水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景 特別編(上) いつもの癖(2)

2009年11月22日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
(特別編(上) いつもの癖(2)

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也


7.台所 朝
   朝食後。一人、恭一だけがテーブルの椅子に座り、新聞を読んでいる。
  N   「(◎)しかし、このお灸の効果も一過性のもので、長続きしないのが玉にキズであった。今朝も、そのようで、食後、続きを読み始
       めた父さんは、母さんに時間を云われるまで、新聞紙面に釘づけ状態だった」
   炊事場で洗い物を済ませ、ふと、恭一を見る未知子。
  未知子「あなたっ! 遅れるわよ」
   腕を見て、慌てふためいて軽くお茶を飲み、立つと上着を持つ恭一。バタバタと玄関へ急ぐ恭一。
  N   「こんな親を父親に持った僕は、身の不運を嘆くしかないのだろうか」

.(フラッシュ) 街の歳末風景 夜

   閑静な田舎街の夜景。うらぶれた街頭のイルミネーション。オレンジの一色灯で点滅しない。とぼとぼと歩く正也と恭一。立ち止まりイ
   ルミネーションを見上げる二人。溜息をつき、ふたたび歩きだす二人。逆V型に垂れ下がり、クリスマスツリーを想像させるだけの華や
   いだ雰囲気がないイルミネーション。
  N   「クリスマスのイルミネーションが都会ほどではないにしろ、僕の街にも輝き始めた。しかしそれは、都会のそれと比較できるほ
       ど、きらびやかなものではない。それは一色のみで、しかも点滅などはせず、加えて、垂れ下がっているというだけの…ただ
       それだけのものなのである(△に続けて読む)」

9.子供部屋 昼
   机椅子に座り、勉強するでなく、ぽつねんと物想いに耽る正也。声のみで正也を呼ぶ未知子。
  [未知子]「正也~! 正也~!」
  N   「(△)そんな悠長なことを詳しく報告している場合ではない。というのも、先ほどから母さんが呼ぶ声が五月蝿いのだその声は、
       次第にトーンを上げつつある。実は、年末の大掃除を手伝えと彼女は命じているのだ。母さんの機嫌が損なわれない内に、
       僕は手伝いをしようと思う。だから、今日のところは、少し短くなったけれど、これまでにしたい」
   机に両手を突き、顔を伏せる正也。未知子の呼ぶ声。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O
   タイトル「冬の風景 特別編(上) いつもの癖 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、 「冬の風景 特別編(上) いつもの癖」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第十九回

2009年11月22日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第十九回
その点、蟹谷の方は、その責務からは開放されているから、酩酊
迄はいかないものの、ほろ酔い状態であった。
 申の下刻、道場の一行は帰途についた。蟹谷は途中、用があからと鬼灯(ほおずき)街道の丁字路で皆と別れ、葛西宿の方道をとった。左馬介には蟹谷がどこへ行こうとしているのかは
らない。だが、一馬は知っていた。
「蟹谷さんは千鳥屋で薪割りの小仕事をしておられるのです」
 歩きながら、後方を歩む左馬介へ聞こえるように一馬が云った。当然、一馬と隊列を組む長谷川や、左馬介の横に並ぶ鴨下にも聞こえている。二人とも知らなかったのか、なるほど…という態
頷いた。
「月に一朱の入り用…ですか?」
 左馬介は振り翳(かざ)して問うた。
「はい。勿論、その為ばかりではないようですが…」
「へえ~。なんなんでしょうね?」
「それについては敢(あ)えて云わないでおきましょう。まあ、千屋へ行かれたとき、主人の喜平さんに聞かれれば分かると
いますよ」
 そう云うと、一馬は思わせぶりに、フフ…っと笑い、口を噤んだ。


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