水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (6)行楽(こうらく)

2019年10月02日 00時00分00秒 | #小説

 行楽(こうらく)のシーズン・・と、よく言う。決して、ペタンッ!! と肌に貼(は)る薬の膏薬(こうやく)でもなければ、選挙で票を獲得するために立候補者が掲(かか)げる実現不可能に近い公約でもない。^^ 人々は誰もが楽しい気分でその日その日を送りたいのであって、苦(くる)しく苦(にが)い思いなどしたくないはずだ。まあ、苦しくても鍛えるスポーツや体力トレーニングは別だが…。こうした例外はあるものの、大よその行楽は楽しもう! という意欲に燃えて積極的に動く人々の行為だ。
 連休の大渋滞に巻き込まれたとある家族の車中の会話である。
「いっこう、進まんなっ!」
「だから言ったでしょ! 」
「ママ、おしっこ!!」
「んっ、もうっ!! もう少し、我慢しなさいっ!」
 母親は、そう言ったものの、進みそうもない車の渋滞に子供が漏らす危機を感じていた。
「おっ! そこに俺の飲んだあとのペットボトルがあるぞっ!」
「あなたにしては機転が効(き)くじゃないっ!」
「ああ、まあな…」
 褒(ほ)められたのか嫌味(いやみ)を言われたのかが分からない曖昧(あいまい)な気分で父親はボソッ! と返した。母親は子供が男の子でよかった…と妙な考えで言ったのである。そして、あっ! キャンプ用に持ってきたポリ袋があったわ…と、どうでもいいような心配の解決にホッ! としていた。
 行楽も一つ間違うと、楽しい気分が損(そこ)なわれて苦に変化するから注意しよう・・という、ただそれだけのお話である。^^

                                


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