人それぞれに好(この)み・・というものがある。好みが達成されれば、人は楽しい気分となる。だが、そういつもいつも自分の好みどおりになる訳がない。多くの人の中で生活していれば、当然、他の人の好みも受け入れねばならないからだ。例えば、美人や美男子よりオカメやヒョットコが好みの人がいたとして、『ええ~~っ! あんなのがっ!?』と思ったところで、当の本人の好みなら致し方ない。まあ、この場合、自分には関係ない話なのだか…。^^
三人の中年男が、喫茶店の席で喧嘩(けんか)するでなく口論している。
「いやいやいや、私は三杯は入れますよっ!」
「そんなにっ! そりゃ甘過ぎるでしょうがっ! まあ、二杯が限度ですよっ! 現に私の好みは二杯なんですからっ!!」
「お二方(ふたかた)、何をおっしゃるっ!! コーヒーてなもんは、ブラック! ブラックに決まってるじゃありませんかっ!!」
「ええっ! そりゃ、いくらなんでも苦(にが)いっ!」
「苦いって、アンタっ! それが美味(うま)いんじゃないですかっ!」
「まあまあまあ、そう興奮されずっ!」
「興奮してるのは、アンタじゃないかっ!」
「いやいや、私(わたし)ゃ、興奮なんぞしてませんっ! ただ私の好みを言ったまでですっ!」
「私だって好みを言っただけですっ!」
「私もですっ!」
「… … だったら、それでいいじゃないですかっ!」
「ええ、まあ…」「さよですな…」
三人は沈黙して、それぞれの好みでコーヒーを飲み終えたあと、仲よく別れた。
好みが自分に合っていれば、人は関係ない・・ということになる。ただ、好みを人に主張するものではないようだ。^^
完