水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (24)疲れ

2019年10月20日 00時00分00秒 | #小説

 楽しいのはいいが、その楽しいひとときが済めば、疲れが待っている。若いときはそう感じることも少ないが、年を重ねるにつれ、ジワジワと疲れが襲(おそ)ってくる。人により程度の差こそあれ、高齢者には疲れが付いてまわるのだ。離れてくれっ! と頼んでも、こればっかりはどうしようもなく、『ヒヒヒ…まあまあ、そう邪険(じゃけん)にされず…』と、疲れは忍び寄る。^^ それでも、楽しい気分を味わいたいから、高齢者は意固地(いこじ)になって無理をする。無理をすれば余計に疲れることになる。この繰り返しは負のスパイラル[螺旋(らせん)]を齎(もたら)すから、いただけない。^^
 久しぶりの家族旅行から帰ったご隠居が、家に着くなり隠居所に籠(こ)もってしまった。家族としては、夕食になっても出てこないご隠居に気が気ではない。
「お義父(とう)さま、どうされたのかしら?」
「僕が見てこようか?」
「たぶん、疲れたんだろ…。そぉ~っとしておいた方がいい」
「そうね…お腹が空けば、出ていらっしゃるわねっ!」
「お兄ちゃん! お肉ばっかり食べてる…」
「お前の分は残してあるだろっ!」
「まあね…」
 家族四人は雑談を繰り広げ、旅行の疲れも見せず、スキ焼を突(つつ)いた。そのいい匂いが隠居所に届いた瞬間、ご隠居は猛スピードで台所へ急行した。
 高齢者の楽しい後(あと)の疲れも、食欲で吹っ飛ぶのである。^^

 ※ 風景シリーズ・湧水家の人々のスビン・オフ出演でした。^^

                                


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