水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 冬の風景(第一話) 本音

2009年11月11日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      冬の風景
      
(第一話)本音

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]  
   N      ・・湧水正也
   その他    ・・猫のタマ、犬のポチ

1.湧水家の庭 朝
   タイトルバック
   白絨毯を敷き詰めたように霜が降りた庭。朝日が、下りた霜を照らす。 
  N   「朝起きると、初霜が降りていた(◎に続けて読む)」

2.湧水家の畑 朝
   白絨毯を敷き詰めたように霜が降りた家前の畑。
  N   「(◎)庭や家の前の畑は白々と輝き、白砂を敷きつめたようだった。・・と、云うのは少しオーバーな云い回しなのだが…」
   テーマ音楽
   タイトル「冬の風景(第一話) 本音」
   キャスト、スタッフなど

3.玄関 内 朝
   ポチが玄関脇の犬小屋で餌を食べている。


4.洗い場 外 朝
   玄関前の湧き水の洗い場で手を洗う正也。湧き水から湯気が昇る。庭から回って、やってきた上半身裸の着物姿の恭之介。流れる
   汗を拭く恭之介。朝日に映え、恭之介の身体から上がる湯気。洗い場で濡れた手拭いを絞る恭之介。
  恭之介「フゥ~。ひと汗、掻くと気分がいい…(誰に云うでなく、笑顔で汗を拭きながら)」
  N   「上半身裸で汗を拭きながら、じいちゃんが笑顔で呟くように云った。じいちゃんの身体からは湯気が出ていて、それが朝陽に
       照らされて昇っている。僕は丁度、洗顔を済ませた後、タマとポチに餌をやり終えたところだった」
   手拭いを湧き水に浸けて絞ると、また身体を拭き、上半身の着物を纏う恭之介。
  恭之介「おい正也!  明日から恒例の寒稽古だったな。…いつもより三十分、早く起きろよ(気持ちよさそうに)」
  正也  「うん! 分かってる(可愛く)」
  N   「嫌だ! と本音を漏らせばいいのだが、毎年この時期に付き合わされる半慣習的な行事なので、敢えて逆らうことなく今年
       も、じいちゃんに奉仕することにした」

5.台所 遠景 夜
   食卓のテーブルで新聞を時折り見ながら夕食を食べる恭一。鍋の味噌汁を椀に掬い、恭一の前へ置く未知子。落ちついた物腰で食
   事をとる恭之介。普通に食べる正也。台所の片隅で餌を食べるタマ。家族の食事の遠景。なにやら恭一に問い掛けている未知子。

6.台所 近景 夜
  恭一  「別にペコペコされたくもないさ、ハハハ…(笑って暈し)」
  恭之介「そうは云うがな、恭一…(最後までは云わず、口を噤んで)」
  未知子「別に気にしてませんから、お義父さま…(云い繕った後、正也の顔を見て微笑んで)」
  N   「母さんは云い繕い、微笑んで僕の顔を見た。彼女の内心には、あなたの不出来な分は僕が補って余りある…という本音が
       見え隠れする」

7.居間 夜
   夕食後。長椅子に座り、ゴルフのクラブを磨く恭一。台所から居間へと移動してきた恭之介。
  恭之介「おう、よく光っとるな(感心した口調で)」
  恭一  「はい…(小声で)」
  N   「素直に父さんは小声で返した。その小声の奥には、次に浴びるであろう嫌味を未然に回避する、緊急避難的な彼の本音が
       隠されているのだろう。人は建て前で生き続ける。僕は本音で生きたい…と、頑張っている」
   F.O
   タイトル「冬の風景(第一話) 本音 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「冬の風景(第一話) 本音をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第八回

2009年11月11日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第八回
「今池(いまのいけ)…。そんなお近くでしたか。すると、樋口さんの
お父上の直轄地ですねえ」
「樋口さんというと、葛西の樋口静山殿ですか?」
「そうです。樋口さんは代官をしておられる樋口半太夫殿の次男
坊なんですよ」
「へぇ~! それは知りませんでした。初耳です」
 左馬介の説明に、鴨下は大仰に驚いた。
「さあ、そろそろ上がりますか?」
 鴨下に声を掛け、左馬介は浴槽から上がった。鴨下も続けて上がる。二人は、終い湯を桶に汲み、糠袋で身体を洗い始めた。ひと通り洗い終えると、ふたたび浴槽で暫く温まった。春先とはいえ、
外気は未だ冷えを留(とど)めている。
「それじゃ、湯を落としますよ」
「はい…」
 左馬介が浴槽底の木栓を抜くと、湯は勢いよく落ち始めた。
 底から凡(およ)そ一尺ほどまで落ちたとき、左馬介は一端、木を戻した。底に残った少ない湯で、檜(ひのき)の木肌に付いた垢を洗い落とす為である。左馬介の説明がなくとも鴨下には凡(おおよそ)、何をしようとしているのかが分かった。


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