水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景(第八話) 雪の朝

2009年11月18日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
(第八話)雪の朝

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也

.勉強部屋 早朝
   タイトルバック
   パジャマ姿で寒そうに窓から外を見る正也。辺り一面、銀世界と化した雪景色。深々と降る
雪。
  N   「起きると、辺り一面は雪に覆われていた。それも何年かに一度という積雪に思えた」
  
 震えながら剣道着に着替える正也。庭の雪景色。深々(しんしん)と降る雪。包む静寂。雪灯りに映える窓。
   テーマ音楽
   タイトル「冬の風景(第八話) 雪の朝」
   キャスト、スタッフなど

2.庭 早朝
   寒稽古をする恭之介と正也。二人の素振りと掛け声。小降りになった雪。

3.洗面所 早朝
   風呂場のシャワー室を出て、渡り廊下を歩く正也。
  N   「じいちゃんの慈悲で二十分、短くして貰い、寒稽古を済ませた後、シャワー室で汗を
流した」
   居間へと向かう正也。部屋から洗面所へ出てきた恭一。途中の洗面所前で出くわす二人。
  恭一  「参ったなぁ…。いやぁ、参った参った(歯磨きチューブを絞り出し、歯ブラシにつけながら
  正也  「おはよう!(笑顔で可愛く)」
  恭一  「◎※▲×…!(歯ブラシを口に突っ込んで歯を磨きながら)」
   止まらず、恭一と擦れ違い、居間へと向かう正也。
  N   「何を参っておいでなのか知らなかったので、僕は愛想をふり撒いて、居間へ行っ
た」
   裏戸から中へ入る上半身裸の恭之介。赤ら顔で竹刀を片手に持つ恭之介。その恭之介の
肩から昇る幾筋もの湯気。出くわす恭之
   介と正也。止まる正也。
  恭之介「ははは…、洗い場で拭こうとしたんだが、この雪で生憎(あいにく)、足場が悪くてな
あ…」
  正也  「けっこう、積もってたね(可愛く)」
  恭之介「そうだな…。ここ最近、見ない豪雪だ。三十、いや四十ほどはあったな」
  正也  「足が冷たかったけど、直ぐ温まった…(可愛く)」
  恭之介「ははは…。正也には悪いが、これも長い目で見れば、お前の為だからな。頑張れ!
(正也の頭を撫でながら)」
  N   「大蛸に頭を撫でられたが、まさか僕も伝染して蛸頭になるとは思えず、されるまま従
っておいた。まあ、いずれにしろ、師匠に
       逆らうなどということは出来ないのだが…」

4.台所 朝
   食卓テーブルで、バタつきながら味噌汁を飲む恭一。呆れながら恭一を見る未知子。
  未知子「あなた、そんなに急いで…、身体に毒よ!」
   箸を止め、未知子を見る恭一。
  恭一  「そうは云うがな。会社の初打ち合わせがあるんだ。この雪なら、恐らく交通マヒだろう。間に合うか、冷や汗もんだしな…」
   ふたたび、聞く耳を持たない態で、食べ急ぐ恭一。
  恭之介「恭一!! もっと、よく噛んで食べなさい!」
   いつの間に現れたのか、未知子の後方に立って恭一を見る恭之介。
  恭一  「(驚いて見上げ)…はいっ!」
   食べる速度を落とす恭一。
  N   「母さんの後方には、仏様の光背のように光り輝く禿げ頭のじいちゃんが立っていた。
迂闊にも父さんは、じいちゃんを見落とし
       ていたのだ。じいちゃんの声を耳に受け、急
に父さんの食べるペースが落ちた。まあ、父さんも、この程度のものだ」
   F.O
   タイトル「冬の風景(第八話) 雪の朝 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「冬の風景(第八話) 雪の朝」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第十五回

2009年11月18日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第十五回
 仄かな梅の香が甘酸っぱく遣る瀬ない。門弟達も梅林に入れば、全くもって只の人であった。一行が梅林が延々と続く中、さらに分け入って二町ばかり進むと、俄かに展望が開け、樋口の家紋である剣持抱き沢潟(おもだか)を浮き立たせた幕が一角を取り囲んでられていた。連なって幕内へ入ると、大層な馳走と、酒が入っていると思われる堤(ひさげ)などが膳とともに既に設けられている。そして、正面の席には代官の樋口半太夫が威風堂々と構え、その左右
には供の者達が二名ずつ座っていた。
「やあ! お待ちしておりました。さあさあ、どうぞ、どうぞ…」
 半太夫は大層、機嫌がいい。
「遅くなりました」
 遅れてはいない筈だったが、井上は一応、挨拶代わりに下手に
出た。
「なんの…、未だお約束までには半時近く有ります故(ゆえ)…」
 半太夫も下手に出て返した。
「まあ、一献(いっこん)、参りましょうぞ」
 続けて、盃(さかずき)を手にした半太夫は、そう云うと、盃を井
上へと差し出した。供の侍が蟹谷にも盃を渡した。
「蟹谷殿、こちらが云っておられた新しい御師範代で?」


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