楽しいと、その後の展開がどうなるっ!? を、そうでない場合と比較して考えてみよう。あんた、暇(ひま)だな…と思われる方もお有りかと思うが、考えてみたいのだから仕方がない。ということで、そういう興味のない方々は昼寝をしていてもらっていても、いっこう構わない。^^
先だって起きたことに、野暮用というのがあった。思ってもいなかった靴下に穴が開いてシャツが破れていたのだ。これから楽しい番組を観よう! としていた矢先だったから、気分はダブルパンチに半端(はんぱ)なく悪く、楽しい気分どころか、返って腹立たしいくらいになった。結局、VTR[録画撮り]で、かろうじて難を逃(のが)れたが、楽しい番組のどうなるっ!? は、やはり捨ておけなかった・・ということだ。^^
とある映画館の、とある席である。一人の男が食い入るようにスクリーンに見入っている。それもそのはずで、映画はいよいよ最後のクライマックスへ差しかかろうとしている矢先だった。
『そうよっ! フフフ…俺がやったのよっ! やっと、気づきやがったかっ! 冥土(めいど)の土産(みやげ)に聞かせてやろうか、その訳をっ! おめえの、とっつぁんはなっ! 俺の親父(おやじ)やお袋を借金苦の上、死なせちまったのよっ! おめえも道連れにしてやるぜっ!』
男は映画の悪くなっていく展開に、この先どうなるっ!? と、スクリーンに映し出された憎々(にくにく)しげな悪役を、キッ! と腹立たしい目つきで見据(みす)えた。
「待ちなっ!」
そのとき、渋い声とともに盛り上がるBG[効果音楽]が流れ、悪役の前に主演の男が入口の戸を開けた。着流しに抜いた刀(かたな)を片手にした姿が格好いい。
「おめえさんに恨(うら)み辛(つら)みはござんせんが、渡世の義理ですっ! 死んでもらいますっ!!」
主役のそのひと言に、男は、『そうだっ! やっちまえっ!』という気分で、思わずパチパチと拍手した。隣(となり)の席の客が顔を男に向け、嫌(いや)な目つきで咳払(せきばら)いをする。男は一瞬、自重(じちょう)したが、この先、どうなる!? と、逆転したいい展開に、『頼んだぞっ!』とばかりに縋(すが)るような目つきになった。そして、主役の男を追うように思わず席から立ち上がる。隣の席の客が、ふたたび顔を男に向け、嫌な目つきで咳払いをする。男はまた一瞬、自重(じちょう)して席へ座る。
このように、どうなるっ!? という気分は、人の心の奥底を露呈(ろてい)し、その気分で行動を変化させるのである。^^
完