≪脚色≫
冬の風景
(特別編(上) いつもの癖(2)
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
N ・・湧水正也
7.台所 朝
朝食後。一人、恭一だけがテーブルの椅子に座り、新聞を読んでいる。
N 「(◎)しかし、このお灸の効果も一過性のもので、長続きしないのが玉にキズであった。今朝も、そのようで、食後、続きを読み始
めた父さんは、母さんに時間を云われるまで、新聞紙面に釘づけ状態だった」
炊事場で洗い物を済ませ、ふと、恭一を見る未知子。
未知子「あなたっ! 遅れるわよ」
腕を見て、慌てふためいて軽くお茶を飲み、立つと上着を持つ恭一。バタバタと玄関へ急ぐ恭一。
N 「こんな親を父親に持った僕は、身の不運を嘆くしかないのだろうか」
8.(フラッシュ) 街の歳末風景 夜
閑静な田舎街の夜景。うらぶれた街頭のイルミネーション。オレンジの一色灯で点滅しない。とぼとぼと歩く正也と恭一。立ち止まりイ
ルミネーションを見上げる二人。溜息をつき、ふたたび歩きだす二人。逆V型に垂れ下がり、クリスマスツリーを想像させるだけの華や
いだ雰囲気がないイルミネーション。
N 「クリスマスのイルミネーションが都会ほどではないにしろ、僕の街にも輝き始めた。しかしそれは、都会のそれと比較できるほ
ど、きらびやかなものではない。それは一色のみで、しかも点滅などはせず、加えて、垂れ下がっているというだけの…ただ
それだけのものなのである(△に続けて読む)」
9.子供部屋 昼
机椅子に座り、勉強するでなく、ぽつねんと物想いに耽る正也。声のみで正也を呼ぶ未知子。
[未知子]「正也~! 正也~!」
N 「(△)そんな悠長なことを詳しく報告している場合ではない。というのも、先ほどから母さんが呼ぶ声が五月蝿いのだその声は、
次第にトーンを上げつつある。実は、年末の大掃除を手伝えと彼女は命じているのだ。母さんの機嫌が損なわれない内に、
僕は手伝いをしようと思う。だから、今日のところは、少し短くなったけれど、これまでにしたい」
机に両手を突き、顔を伏せる正也。未知子の呼ぶ声。
テーマ音楽
キャスト、スタッフなど
F.O
タイトル「冬の風景 特別編(上) いつもの癖 終」
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、 「冬の風景 特別編(上) いつもの癖」 をお読み下さい。