水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (13)本質

2019年10月09日 00時00分00秒 | #小説

 楽しいと思える本質について考えてみよう。少し小難しい言い回しなので、もう少し噛(か)み砕(くだ)いて表現すれば、楽しい! と思えるその原因、理由について考えるということである。そんなもの、楽しいから楽しいに決まってるじゃないっ! …と、オバちゃん連中に言われれば、それもそうだから、そう思われるオバちゃん方は、お茶を飲みながら煎餅(せんべい)でも齧(かじ)ってテレビを観ていて下されば、それでいい。^^
 ここは、とある学校の放課後の職員室である。
「どうされました? 鳥肌(とりはだ)先生。最近、少し元気がないようですが…」
「ああ、これは寒疣(さむいぼ)先生でしたか。どうも最近、楽しい気分がしないんですよ」
「楽しい気分がしないとは?」
「教えてましてもね、ちっとも教える喜びというか…何と言うか…」
「教える喜びですか?」
「はい…」
「もう一度、教育とは何か・・について、その本質をお考えになってはいかがでしょう」
「教育とは何か・・ですか?」
「はい、そうです。教育の本質について、です。見つめ直せば教える楽しい気分も戻(もど)ると思いますよ、きっと」
「ありがとうございます。そうしてみます…」
 その一週間後である。
「おお! 鳥肌先生! すっかりお元気になられたようですね?」
「はあ、お蔭(かげ)さまで…」
「教育の本質がお分かりになったようで」
「いいえ、ちっとも…」
「えっ!?」
「教育の本質は分からなかったんですが、楽しいと思える本質は分かりました」
「そ、それは、何ですっ?」
「はい、帰って食べられる一個の饅頭(まんじゅう)ですっ!」
「饅頭? ですか?」
「はいっ! 饅頭です。私、無類の甘党なんですが、ここんとこ、その饅頭が手に入らず、食べられなかったからだと思います」
 楽しいと思える本質は、意外なところに隠されているのである。^^

                                


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