水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景 特別編(上) いつもの癖(1)

2009年11月21日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
(特別編(上) いつもの癖(1)

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他    ・・猫のタマ、犬のポチ

.(フラッシュ) 子供部屋 早朝 
   タイトルバック
   布団で眠る正也。目覚ましの音。うつつで目覚ましを止める正也。ふたたび眠る正也。恭之介の寒稽古の声。飛び起きる正也。ま
   た布団にもぐりこむ正也。

2.(フラッシュ) 台所 早朝
   片隅に置かれた猫用ボックスの中で熟睡するタマ。恭之介の寒稽古の声に飛び起きるタマ。

3.(フラッシュ) 玄関 内 早朝
   犬小屋の中で熟睡するポチ。恭之介の寒稽古の声に飛び起きるポチ。

4.子供部屋 早朝
   恭之介の掛け声で眠れず、仕方なく起きだし、窓から庭の稽古の様子を眺める正也。上半身裸で寒稽古に汗を流す恭之介の姿。
   エイ~! ヤ~! と、凄まじいばかりの鬼気迫る声が聞こえる。
  N   「寒くなってきたので、寝起きはどうも時間どおりいかず億劫である。起きるのは目覚ましでなく、いつも決まった時間に始まる、
       じいちゃんの寒稽古の掛け声によってである」
   タイトル「冬の風景 特別編(上) いつもの癖」

5.庭 朝
   ガラス戸を開け、縁側の足継ぎ石から庭へ下りる正也。冬寒の晴れた朝。
  恭之介「おっ! 起きてきたな(ニコッと笑い)」
   上半身に汗が滴り、それを手拭いで拭く恭之介。
  正也  「おはよう!」
  恭之介「ああ、おはよう。明日からは早く起きろよ。稽古だからな(優しく)」
  正也  「うん!(可愛く頷いて)」 
  恭之介「…七時か…。道子さん、もう飯の準備、出来たかな… (縁側の廊下に置いた腕時計を、おもむろに覗き見て、楽しそうに)」

6.台所 朝
   朝食前。小忙しく炊事場で朝食を準備する未知子。食卓テーブルの椅子に座り、ネクタイ姿で呑気に新聞を読む恭一。洗面所から台
   所へ入る正也。別方向から台所へ入る、赤ら顔でいい風情をした着物姿の恭之介。食卓に着く二人。食器や食べ物を運ぶ未知子。テ
   ーブルに並べる正也。
  未知子「あなた! 御飯ですから!!」
   全く意に介しない恭一。未知子の声に驚き、ニャ~と鳴くタマ。
  恭之介「オイッ!!」
   声に一瞬、手をビクッ! と震わせ、恭之介の顔を垣間見る恭一。新聞を置いて読むのをやめる恭一む。
  恭之介「いつもの癖だな…。お前のは止(や)まらんなあ、正也の寝起きより、たちが悪い(不平っぽく)」
  N   「じいちゃんによる父さんへのお灸は効果バツグンだ(◎に続けて読む)」

                                      
(明日へ続く)


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第十八回

2009年11月21日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第十八回
「ああ…そのことですか。一概に、こうだとはお答えしかねます。皆
さん、それぞれですから…。それに、私もそうは詳しくないので…」
「例えば…で、結構なのですが…」
「そうですねえ。或る方は、腕を認められてさる藩へ仕官されましたし、中には御大身へ養子に入られた方も。ああ、そうそう…。変わったところでは、大道芸で蝦蟇(がま)の油を売っておいでの方
もおられますよ」
「人それぞれなのですね?」
「ええ、人それぞれです。境遇は、皆さん違いますから…」
 左馬介は、それなりに腕を磨き、道場を去っていった者達のその後が知りたかったのだ。自分も孰(いず)れは道場を去る時が来る。それ故、道場を去った後の生きざまに一抹の不安を覚え
たのである。
 その後、二人が宴席へと戻り、一時(いっとき)半が経った。
「では皆の衆、そろそろ戻るとするか。余り酔いが回らぬ内に
な」
 井上が急に大声を出した。酔いが回っているとはいえ、流石に師範代だけのことはあり、飲み惚(ほう)けている訳ではない。芯のところでは、割合、しっかりとしているのだ。皆を無事に道場へと連れ戻らねばならない…という責任感からである。


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