水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (27)予備

2019年10月23日 00時00分00秒 | #小説

 何がっ? という訳ではないが、物は予備があった方が困らずに済むから都合がいい。都合がよければ、テンションは自然とアップすることになり、楽しい気分が訪(おとず)れる。予備を置いておけば、もう一方が無くなったときすぐ使え、都合がいい・・と、まあ、こんな具合だ。『チェッ! 切れたかっ!』とダメになった電球を眺(なが)めたとき、すぐに予備と交換できれば何の問題も起こらず、楽しい充実感に満ち溢(あふ)れることだろう。決めごとではないそうだが、おおよそ、その道の通(つう)は、予備を置いておくらしい。^^ 使っていたモノが使い終わったりダメになったとき、スゥ~~っと予備を出せば、だいいち、格好がいいっ! ^^
 日曜の昼前である。とある普通家庭のサラリーマンが冷蔵庫を開け、探し物をしている。
「おいっ! ここに入れといた天カス、知らないかっ!?」
「天カス? 知らないわよ。どこか別の場所に入れたんじゃないっ?」
 妻は、この前、使ったんじゃないのっ!? という顔で亭主を一瞥(いちべつ)し、テニス風にフォアハンドのリターンエースで返した。
「そうかぁ~? …妙だなぁ~。あの天カスを入れると、美味(うま)い焼き蕎麦(そば)が出来るんだが…」
 妻は美味い焼き蕎麦と聞くと、俄(にわ)かに気分が急変した。
「ああ! あの天カスならこの前、使ったでしょ。でも、予備を買っておいた・・とか言ってたんじゃないっ?」
「ああ、そうそう! 予備をパーシャル冷凍にしたんだった。…あった、あった!」
「でしょ!」
 亭主は予備に買っておいた天カスを出すと、調理を続けた。『やれやれ、助かった!』という気分である。しばらくすると、焼き蕎麦の香ばしいいい匂いが辺(あた)りに漂(ただよ)った。その後、二人は美味(おい)しい焼き蕎麦を賞味し、楽しい気分になった。
 予備があれば、話は丸く収(おさ)まり、楽しい気分が訪れるのである。^^ 

                                


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