梅雨が長びいていた。天気予報は曇だったが、
七月七日は晴れ上がったので、昼食後、孫とクワガタを探しに出た。
孫は元気よく山道をかけ降りて、
土の上で一回、砂利道でもう一回、ころんだ。
でも泣きはしなかった。
私はクワガタ多発ポイント周辺で、木の葉や雨上がりの土を見回していた。
ふと、やわらかい腐葉土に 足をとられて、
不覚にも尻もちをつき、 右腕の肘で支えたが、
やわらかな土に反作用はなく、起き上がれなかった。
妻は動画をとっており、長女は八ケ月の娘を抱いていた。
採集網と虫かごを両手にもった私を、助け起こしてくれたのは義息(娘婿)だった。
法律的に老人入りの日にころぶとは悔しい。
しかし、ふっと空を見上げると、こならの木の二メートルの高さに、
大クワガタがハサミを広げているではないか。
虫取り網と木の小枝を使って、記念日の大物をつかまえた。
男の孫は大喜びである。宝は足元にだけあるわけではない。
すべって、ころんで、初めて見つかることもあるのだ。
あまりにも深く「人生」を回想した、 二年前の夏だった。
---owari---
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