水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (5)ゲーム

2019年10月01日 00時00分00秒 | #小説

 人は満足感、優越感、達成感といった楽しい気分を得ようとゲームをする。このゲームには、チェス、囲碁、将棋、麻雀といった高レベルなものから、ただ幼稚で楽しむだけの低レベルのものまで様々あり、分化をする。ただ、孰(いず)れにしろ勝つことによって人は楽しい気分に満たされたい訳で、誰も負けたくはないはずである。なぜ勝つと楽しい気分になるのか? までは分からない。^^
 とある総合体育館で卓球大会が行われている。各地区から選抜された選手達[聞こえはいいが、実は数合わせで否応なく出場することになった人々]が一堂に会し、トーナメント形式で試合が進んでいる最中(さなか)だ。そんな中、幾度となく出場して顔見知りになったのだろう。他地区の選手同士が話をしている。
「やあ! 今年もご出場ですかっ!」
「これはこれは! あなたも、ですか?」
「ええ、まあ…。一勝したいゲーム感覚ですよ」
「実は私も一勝したいばかりに、負けても負けても出ておりますっ!」
 個人戦の一回戦ですぐ敗退している弱い選手同士なのだが、どうして選手で出てくるのか? が、どちらも分からない。
「来年も来られますか?」
「はい、そのつもりでおります。出られれば、の話ですが…。あなたは?」
「はい、私も出るつもりでおります。なにせ楽しいですからなっ!」
「ははは…私も、ですよっ!」
「ははは…」
 二人の内心は、どちらも楽しいのではなく、何が何でも一勝したいっ! ただ、それだけの理由だった。
 ゲーム感覚は人を虜(とりこ)にする魔性を秘めている。^^

                                


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