水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (29)愚痴(ぐち)

2019年10月25日 00時00分00秒 | #小説

 自分が話しているときは、そうは思わないが、他人が話していることを耳にすると嫌になる・・というのが愚痴(ぐち)である。「また愚痴、零(こぼ)してるわっ!」などと楽しい気分を害されたように影で囁(ささや)かれる訳だ。^^ まあ、聞けば気分がよくないのは確かだ。
 とある会社の社員食堂である。昼時だということもあり、大そう込んでいる。
「チェッ! 今日はアジフライ定食、ないのかっ!」
 一人の社員が食券売り機に灯(とも)ったオレンジランプを見てボソッと愚痴った。
「別にサンマフライ定食でもいいじゃないかっ!」
「いや! サンマフライは、いかんっ! サンマは焼いておろし大根かレモンで美味(おい)しく食べるもんだっ!」
「そうなんだ…」
 返された同僚社員は、『そんなの、誰が決めたんだよっ!』とは思ったが、口にはせず思うに留(とど)めた。すると、そこへ食堂のおばちゃんが現れた。
「あらっ! また、点いてるわっ! 故障かしら? すみませんねぇ~、アジフライ定食できますっ!」
 それを聞いた途端、愚痴った社員の顔にオレンジランプが灯り、笑顔になった。
 愚痴は愚痴る内容が消えると楽しい笑顔になる・・という当たり前の馬鹿馬鹿しいお話である。^^

                                


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