、じいちゃんを見落とし
ていたのだ。じいちゃんの声を耳に受け、急に父さんの食べるペースが落ちた。まあ、父さんも、この程度のものだ」
F.O
タイトル「冬の風景(第八話) 雪の朝 終」
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「冬の風景(第八話) 雪の朝」 をお読み下さい。