消耗品(しょうもうひん)は傷(いた)めている訳でもないのに無くなるから交換しなければならない。無くなる前に前もって予備品を買っておけば、これはもう、心に余裕かせ生まれ、楽しい気分で過ごせることになる。特に食料品に至っては食べるという楽しい気分が待っているから、特に予備として買っておきたいだろう。^^
どこにでもあるような、とある家庭の一場面である。楽しい気分で寛(くつろ)いでいたご主人だったが、何を思ったのか突然、アチラコチラと探し物を始めた。ところが目的のアレは、どこを探しても見つからない。
「おいっ! どこへやったっ!」
「なにをっ?」
「俺が、どこへやったって言えば、消耗品のアレに決まってんだろうがっ!」
「なによっ、偉(えら)そうにっ! ちっとも分かんないわっ!」
「馬鹿野郎! 何年、一緒に暮らしてんだっ!」
先ほどまでの楽しい気分はどこへやら、ご主人の心は俄(にわ)かに湧(わ)き出した黒雲(くろくも)に覆(おお)われるかのように荒れてきた。
「… そうね、かれこれ30年になるかしら?」
「だろっ!? だったら、アレの場所は分かるだろ?」
「? アレってナニ?」
「そうだよ、ナニだよっ!」
「ナニは『予備を買ってきたから、一緒にアソコへ置いとく』って言ってたじゃないっ!」
「? …待てよっ! あっ! そうそう、アソコアソコっ! アソコだっ!」
荒れた気分の暗雲(あんうん)はたちまち消え去り、ご主人の心にふたたび楽しい気分が訪(おとずれ)れた。
消耗品の予備にゆとりがあったり、存在場所がはっきりすれば、心は安心感に満たされアレ→ナニ→アソコとなって、楽しい気分に浸(ひた)れる訳である。^^
完