敬老の日という祝日がある。では、どの年齢から敬(うやま)われるのか? という素朴な疑問が、中高年に近づくと、沸々(ふつふつ)と湧(わ)いてくる。「そんなの、自分が老いた…と感じる年からなんじゃない?」などと、余り気にならず素(そ)っ気(け)ない人もいるだろうが、そこはそれ、暇(ひま)に任(まか)せて考えてみるのも楽しい。^^ 普通の概念では年金が支給される年齢に達した人・・と考えるのが相場だが、還暦を越えていても、いやいやいや…私はまだまだ現役だっ! と意気健康な人もいるだろうから、そういう人の場合はどうなんだろう? という疑問が生まれてくる。^^ 『そら、そういう人は老いてないんだよ』と言われればそれまでだが、敬老されるお年はお年なんだからっ! と言う人があれば、それもそうだな…ということになる。
とある公民館で、お年寄り達が敬老の日のお祝いの会に出席し、狂言を鑑賞している。国営放送の大河ドラマにも出演したことがある超有名な狂言師を招いてのお祝いの会だが、そのこと自体が不思議なのか、会場の至るところでヒソヒソ話が囁(ささや)かれている。その中の二人の老人の会話である。
「よく、こんな片田舎へ来てもらえましたなっ!」
「それそれっ! なんでも、ここの町長のご友人だそうですよっ!」
「ほう! なぜ、町長が芸能関係の人と?」
「それなんですがねっ! 実は町長、若い頃、今の狂言師の先代の弟子だったそうなんですっ!」
「エエッ~~!! 町長が狂言師?!」
「いやまあ、そんな時代もあったらしい・・という程度の話なんですがね」
「誰からお聞きになりました?」
「確か、去年の敬老の日の会で…」
「そうですかぁ~。敬老の日は、いろいろ不思議なことが起こるんですなっ!」
「確かに…。婦人会奉仕の鶏肉入り炊き込みご飯なんて、家(うち)の嫁なら、絶対に食べられませんっ!」
「婦人会にはお入りなんでしょ?」
「ええまあ…。婦人会は団体ですからなぁ。個人では、という話です」
「ははは…敬老の日、様様(さまさま)ですなっ!」
「はいっ! 敬老の日、様様です、ははは…」
二人は敬老の日で大いに盛り上がった。敬老の日は、いろいろと楽しい変化が多い日のようだ。^^
完