≪脚色≫
冬の風景
(特別編(上) いつもの癖(1)
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
N ・・湧水正也
その他 ・・猫のタマ、犬のポチ
1.(フラッシュ) 子供部屋 早朝
タイトルバック
布団で眠る正也。目覚ましの音。うつつで目覚ましを止める正也。ふたたび眠る正也。恭之介の寒稽古の声。飛び起きる正也。ま
た布団にもぐりこむ正也。
2.(フラッシュ) 台所 早朝
片隅に置かれた猫用ボックスの中で熟睡するタマ。恭之介の寒稽古の声に飛び起きるタマ。
3.(フラッシュ) 玄関 内 早朝
犬小屋の中で熟睡するポチ。恭之介の寒稽古の声に飛び起きるポチ。
4.子供部屋 早朝
恭之介の掛け声で眠れず、仕方なく起きだし、窓から庭の稽古の様子を眺める正也。上半身裸で寒稽古に汗を流す恭之介の姿。
エイ~! ヤ~! と、凄まじいばかりの鬼気迫る声が聞こえる。
N 「寒くなってきたので、寝起きはどうも時間どおりいかず億劫である。起きるのは目覚ましでなく、いつも決まった時間に始まる、
じいちゃんの寒稽古の掛け声によってである」
タイトル「冬の風景 特別編(上) いつもの癖」
5.庭 朝
ガラス戸を開け、縁側の足継ぎ石から庭へ下りる正也。冬寒の晴れた朝。
恭之介「おっ! 起きてきたな(ニコッと笑い)」
上半身に汗が滴り、それを手拭いで拭く恭之介。
正也 「おはよう!」
恭之介「ああ、おはよう。明日からは早く起きろよ。稽古だからな(優しく)」
正也 「うん!(可愛く頷いて)」
恭之介「…七時か…。道子さん、もう飯の準備、出来たかな… (縁側の廊下に置いた腕時計を、おもむろに覗き見て、楽しそうに)」
6.台所 朝
朝食前。小忙しく炊事場で朝食を準備する未知子。食卓テーブルの椅子に座り、ネクタイ姿で呑気に新聞を読む恭一。洗面所から台
所へ入る正也。別方向から台所へ入る、赤ら顔でいい風情をした着物姿の恭之介。食卓に着く二人。食器や食べ物を運ぶ未知子。テ
ーブルに並べる正也。
未知子「あなた! 御飯ですから!!」
全く意に介しない恭一。未知子の声に驚き、ニャ~と鳴くタマ。
恭之介「オイッ!!」
声に一瞬、手をビクッ! と震わせ、恭之介の顔を垣間見る恭一。新聞を置いて読むのをやめる恭一む。
恭之介「いつもの癖だな…。お前のは止(や)まらんなあ、正也の寝起きより、たちが悪い(不平っぽく)」
N 「じいちゃんによる父さんへのお灸は効果バツグンだ(◎に続けて読む)」
(明日へ続く)