(挫折のなかに人生を豊かにする智慧がある――敗戦から多くの教訓を学び、繁栄を築いた日本)
挫折は大きく見れば、国家のレベルにおいてもあります。例えば、「戦争で負ける」ということはその一つでしょう。
日本は、日清戦争で清国(中国)と戦って勝ち、日露戦争でロシアと戦って勝ちました。そして、それほど大きく参加したわけではありませんが、第一次世界大戦でも、勝った側についています。
当時の日本は、三回続けて勝ったために、「ひとたび戦いあらば、神風が吹いて、神国日本は必ず勝つ」と思い込み、慢心した面があります。そして、第二次世界大戦では、かなり悲惨な負け方をしたのです。
「戦争で負ける」ということは、つらく悲しいことであり、この敗戦が日本にとって大きな国家的挫折だったことは間違いありません。しかし、その一方で、「負けることによって学んだものも大きかったのではないか」ということも感じます。
第二次大戦後、六十年以上、日本の繁栄が続いていることを見ると、「日本人は、戦争に負けたことへの反省によって、非常に謙虚になった」と言えると思います。
高くなった鼻をポキッと折られ、「自分たちは、それほど天狗になってはいけない。慢心してはいけないのだ」と思い、日本の国民全体が、本当に、「一からやり直しだ」という気持ちになりました。そして、国民の勤勉な努力が実を結び、戦後の繁栄につながったのです。
敗戦当時は、その後の日本の繁栄を誰も予想していなかったことでしょう。敗戦そのものを見れば悲惨な結果ではありましたが、日本の国民が挫折を体験したことは、日本に一つの飛躍をもたらした面があるのです。
このように、国家のレベルでも、「勝ち続けると慢心する」ということがあります。日清戦争から三回続けて勝ったとはいっても、実際には、日露戦争での勝利は“判定勝ち”でした、日本はアメリカに仲介してもらい、かろうじてロシアに勝ったのです。本当は、もはや日本には戦い続ける力がなかったので、日本が勝ったのは不思議なぐらいの戦いでした。
本来は勝てるはずのない戦いであっても、結果的に勝ってしまうと、考え方が緩(ゆる)くなることがあるのです。
---owari---
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